昨年春4月10日のコラムに下記の記述を見つけました。

(引用)
「とは言え、昨年末が昨年からの相場の天井であると捉えない投資家であるなら、このインデック スで14,000円前後の価格は投資のタイミングと思います。日本を代表する、且つ大幅増益企業の株価がPBR1倍を割ったり配当利回りが3%以上だった りと、お金が有ったらもっと買いたいところです。」(引用終わり)


 丁度この1年前の2013年4月は黒田バズーカ第一弾と相まって、日経平均株価が年初の10,688円から4月末の13,860円辺りまで約30%も値上がりした頃と同水準になっていた訳ですから割安と感じてこのように書いたのでしょう。
 2013年はその後年末の16,291円まで1年間で約56%も上昇したのですから、翌年からの調整(4月末まで約14%の下落)によって市場心理は随分と悪化していた頃でした。

 但し幾ら心理的に悪化していた時期とは言え、企業業績は回復途上にあると認識していましたし、黒字と言うだけではなく黒字や配当も拡大しそうな企業でさ えPBRが1倍を割っていた現実に、怖いながらも「昨年末が天井であると捉えない投資家であるなら」との前置きをしつつ「買ってみたい」と書いたのでしょ う。


 そんな心理状態の時期と今(日経平均株価19,800円)とを比べてみるのも面白いかもしれないと考えました。今はどのように感じられるか?


1)黒字にもかかわらずPBR0.5倍などと言う割安株は随分と減りました。

2)指数採用の値がさ株は随分上がったと感じます。13年末と今年3月末を比べると、
 例えば・・・、
 HOYA2,922円→4,817円(165%)、
 富士フィルム2,981円→4,276円(143%)、
 ファーストリテイリング43,400円→46,495円(107%)、
 ソフトバンク9,200円→6,980円(76%)、
 ファナック19,250円→26,250円(136%)
 TDK5,040円→8,540円(169%)
 ローム5,120円→8,230円(161%)
 SONY1,826円→3,190円(175%)
 村田製作所9,340円→16,535円(177%)
 そしてその間の日経平均株価が16,291円→19,207円(118%)
 ・・・と言った具合です。
 つまり日経平均株価の推移に比べて、指数に影響を与える値嵩株の買われ方が凄まじかったことが分かります。

3)バリュー銘柄では、損益の伸び率の差で業種間で大きく株価に差が出ました。投資効率(例えばROE)が劣る銘柄や、若干でも減益になりそうな銘柄は放置され易くなりました。

4)小売りや食品などの内需銘柄でPER40倍~50倍と言った銘柄が続出しています。
 解釈として、海外でもそれなりに評価されたり多少の景気持ち直しがあったとしても、利益の50年分もの価値が付くものなのか?疑問を感じる銘柄も出てきました。

5)増配や自社株買いなどの株主還元に敏感に反応するようになりました。

6)巨額な日銀や公的資金の買い需要が大きな拠り所となっています。


 こんな辺りでしょうか。

 やはり昨年の今頃とは随分と景色が違います。この辺りの違いを紐解き、これからの投資に役立てたいと感じます。時間があるときに分析し、自分なりに解析出来たらこのコラムでも取り上げたいと思います。


 余談ですが、先週末の日経夕刊に「NISAの投資家が3,500億円も儲かった!」と言う露骨な煽り記事がありました(苦笑)。わざわざ紙面トップにデカデカと掲載するものか?とも感じましたが、何としてでも個人の金を資本市場に誘導したいようです。

 3兆円の資金で3,500億円の利益ですから、途中の入金があったことを踏まえれば概ね12~15%くらいの利益でしょうか。とは言え、投信が2/3ほどを占めるものの日経平均より劣るパフォーマンスです。
 例えば米ドル建てなども入っていれば20%も下駄を履いている勘定になるのに、それでも「これだけ?」って数字なのですが・・・、何が何でも煽りたいのでしょう。

 銀行預金のまま置かれても金融機関は収益が上がりません。少し前なら0.1%で預かって1%の国債を買っておけば幾らかでも儲かったのですが、0.2~0.3%の国債金利では良くてトントンで下手をすればマイナスです。
 ところが投信にするだけで販売手数料2~3%、別途、運用会社を含めたグループで毎年1.5%程の収入も加わり、ついでに投信財産の運用をすれば傘下の 証券会社への発注手数料も入ります。年間平均ザックリで2%を得られるとすると1兆円を預金から移せれば200億円儲かる算段です。100兆円を動かせれ ば毎年2兆円の利益が(財務省管轄の)金融機関に転がり込みます。

 貯蓄から投資へとの誘導は、国としては個人の投資参加が増えれば株価や債券の下支えになりますから年金財政にも好影響です。政権与党も株高や景気回復の ムードをアピール出来ますから、それこそ政官財入り乱れての大合唱と言うところでしょうか。そしていずれは最後の尻拭いを個人投資家にしてもらわねばなら ないことも分かっているからです。

 もちろんその国の金融市場が活性化することは良いことですが、需給に頼ってばかりの株高では限界があります。本当の意味での景気回復と財政再建の結果として株高とならなければいけません。

 政治家諸氏には与野党を問わず無味乾燥な議論や無責任な批判は止めて、本気で政治をしてもらいたいと思います。将来のために。


(街のコンサルタント)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)