月替わりの9月に入るのを待っていたように、相場が大きく動きだしました。
2日には、日本の内閣改造人事で塩崎氏が厚労大臣になると報じられると、年金基金運用の改革が進むことを期待しての株高、円安が進みました。
レンジ相場で溜まっていたマグマが日本のお盆明け時期から小爆発しつつあったドル円相場の動きが加速して、直近で年初の高値105円44銭に迫る勢いとなりました。
8月の月足は102円80銭始値、高値104円49銭、安値101円51銭、終値104円09銭。101円から102円の取引が続いたフラストレーショ ンを払しょくして動きが出てきた格好です。ただ、年初来高値105円44銭を目前に若干の過熱感があることから、一気に上昇が進んでいくとは考えにくいで すが、米ドル高が基調の昨今の市場環境を背景にレンジブレーク後の方向は見えてきたように思います。
さて、9月の重要スケジュールに、明日4日行われる欧州中銀理事会があります。
8月後半に行われた米国ジャクソンホールでの経済シンポジウムでの各国中央銀行総裁のスピーチに世界の市場参加者は注目していました。
例年通り、今年も米FRB議長の発言が最も注目されていましたが、今年最も市場に影響を与えた発言は欧州中銀ドラギ総裁だったでしょう。
ドラギECB総裁は、ユーロ圏の経済指標、特に失業率(直近11.8%)の悪化に言及。さらに、市場でのインフレスワップレート低下に見られるディスイ ンフレ(デフレとは言及していない)傾向に懸念を示したことで、欧州中銀が量的緩和に踏み切る可能性の高まるとの見方が市場で増え、ユーロ安へとつながり ました。それまで量的緩和への可能性を市場では20~25%程度とみていましたが、ドラギ発言以降30%近くまで増えたとも言われています。
単一の国の中銀とは違い欧州中銀が量的緩和を行うのは簡単ではなく、例えば明日の理事会で量的緩和を決定すると考える向きは少ないですが、期待だけは高まるでしょう。
今後は、長期の資金供給オペレーションを行うなどの政策で銀行システムを安定させつつ、ユーロ圏経済の安定という目的を果たすためには「何でもやる」と いうドラギ総裁の言葉がどのような形で、いつ、政策として表れてくるのかが注目されます。量的緩和政策の可能性が言われる間は、ユーロ安基調は続くものと 思います。
欧州の債券利回りの大きな低下は、今後の量的緩和政策を織り込むようにフライングしているように見えます。ドイツ国債利回り直近では0.929%ですが、一時0.88%まで低下。
スペイン国債利回りも直近2.266%と米国債を下回り、他の欧州国債も軒並み最低水準を更新しています。ドイツ2年債利回りは引き続きマイナスです。 ユーロ圏の2014年の消費者物価指数が0.7%ですから、現在の債券利回りは低下し過ぎの感があります。ただ、欧州債券市場の動向は、世界の主要債券市 場の利回り低下に影響を与えています。
米ドル高が続いています。ドル指数(米国の貿易相手国通貨に対して総合的に表す指数でユーロ比重た高い)は直近で82.99と昨年の6月以来の高値まで 上昇してきています。背景には、量的緩和期待によるユーロ安に対して、米国の量的緩和終了後の早期利上げ期待があります。
米国の早期利上げ(来年半ば過ぎ)期待が高まってきたのは、労働市場のたるみ解消期待、ディスインフレ懸念の後退があると指摘されています。最近発表さ れる経済指標、特に住宅市場の持ち直し傾向は政策当局者には良い意味で注目材料とされているでしょう。米国の住宅市場は個人の他の消費部門にも影響を与え る重要市場ですので、これまでも労働市場と共に当局が注目してきた要素でした。
この米国の住宅市場の回復には、今年に入ってからの中長期金利の低下が寄与している面も大きいと思います。FRBは金利正常化について慎重さを続け、来年一度行うにしても微調整に留まり、長期金利を低位安定させる姿勢は当面続くものと個人的には思っています。
冒頭で記したドル円相場の上昇についてですが、これまでこのコラムでもドル円相場を支える要因(累積する貿易赤字、金融政策変更の時期のギャップ、更に 日銀の追加緩和期待、縮小する黒字、公的年金基金の運用改革等)について書いてきました。市場がエネルギーをためて、マーケットも動き、これまで忍耐して きた向きは一息ついていると思いますが、市場が一方通行に見えるときは予想外の事象に気をつけておく必要もあります。
ハト派(緩和推進派)と思われていたイエレンFRB議長が意外と中間派?との見方が増えたことも最近の利上げ期待に影響していますが、彼女が労働市場を 見る目は量のみならず質についても重視しているようです。次回のFOMC(16日&17日)は色々な意味で注目されています。最近の見方とは裏腹なハト派 発言をするなどの予想外のリスクに考慮しておく必要があります。一方通行の市場ではポジションの積み上がりが大きな調整を余儀するリスクがあります。
レンジ相場後のドル円相場の大方の予想では、次のターゲットは107円を中間目標に110円水準です。107円ゴールと思う相場で105円台を買うのは リスキーですし、110円ゴールの市場で、107円~108円水準での仕込みは儲けよりリスクの方が高くなってしまうことも気をつけておきたいところで す。
自分のポジションに心配しなくなり、良い面しか見えなくなったと気づいたら、見えていない材料に注意を払うようにしておくことも大切だと(これまで身をもって)痛感しています。
今週は、日銀政策委員会、欧州中銀理事会、米雇用統計(8月分)、月央には米国金融政策を決めるFOMCなど重要な材料が控えています。余裕をもって対応できるように資金管理していきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
季節の変わり目、引き続きお気をつけてお過ごし下さい。
*9月3日午前11時執筆
本号の情報は9月2日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
2日には、日本の内閣改造人事で塩崎氏が厚労大臣になると報じられると、年金基金運用の改革が進むことを期待しての株高、円安が進みました。
レンジ相場で溜まっていたマグマが日本のお盆明け時期から小爆発しつつあったドル円相場の動きが加速して、直近で年初の高値105円44銭に迫る勢いとなりました。
8月の月足は102円80銭始値、高値104円49銭、安値101円51銭、終値104円09銭。101円から102円の取引が続いたフラストレーショ ンを払しょくして動きが出てきた格好です。ただ、年初来高値105円44銭を目前に若干の過熱感があることから、一気に上昇が進んでいくとは考えにくいで すが、米ドル高が基調の昨今の市場環境を背景にレンジブレーク後の方向は見えてきたように思います。
さて、9月の重要スケジュールに、明日4日行われる欧州中銀理事会があります。
8月後半に行われた米国ジャクソンホールでの経済シンポジウムでの各国中央銀行総裁のスピーチに世界の市場参加者は注目していました。
例年通り、今年も米FRB議長の発言が最も注目されていましたが、今年最も市場に影響を与えた発言は欧州中銀ドラギ総裁だったでしょう。
ドラギECB総裁は、ユーロ圏の経済指標、特に失業率(直近11.8%)の悪化に言及。さらに、市場でのインフレスワップレート低下に見られるディスイ ンフレ(デフレとは言及していない)傾向に懸念を示したことで、欧州中銀が量的緩和に踏み切る可能性の高まるとの見方が市場で増え、ユーロ安へとつながり ました。それまで量的緩和への可能性を市場では20~25%程度とみていましたが、ドラギ発言以降30%近くまで増えたとも言われています。
単一の国の中銀とは違い欧州中銀が量的緩和を行うのは簡単ではなく、例えば明日の理事会で量的緩和を決定すると考える向きは少ないですが、期待だけは高まるでしょう。
今後は、長期の資金供給オペレーションを行うなどの政策で銀行システムを安定させつつ、ユーロ圏経済の安定という目的を果たすためには「何でもやる」と いうドラギ総裁の言葉がどのような形で、いつ、政策として表れてくるのかが注目されます。量的緩和政策の可能性が言われる間は、ユーロ安基調は続くものと 思います。
欧州の債券利回りの大きな低下は、今後の量的緩和政策を織り込むようにフライングしているように見えます。ドイツ国債利回り直近では0.929%ですが、一時0.88%まで低下。
スペイン国債利回りも直近2.266%と米国債を下回り、他の欧州国債も軒並み最低水準を更新しています。ドイツ2年債利回りは引き続きマイナスです。 ユーロ圏の2014年の消費者物価指数が0.7%ですから、現在の債券利回りは低下し過ぎの感があります。ただ、欧州債券市場の動向は、世界の主要債券市 場の利回り低下に影響を与えています。
米ドル高が続いています。ドル指数(米国の貿易相手国通貨に対して総合的に表す指数でユーロ比重た高い)は直近で82.99と昨年の6月以来の高値まで 上昇してきています。背景には、量的緩和期待によるユーロ安に対して、米国の量的緩和終了後の早期利上げ期待があります。
米国の早期利上げ(来年半ば過ぎ)期待が高まってきたのは、労働市場のたるみ解消期待、ディスインフレ懸念の後退があると指摘されています。最近発表さ れる経済指標、特に住宅市場の持ち直し傾向は政策当局者には良い意味で注目材料とされているでしょう。米国の住宅市場は個人の他の消費部門にも影響を与え る重要市場ですので、これまでも労働市場と共に当局が注目してきた要素でした。
この米国の住宅市場の回復には、今年に入ってからの中長期金利の低下が寄与している面も大きいと思います。FRBは金利正常化について慎重さを続け、来年一度行うにしても微調整に留まり、長期金利を低位安定させる姿勢は当面続くものと個人的には思っています。
冒頭で記したドル円相場の上昇についてですが、これまでこのコラムでもドル円相場を支える要因(累積する貿易赤字、金融政策変更の時期のギャップ、更に 日銀の追加緩和期待、縮小する黒字、公的年金基金の運用改革等)について書いてきました。市場がエネルギーをためて、マーケットも動き、これまで忍耐して きた向きは一息ついていると思いますが、市場が一方通行に見えるときは予想外の事象に気をつけておく必要もあります。
ハト派(緩和推進派)と思われていたイエレンFRB議長が意外と中間派?との見方が増えたことも最近の利上げ期待に影響していますが、彼女が労働市場を 見る目は量のみならず質についても重視しているようです。次回のFOMC(16日&17日)は色々な意味で注目されています。最近の見方とは裏腹なハト派 発言をするなどの予想外のリスクに考慮しておく必要があります。一方通行の市場ではポジションの積み上がりが大きな調整を余儀するリスクがあります。
レンジ相場後のドル円相場の大方の予想では、次のターゲットは107円を中間目標に110円水準です。107円ゴールと思う相場で105円台を買うのは リスキーですし、110円ゴールの市場で、107円~108円水準での仕込みは儲けよりリスクの方が高くなってしまうことも気をつけておきたいところで す。
自分のポジションに心配しなくなり、良い面しか見えなくなったと気づいたら、見えていない材料に注意を払うようにしておくことも大切だと(これまで身をもって)痛感しています。
今週は、日銀政策委員会、欧州中銀理事会、米雇用統計(8月分)、月央には米国金融政策を決めるFOMCなど重要な材料が控えています。余裕をもって対応できるように資金管理していきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
季節の変わり目、引き続きお気をつけてお過ごし下さい。
*9月3日午前11時執筆
本号の情報は9月2日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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