株価はある程度は決算内容を織り込んで動いています。とは言え、個別銘柄にはサプライズが起きがちです。
決算発表の内容には企業経営側の事情が見え隠れします。投資家の期待とは裏腹の決算見通しが示されると株価の大きな変動要因となります。
ここでの決算発表内容の分析ポイントをまとめておきます。
【決算発表のパターン】
ポイントとなるP/L上の決算項目としては売上高、営業利益、経常利益、当期利益があるが、それらの実績と今期計画が株価にインパクトをもたらす。売上 が増加して利益が増加するのが通常のパターンだが、売上が減少して利益が増加する場合もある点に注目しておく必要があります。また、B/Sの変化も見落と せない。利益の増減に伴って配当金が増減したり、保有する現預金の増減が見られます。
企業価値は中長期的なキャシュフローの増加を織り込みながら高まりますので、こうした視点で決算発表の内容を吟味していく必要があります。
全体市場は規模の大きな企業に影響を受けますが個別銘柄も前期実績と今期の計画の見通し、及びその達成度への期待が投資家の評価につながり株価にも反映 されていきます。現在の株式市場の需給は悪化していますので、個別銘柄も多くは元気がありませんが、元気よく上値を追うだけの魅力のある銘柄をリーダー役 にして活気が戻ってくることを期待したいと思います。
1)前期実績について計画を(大幅に)下回る減益となったが今期は増益に転じるという見通しを出した場合
株価の上昇のためには現状の株価が下方修正を織り込んで水準を下げている必要がある。今期の増益への転換の背景と確度が明確となれば、株価の上昇につながる。
・銘柄の事例
日本ピストンリング(6461)
時価175円 今期予想EPS24.3円 PER7.2倍
直近高値231円(1月20日)直近安値169円(3月27日)
時価総額147億円 今期予想経常利益22億円
最新会社四季報今期予想経常利益29億円、同EPS21.9円
実績BPS299円 実績PBR0.59倍
今期予想1株配当金6円 配当利回り3.43%
前期は経常利益23億円から17.3億円に下方修正。特に第4四半期の業績が振るわなかった。この点が1月末からの株価に織り込まれてきた。投資先行型 の決算となった。非ピストンリング系の事業拡大を目論んでいる。今期の業績の確度は決算説明会である程度は確認できる。それまではまだ株価の一気の反転上 昇にはつながらないだろう。下値固めの時期が今しばらく続くと見られるが、200円どころまでの株価水準には割安感が働く可能性。
2)前期実績について計画を下回って減益となった。更に今期も過去の想定見通しを下回る利益水準となると公表した場合、今期も更に減益となる場合と今期は多少増益に転じる場合とに分かれる。
発表時の株価の位置にもよるが発表後に多くは売られるケースが多い。減益見通しの内容次第ではあるが、1,2週間の下落は覚悟が必要。ただ、景気回復局面では少数派の銘柄である。
・銘柄事例
メディカルシステムネットワーク(4350)
時価380円 今期予想EPS29.55円 PER12.86倍
直近高値593円(1月22日)直近安値368円(5月9日)
時価総額98.7億円 今期予想経常利益22.19億円
最新会社四季報今期予想経常利益28.2億円、同EPS52.3円
実績BPS214.7円 実績PBR1.77倍
今期予想1株配当金8円 配当利回り2.10%
前期は予想経常利益23億円から20.19億円に下方修正。従来の中期計画を大きく下回る結果となり、しかも今期も中期計画の水準を下回る計画を発表し た。有利子負債の増加もネガティブな要因となり株価は直近の高値から38%も下落してきた。昨年の安値水準は370円で、この水準を下回ってきたが、依然 として株価水準に割安感は見えてこない。唯一の救いは今期の業績見通しを同社の社長が先日開かれたアナリスト向け説明会で固めであるとコメントしたこと。 また、今回の説明会では厚労省の調剤薬局のあり方についての説明があり、そのための施策を打った結果としての見通しだとしている点である。有利子負債の拡 大はオフバランス化で改善を図るとしており、早期の改善が進めば株価は復活の動きになろう。
3)前期実績について計画を(大きく)上回る増益となったが今期は減益計画を発表している場合
前期決算の好調さが株価に反映している場合、反落につながる可能性があるが、多くは株価に織り込まれている場合が多い。今期の減益決算見通しの内容がポ イントで、前期決算が好調し過ぎた反動か期初計画は慎重に設定していて、期中に上方修正が期待される場合は株価水準にもよるが、後から株価の上昇が見込め る。
・銘柄事例
1.ノジマ(7419)
時価682円 今期予想EPS116.6円 PER5.85倍
直近高値1063円(11月)直近安値655円(5月8日)
時価総額165億円 今期予想経常利益45億円
最新会社四季報今期予想経常利益67億円、同EPS152.7円
実績BPS1326.7円 実績PBR0.51倍
今期予想1株配当金24円 配当利回り3.52%
前期は昨年11月に上方修正された経常利益65億円から76億円へと更に上方修正。消費税増税前の駆け込み需要の影響もあり、大幅な増益となったが、今 期はこの反動を見込んでの大幅な経常減益を計画している。こうした点が株価に反映されてきた。上方修正された時点で株価は直近の最高値をつけたが、今回は 大幅な減益見通しを反映して株価が安値をつけたと見られる。公表された見通しが期中にどう修正されるかが今後の株価動向を占うが、既に株価の位置は PER、PBR、配当利回り面で下値水準と考えられる。
2.テノックス(1905)
時価565円 今期予想EPS79.8円 PER7.1倍
直近高値665円(4月7日)直近安値536円(4月14日)
時価総額43.5億円 今期予想経常利益11億円
最新会社四季報今期予想経常利益10億円、同EPS58.0円
実績BPS1194円 実績PBR0.47倍
今期予想1株配当金12円 配当利回り2.12%
前期は2月に修正した経常利益10億円から更に13.9億円に大幅上方修正。低コスト化が奏功した格好。今期も受注拡大とコスト削減に注力するが反動減 を見込み経常減益を計画。当期利益は続伸を見込む。好業績は4月の高値となって反映したが、一方で株価の上昇による利益確定売りと今期への慎重な見通しを 想定した売りが見られ株価に反映されている状態。新製品開発、拡大への取り組みが好業績の背景で今期もそうした時流に変化はないため、高値抜け挑戦が業績 の進捗(期中での上方修正)とともに期待される。同社の場合は期末保有実質現預金が60億円と更に膨らみ、時価総額43.5億円に対して37.9%も上 回っている。営業CFが前々期の6億円から前期は26億円と大きく増加している点も注目される。
4)前期実績について計画を(大きく)上回り増益となり、更に今期も利益の伸びを計画している。
株価の位置にもよるが、この場合はその後の株価は上昇トレンドを続ける可能性が高い。特にPER水準やPBR水準などのバリュエーションが低いとその後の株価は上昇トレンドを見せると期待される。
・銘柄事例
アサンテ(6073)
時価1014円 今期予想EPS133.6円 PER7.6倍
直近高値1060円(4月24日)直近安値991円(5月9日)
時価総額124億円 今期予想経常利益27.3億円
最新会社四季報今期予想経常利益25億円、同EPS117.0円
実績BPS668.7円 実績PBR1.52倍
今期予想1株配当金32円 配当利回り3.15%
前期は経常利益23.4億円から25.66億円に上方修正株価はこの辺りを織り込んで推移してきた。今後の株価は東証1部上場企業としての評価と今後の 成長を見込んでの推移が期待される。特に新たに作成した中期計画(27年3月期をスタートとして29年3月期の年商165億円、経常利益34億円を計画) の進捗を見込んだ株価形成がポイントとなる。4月の月次が消費税増税の反動もあって4%のマイナスとなった点がネガティブに受け取られ、一旦の1000円 割れを演じたが、営業エリアの拡大とともに売上増が期待される点に注目。中期計画の水準は経常利益30億円から34億円と上方修正された点はポジティブに 働く。ライバル企業としてダスキン(4665)がシロアリ駆除サービスのCMを積極化させているが、資本力が大きなダスキン(4665)の市場参入は現状 は未知数で中立要因となる。
こうした決算発表のパターンを吟味しながら投資対象の選択に当たって頂く必要があります。ご自身がお持ちの銘柄はどれにあたるのかを一度吟味されてみてはいかがでしょうか?
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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