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特損計上で売られた銘柄の株価評価

2014/05/13 17:14 投稿

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好決算なのか悪い決算だったのか、この時期投資家にとってはどう取ったら良いのか迷いを生じる決算もあります。地合いが悪い局面でこうした不可解な決算発表がある場合は売られることになりますが、まさにそうした動きが見られる銘柄を本日はテーマとします。

 大成温調(1904)は空調、給水などの設備工事中堅企業で、クリーンルームの設計・施工も行っています。国内に留まらず、中国や米国、インドなど海外にも展開しています。

 建設投資がほぼピークを迎えようとしていた1991年12月にJASDAQに上場。120万株の公募(公募価格6474円)増資を行い、発行済み株式数 1149万株(時価総額743億円)で上場しましたが、上場時の高値は5660円で時価総額は650億円に留まり、その後も一貫して株価は下落を続けてき ました。2002年には安値170円となり時価総額は上場後10年で24.4億円まで低下しました。まあ、市場によくある株価的に駄目な銘柄でしょうか。 あの某大手証券が主幹事証券になっている企業にはよくあるタイプなのかも知れませんが、2014年3月期こそ受注が第3四半期までで4割も増加して大きく 業績が伸びるという期待が高まり20年ぶりに株価の上昇が期待できると投資家の期待が高まる中で、やってくれました。

 今回、同社は工事現場での火災発生で約7億円の特損を計上することになったのです。

 2014年3月期決算の正式な決算発表は5月15日になりますが、既に今期の業績は5月2日付で修正発表されています。その失望売りで株価はその後安値トライを見せ5月9日には399円まで売られましたが、とても面白い実験的な株価形成です。

 と言うのも今回の発表はポジティブな評価とネガティブな評価が入り交じっているからです。具体的には売上、営業利益、経常利益の大幅な上方修正、これに 対して工事現場において発生した火災による損失による特損計上で最終利益が大幅な下方修正となった点がポジティブ、ネガティブに見られると考えられます。 火災は千葉県旭市の工場建設現場で発生。6億94百万円もの比較的大きな損失を計上することになったとしています(これは保険金で一定部分までカバーでき ると見ておりますが他の追加損失も想定していますのでなお流動的です。ただ、保守的に見積もっているようなのでこれ以上の損金は発生しないと想定できま す)。

 受注の拡大によって業績的には急速に改善をしています。ただ、最終利益が一過性の問題で下方に修正された点は株価にはマイナスとなっていますが、実績の経常利益が大きく上方修正された点は評価して良いかと思います。
 今回の火災の発生は極めて残念なことです。予期せぬ出来事なのである程度は保険金でカバーできますが、その詳細は不明。復旧作業の進捗次第では追加の損 失も想定されますので、なおも評価が分かれるところです。先週は399円の安値があって404円で引けました。出来高が3.3万株とこの株にしては比較的 出来てきました。投げが出たと推察されます。

【2014.3期推計業績】

期初計画売上高530億円⇒修正値556億円◎ 大幅な上方修正
同営業利益550百万円⇒同850百万円◎ 大幅な上方修正
同経常利益550百万円⇒同1050百万円◎ 大幅な上方修正
同当期利益350百万円⇒同 70百万円● 大幅な下方修正

【2015.3期の個人的な想定業績】

2016年3月期以降に向けた先行投資の可能性
海外案件での不採算受注の可能性
アジア及び海外情勢の不透明感
国内での受注動向が前期と同様にプラスとなるかは不透明
資材高、人件費高を吸収して増益を維持できるか?
過去12年間の業績推移の変化が激しい

売上高  600億円(+7.9%)受注残を消化できるかどうかがポイント
営業利益 1100百万円(+29.4%)工事採算の向上次第
経常利益 1300百万円(+23.8%)営業外収益2億円が前提
当期利益  600百万円(8.6倍) 特損がなくなる前提
EPS   45.9円
配当金   15円~18円  減配前の元の水準に戻る前提

【過去12年間の経常利益推移】

2002年 3.13億円   売上の1番目のピーク 566億円
2003年 6.57億円
2004年15.1億円 ◎
2005年 7.06億円
2006年10.69億円◎
2007年 0.32億円   売上の2番目のピーク 560億円
2008年11.2億円 ◎
2009年19.76億円◎ 業績のピーク(EPS73円)
2010年 8.95億円
2011年11.07億円◎
2012年 7.33億円
2013年 4.26億円
2014年(推)10.5億円◎ 受注残600億円相当に拡大 売上想定556億円
2015年(予)13.0億円◎

過去12年間の平均経常利益 9.66億円

 過去12年間は業績変動が激しい状況が見られます。この点が株価の上値を重くさせている要因なのかも知れません。短期的には15日に発表を予定している 2015年3月期の業績計画がポイントです。前期の第4四半期は今回の修正発表によって売上高212億円、営業利益11億円、経常利益11億69百万円、 当期利益2億69百万円となる見込みです。火災発生がなければ実質的に7億円余りの当期利益を計上できていたことになります。EPSは60円程度の計上も 考えられたということになります。400円台の株価はPERで7倍弱となり評価を高めた筈ですが、残念な結果となりました。今期については国内の民間工事 中心に受注の伸びが続くかどうかがポイントとなります。

 消費税増税による景気の落ち込みをカバーする政策が打ち出されないとしても実績の受注残が豊富で、それを消化するだけでも2015年3月期は売上高 600億円、営業利益11億円、経常利益13億円の水準が期待されます。当期利益は火災の状況次第ながら、特殊要因がなくなる点と保険金収入が得られる点 などを加味して考えた場合、前期に比べ大幅な増益が想定されます。但し、火災の発生が人材不足の結果、もたらされているとすれば今後も発生するという懸念 もありますので、まだネガティブな評価を内包している可能性もあります。時価404円はPBR0.3倍以下という水準です。保有する自己株を加味した実質 時価総額は控除した現状の実質時価総額は52.9億円で有利子負債を控除した実質現預金100億円を大きく下回っています。つまり実質現預金並みの時価総 額で評価されると株価は760円になります。

 20年余り眠っていた株価が現預金並みに評価されただけで高いリターンが得られる可能性のある株価をどう見るのか、興味は尽きません。業績の変動の大き さや談合体質に悩む業界の事情などが株価を低評価にさせてきた格好ですが、新たな評価ポイントが見出せれば自然体で株価は上昇を見せると思われます。
 なお、比較企業の東テク(9960)が従業員ぐるみの不正をして所得隠しを行ったとの報道がなされるなど業界の体質を問う向きも多いのかも知れませんが、ネガティブ要因を上回る企業価値が2015年3月期決算見通しに見出せるかを注意深く見守りたいと思います。

(炎)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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