今週(5月7~9日)の東京株式相場は(連休の谷間3日間でしたが)、日経平均株価が週間で257円(率にして1.8%)下落しました。休み明けの7日は 424円の大幅下落となりましたが、ウクライナで政権側と親ロシア派が武力衝突するなど、地政学リスクが意識されたのに加え、為替相場で101円台まで円 高・ドル安が進んだことも投資家の心理を悪化させました。

 円高の主因は、このところ欧米の長期金利が低下基調にあり、国内の長期金利との差が縮小していることです。2日に発表された米国の4月の雇用統計によれば、失業率は6.3%に低下し、非農業部門の雇用者数は前月比28万8千人増加しました。
 このところお伝えしているように、米国の景気は堅調に推移しつつあるといえますが、株価が底堅い動きを示しているのに対し、上昇してしかるべき長期金利が弱含んでいます。
 欧州の景気もドイツ中心に回復基調にあるものの、物価の上昇力が弱く、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が6月の追加金融緩和を示唆したことから、ドイツの長期金利も約1年ぶりの低水準となっています。

 名目金利でなく、インフレ率を差し引いた実質金利でみた場合、日本は消費者物価指数が上昇基調にありますから、実質金利は低下傾向にあり、特に米国との 実質金利差はむしろ拡大傾向にあります。本来マーケットではそのあたりが意識され、円安が進んでもおかしくはないと考えます。国内における消費税増税後の 反動の影響および物価動向が鮮明になるにつれ、「実質金利差」は意識されるのではないでしょうか。
 夏場にかけ個人消費主導で米国の景気が加速し、米国の株価も堅調に推移。日米両国の実質金利の格差も拡大することで、再び円安が進行、日本株も上昇に向かうとの予想に変わりはありません。

(水島寒月)

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