今週の東京株式相場は、週末にかけ4日続伸して終わりました。週初はウクライナ情勢の緊迫化に伴い、3日(月)まで4日続落となりましたが、その後はウク ライナで軍事衝突が回避される見込みとなるなど懸念が後退。為替が再び円安傾向となったこと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しが 取り沙汰されたことなどを好感し、日経平均で1万5000円台を回復しました。

 ウクライナについては、歴史的経緯、軍事的価値などから、ロシアはクリミア半島に関しては実質的な支配下に置きたいことでしょう。さりとて、「冷戦構造へ逆行」し、経済制裁を受けるような深刻な対立は回避したいものとみられます。
 ロシアの主要産業は資源産業であり、石油と天然ガスの価格高騰を背景に輸出の拡大で経済成長を遂げてきました。しかし、13年の実質GDPの伸び率は1.3%程度にとどまっています(12年は3.4%の成長)。
 国営企業の大型投資の一服、個人消費の鈍化が足を引っ張った形ですが、足元では通貨ルーブルの急落に対応するため、ロシア中央銀行が主要政策金利を 5.5%から7.0%への引き上げを余儀なくされました(3月3日)。このことは実体経済へのさらなる下押し圧力になるとみられます。また、気になるの は、天然ガスの生産量が近年伸び悩んでいることです。
 一方、米国は「シェール革命」の進行もあり、天然ガス生産は順調に増加。これを受けて米EIA(エネルギー情報局)は13年末、天然ガスおよび原油の生産見通しを大幅に引き上げています。日本向けをはじめとしてLNG(液化天然ガス)輸出案件の認可も進んでいます。
 こうした状況下で、ロシアが「西側」と深刻な対立に入ることは、経済的な「ジリ貧」をもたらすことが明白と言えましょう。一方、米国も財政赤字削減の一環として軍事予算を大幅に圧縮するなか、「物入り」な軍事衝突などは回避したいのが本音ではないでしょうか。

 それにつけ改めて思うのは、エネルギーの輸入大国であった米国が、資源を「武器」として扱うことが可能になったという事実です。まさに隔世の感がありますね。

 このところ、株価の動きは鈍いのですが、日揮(1963)、千代建(6366)といったLNGプラント関連の銘柄に改めて注目したいと考えております。

(水島寒月)

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