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本番を迎える東京オリンピック相場?

2014/03/06 15:15 投稿

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東京オリンピックの開催は6年後の2020年となるが、日本の株式相場は開催決定時に先取りをした格好となり、その後は調整気味です。

 それはピーク時に80兆円あった建設投資額が40兆円まで落ち込んだことで建設従事者の人手不足が顕著となり新たに従事しようとする若年専門職工が業界から離れてしまい、にわかに受注増が見られても集めるのに苦労していることが背景になっているように思われます。

 関連銘柄ではゼネコン株が受注の増加が顕著に見られる中、工事のクオリティが低下するなどの問題が露呈。三菱地所を施主とした都内のマンション工事で大 手ゼネコン鹿島が配管工事にありえないミスが生じ、賠償請求を受けるなどの信じられない出来事が起きているなど、急激な変化に人材面での対応が追い付かな いといった現象がネックとなっています。

 一方で工事の現場監督派遣事業でニーズが高まっている夢真ホールディングスの今期の採用者数は前期の1233名から1600名へと3割の人員増強を図る予定で、月次の採用数が拡大しており、急成長が見られます。

 大手ゼネコンは採算重視で受注を絞っていますが、それでも第3四半期までの受注は下記の通り、それぞれ30%前後の大幅な伸びを示しています。

大成建(1801)+29.8%
大林組(1802)+27.9%
清水建(1803)+29.9%
鹿島(1812) +39.7%

 労務費の高騰や資材高が今後の収益にマイナスの影響をもたらすと見方で景気対策による受注増が収益拡大にどの程度寄与するかは不透明で各社とも収益水準 はまだ低い状況です。また来期以降の受注動向も今期のように大きく伸びるかどうかは不透明ながら消費税の増税後の景気対策もあり高水準な建設投資が期待さ れる点が注目ポイントで今後は復興需要に加え、国土強靭化対応、オリンピックに向けた民間投資の高まりが期待されます。

 熊谷組や前田建設、三井住友、西松建、戸田建などの準大手ゼネコン、飛島建、銭高組、松井建、不動テトラ、大末建、鉄建、大豊、ナカノフドーなど中堅ゼネコンも第3四半期までの受注増が顕著です。

 こうしたゼネコンの受注増加が来期にかけて業界各社の収益向上につながるかに注目が寄せられます。

 このほかテノックス(1905)のように基礎工事事業に特化した企業の受注も堅調。同社は通期業績の修正を行っています。

 関連各社とも株価は大きく上昇していますが、ここに来て多くのゼネコン株には調整の動きが見られます。6年後の東京オリンピック開催に向けた収益向上を背景にした株高トレンドが維持できるか、引き続き注目しておきたいところです。

 建設投資の拡大基調への転換が20年ぶりに起きている点から建設株も20年タームでの視点での見直しが期待されます。


【参考銘柄】

1.飛島建設(1805)

 第3四半期累計受注高928億55百万円(+28.1%)
 通期受注高1130億円(+5.1%)
 ⇒第3四半期において1030億円から100億円増額し1130億円に
 ⇒通期の業績は不変

【要約】
 土木主体の老舗建設会社、防災のトビシマとして定評。1883年に飛嶋文次郎氏が福井で創業。今年で創業131周年を迎え、設立からは67周年を迎えよ うとしている老舗のみずほ(かつての芙蓉グループ)系建設会社。土木が主体で防災関連に強み。「トグル制震構法」で耐震補強に強み。かつては準大手ゼネコ ンとしての規模を有し、株式市場でも人気銘柄の一つでしたが、バブル崩壊の影響で金融支援を3度受けるなど苦境に陥ったことで、経営再建中ということもあ り、財務体質がぜい弱となっています。経営再建中ながら技術力には定評があり、「防災のトビシマ」として知られています。

 熊谷組と前田建設は飛島組(現在の同社)から独立してできた企業です。ですからバブル崩壊後の経営再建の中で2005年4月に熊谷組と経営統合するとい う話もありましたが、2004年にその経営統合は白紙となり自主再建の道を歩みました。年商1,000億円以上、従業員数1,000名以上という規模を維 持しながら業績の浮上を待っている状態で、国土強靭化計画の実現に不可欠な技術力を備えており、今後の活躍が期待されます。復興需要を取り込みながら東京 オリンピック開催に伴う社会インフラ構築のための新たな需要に期待が寄せられます。

 2014年3月期第3四半期の業績は受注が想定を上回っているほか、工事収益の改善や販売用不動産の売却などで堅調です。下期も採算の改善が進み、通期 の営業増益が期待されます。例年通り今期も第4四半期に業績が偏重していますが、単体の第3四半期受注は前年同期比28%増と好調です。資機材高や人件費 高などのネガティブ要因を克服できれば、来期以降も業績の拡大傾向が続くと期待されます。

【評価】
 同社の上場は第1回東京オリンピックが開催される3年前の1961年ですが、その後、高度経済成長時代の中で絶えず景気浮揚策として打ち出されてきた財 投関連株としての位置づけを持ち、日本の高度成長の恩恵を受けて発展を続けてきました。バブル経済のピークには株価は1930円という異常な水準にまで上 昇しましたが、その後の株価は有利子負債が膨らんだ公共投資関連株、ゼネコン株へのネガティブ評価が見られ、同社株もそうした流れの中で株価低迷が長期に わたって続きました。リーマンショック時の2008年には株価は10円という倒産寸前の水準まで売られましたが、その後は上昇傾向にあります。

 東北大震災後の復興需要の高まりやアベノミクスの成長戦略の一環としての国土強靭化計画、2020年の第2回東京オリンピックの開催決定など同社にとっ てはフォローの風が吹き始めており、中長期的な業績の浮上とともに株価の上昇が期待されます。なお、同社が経営再建を図るために優先株の発行で資金調達を 行った結果、株式に希薄化が見られます。このため、株価の上昇のためには一段の業績向上が求められます。

時価:151円 時価総額:197億円
昨年高値204円(10月)同安値94円(6月)
直近安値138円(2月4日) 直近高値165円(2月13日)


2.テノックス(1905)

 第3四半期累計受注高157億15百万円(+9.2%)
 通期受注高210億円(+6.0%)

【要約】
 1970年に設立された建設基礎工事会社。10頭の雄牛(テンオックス)に由来して社名が命名されたとされる。主力工法はテノコラムという地盤改良工法 で戸建住宅から高層建築物まで25,000件以上の実績を有しています。技術開発に注力しており、その改良版として開発したテノコラムECOが最大50% の残土量削減に貢献し、市場での評価を高めています。環境保護や経済性(基礎工事のコストを30%削減)に優れた工法として注目されています。こうした技 術基盤の下、東北大震災の復興工事の需要具現化や耐震化、液状化対応など今後の業績向上が期待されます。

 技術テーマは首都直下型地震で懸念される液状化問題への対応、耐震免震構造物向け高支持力、建設残土低減など。戸建住宅向け地盤改良工法「ピュアパイ ル」の市場認知度向上に加え、旭化成建材と共同開発したATT(アットコラム)が販売開始から10年でついにテイクオフ。今上期は昨年度に比べ30%の施 工量の増加が見られます。新日鉄住金との共同開発品である建築用新型鋼管杭工法「TN-X」の用途開発も進展中。環境は追い風で品質、信用力が増す中で2 期続いた赤字を前期より脱して業績の拡大傾向が見られます。今期の通期業績は施工効率の改善、原価低減、経費圧縮によって期初計画の予想経常利益5億円を 7億円に中間期で上方修正しましたが、2月12日付で更に10億円へと上方修正しました。
 なお、同社では業績連動型の配当政策を打ち出しており、この見通しが達成された場合は増配も期待されます。

【評価】
 同社の上場は日本経済がバブルの崩壊で低迷する入り口とも言える1991年11月で、その直後に8,700円(推定時価総額500億円以上)という高値 をつけましたが、その後は長期低迷を余儀なくされました。2003年には175円(時価総額約13億円)まで株価水準が下落し、その後も公共投資削減傾向 の中で2012年まで200円台で低迷を続けてきました。アベノミクス効果から昨年末よりようやく株価は上向いており、先週も業績の上方修正を背景に上昇 し高値で終わっています。ただ、まだPBRは0.4倍台にしか過ぎず、評価不足が顕著です。

 第3四半期現在の保有現預金は53.2億円で有利子負債5.6億円を差し引いても47.5億円の現預金を保有しており41億円余りの時価総額はまだ割安 だと判断されます。しかも自己株式を79万株余り保有しており、実質的な時価総額は37億円程度にしか過ぎません。時価総額が実質保有現預金並みとすれば 株価は700円程度となります。業績向上に連動して増配が期待されているほか、東北復興関連、東京オリンピック関連としての位置づけから20年タームでの 評価見直しが期待されます。なお、提携先の太洋基礎工業(1758)とは相互の株式持ち合いを行っており、同社は昨年11月に自己株式102万株のうち 23万株を一株420円で譲渡。一方で、同社は太洋基礎工業の株式10万株を保有しています。

(炎)

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