本連載を初めてお読みになる方は<孫子の投資法その1>を先にご覧くださ
い。 http://okuchika.jugem.jp/?eid=4482

■投資とは詭道なり 戦わないのが勝利への最短コース■

◎トレードオフ、何をしないかが大事 その2<相手の力を利用する>

◎戦争の上手な人間は、最初に準備した食糧や兵士で戦い補給をしない。もし遠征したら敵の食糧を奪って食べる。

 ビジネスでも、投資でも、戦争でも、何らかのアクションを起こすためには、どうしても資源やエネルギーが必要になります。

 戦争において、兵站(戦場へ食料や武器を供給する後方支援)の重要性は、よく指摘されるところです。いくら勇猛果敢な戦士でも、1週間も飲まず食わずでは戦闘の役には立ちませんし、その状態が続けば命さえ燃え尽きてしまうでしょう。

 地味で目立たない存在で、普段は顧みられることさえほとんどない兵站(資源・エネルギーの供給)ですが、勝敗を決する最も重要なポイントと言えるかもしれないのです。

 そのため孫子は、資源やエネルギーを温存するためできるかぎり戦争を起さないよう説きます。しかし、もしどうしても戦争を始めなければならない状況に陥った場合には、「相手の力を利用しなさい」と説きます。

 具体的には、戦地に持参するのは最小限の食糧だけとし、その後は戦いで相手から奪った食糧で食いつないでいきなさいというのです。無茶な話のようにも思えますが、戦地が遠くなればなるほど、兵站は大変になりますから、「現地調達」は極めて合理的手法です。
 また、相手から食糧を奪わなければ自分たちが飢え死にするという状況においては、兵士たちは文字通り死に物狂いで戦いますから、戦力強化の一つの方策ともいえます。

 ビジネスの世界でも同様です。潤沢な資本金を準備したベンチャー企業が、あっという間に資金を使い果たし、消え去っていくのを何回も目撃しました。この 場合「資金」が兵站になるわけですが、いくら最初にたくさん準備しても、ビジネスを早く軌道に載せ売上や利益をきちんと稼いでいかなければビジネス(戦 い)を続けていくことができませんし、ましてや勝利など望めません。

 もちろん、当初から十分な売り上げや利益を確保するのは並大抵ではありません。その場合には、資金をたくさん準備するのではなく、少ない資金でも十分 やっていけるビジネスモデルを確立することが重要なのです。使う資源やエネルギーが少なければ、長期戦にも耐えることができます。

 その上で、取引相手から得ることができる売り上げや利益を自分のものとして最大限に活用し、成功(勝利)を手に入れるのが賢い戦略というわけです。

 投資においても全く同じです。時々、自ら市場を動かそうとする方がいますが、それは労多くして実りが少ない行為です。

 市場を動かすのには莫大なエネルギーが必要ですが、そんなことをしなくても市場は勝手に動いてくれます。

 リーマンショックのような事件があれば、市場はパニックに陥って、あなたが思ってもいなかった安値で株式(金融商品)を買うことができるようにしてくれます。

 逆に、バブルが起これば、市場価格は勝手に上昇していき、笑いが止まらない高値で売却するチャンスを与えてくれます。

 いずれの場合も、市場という相手の力をうまく使うことによって「安値で買って高値で売る」という投資家の希望を実現させることができるのです。

(OH)

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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)