月曜日に随分と売られたので調べてみたら増資と売出しの発表だったのですが、それにしても、何故今この増資が必要なのかと首をかしげたくなります。しかも5%近い大株主の売出しまで一緒に。
これこそが割安株の罠(バリュートラップ)ですね。申し訳なかったです。株主を重視しない経営をしている上場企業が多く、そして日本の法律では企業買収が効率的に出来ないなどの障害により、解散価値の半分の株価になっても買われない。
B/Sを見る限りでは10億円くらいの設備投資資金は持っていますし、銀行も幾らでも貸してくれそうな会社です。現金もそれなりに持っていて前期営業 キャッシュフローが24億円もある会社が、ブックバリュー以下の株価で資金調達をすればダイリューションによって既存株主に迷惑をかけることは分かり切っ ています。
業績も上向き始め利益もちゃんと出している会社ですから、株主利益を優先するなら、資金効率の面からも銀行借入でレバレッジを効かせるべきタイミングかと思うのですが、不思議です。
つまりはオーナー企業故に会社の安定のためには外部株主の利益を顧みずとも構わないと経営が判断していること、幹事証券である三○UFJモルガンスタン レー証券も引受手数料欲しさに経営側にすり寄り、投資家を蔑ろにする体質であると言うことがここでも裏付けされました。まあ、どこの大手証券も似たりよっ たりですが…。
何故私が普段から大手金融機関批判ばかりしているのか?この例からもお分かり頂けると思います。
このグループも大手運用会社を持っていますが、本来声を上げるべき大手機関投資家からは何も出て来ません。米国では著名な運用会社ですらアクティビストと手を組んで株主利益を追求している時代だと言うのに…。
日本の資本市場はバブル期を通しても、そして「貯蓄から投資へ!」「個人投資家を増やそう!」と国が音頭を取っている現在でさえ、個人投資家では無く、 事業会社(発行体)と金融機関の為に運営されています。発行体(上場企業)と市場関係者(金融機関など)、そして投資家の「三方よし」では無く、「二方よ し」であるにも関わらず、「貯蓄から投資へ!」と謳いつつ個人投資家を食い物にしてきた歴史です。
投資信託にしても「プロが運用している」として手数料を取りながらインデックスを超える運用すら出来ず、特別配当で元本を削っているにもかかわらず好利 回りを謳ったり、単なるファンドオブファンズにもかかわらず高い信託報酬を取ったりと、長い年月の中で個人投資家は日本の証券市場(証券、銀行など証券市 場運営者)を信用出来なくなっています。それ故に市場参加者の厚みが増さず、小型株がその値動きだけで乱高下するなど、気を許せばすぐに一部の投機家だけ の賭博場になってしまう繰り返しです。
小手先の税優遇策や期間限定のNISA、形ばかりの罰則規定などではなく、より一層の法整備を進め、違法者には罰則も厳しくした上で、株主を軽視した怠惰な上場企業や不審な経営を続ける上場企業を排除、または厳しくできる、投資家のための先進的な市場運営が望まれます。
日本の証券取引所がやるべきことは、まずは足元の投資家(国内のローカル投資家)の利益に合致する、投資家を育成する運営を第一義としなければなりませ ん。それなくしては、所詮は一時的なお祭りで終わってしまうでしょうし、今の株価評価(バリュエーション)が続くとは思えません。
余談ですが、気になっていたアブラハムなんとかと言う会社に当局の手が入りました。どんな運用をすればそうなるのか?殆ど開示が無いのでコトの真相は分 かりませんが、毎月5万円の投資で30年間で1億円になるなどと大胆に広告している不審な会社と感じていました。それでも3,000人もの人から金を集め ていたと言うのですから驚いたものです。
これら怪しい業者の跋扈も、今まで行政(財務省)と大手金融機関がグルになって個人投資家を利用するだけで、しっかりとした金融教育をしてこなかった弊害の一つとも感じます。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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