先週は2つの銘柄をもとに株価の推移を考えてみました。
この1週間の動きをみると、三菱商事は1,866円(8月7日引値)から1,936円(8月14日大引)へと3.7%ほど上がり、JPXは9,330円から8,380円へと10%以上の値下がりをしました。
三菱商事の株価動向は緩慢なものの、大手商社は安定して収益を上げているとの認識が広まったと思われること、配当利回り3%以上と言う好条件から、インデックスにはそれほど変化が無かったにもかかわらず株価が上昇した…などが考えられます。
一方のJPXは相対的にバリューエーション面で割高な状況が続いていること、取引所の出来高が減少傾向にあり収入の伸びが期待され辛くなっていること、年初からの急速な値上がりに対する反動…などを理由として下げたと推測されます。
今後につきましては、JPXのPERは依然として20倍以上で割高と感じられますし、それに対して商事は8倍以下ですから、その他の指標を勘案しても マーケットが沈静化してくれば理論的には商事の方が買われ易いのでしょうが、株価と言うのは安易に予測できないものです。足元では取引所の売買高が1兆円 半ばまで低下していますが、これが再度大幅に増えそうだと考える投資家が増えれば買われ易くなりますし、海外の資源動向や中国の景気動向によっては商社の 株価が低迷する可能性もあります。
但し、少なくとも中長期で見れば人気投票の向かう先も変わりますし、平均的なバリュエーションに比較して割安とか割高、配当利回りの高さなどは株価を評 価する上で重要な指標となりますので、これらを無視してその時々の動きやムードばかりで売買するのは危険です。例えばJPXにしても「高値から大きく下 がった」「まだ人気があるようだ」などと感じても、やはり少しでも割高と感じたら動きは良くても手を出してはいけないのだと思います。
先日も書きましたように、自分としては何を基準に売買するのか?どうなったら見切る(ロスカット)のか?幾ら程度の期間を投資の目処にするのか?など、 ある程度の前提を決めた上で投資を実行し、その前提に反した動きが見られた際にはその考え方を再点検したり修正したりして自分なりの投資基準を見つける作 業が大事と思います。
バブルの傾向が出てくると、様々なテーマや業種が順番に物色されるようになります。思い返すときにはいつも1980年代中頃からの株式市場動向が思い浮かびます。
85年9月のプラザ合意を起点として大幅な円高となり、240円前後で推移していた円ドル相場は僅か2年半で120円辺りまで一気に円高が進みました。 余りに急な動きだったため87年2月のG7ではドル安とマルク安を阻止する為のルーブル合意までされたのですが、その後も容易には円高は止まりませんでし た。
その急激な円高を阻止する為、日銀は公定歩合を始めとした市場金利の押し下げ誘導を始める訳ですが、当時は現在と比較して為替取引の自由化も余り進んで いなかったため余剰資金が国内に滞留し、且つ円がどんどんと強くなっていく過程で日本が債権大国に向かってゆくシナリオがクローズアップされていきまし た。そして資産インフレが起こり、不動産と株式に金が流れ込みます。
84年中頃に東証一部時価総額は100兆円に乗りましたが、その6年後には600兆円にまで膨れ上がりました。そしてそれを先取りするかのように証券株 が値上がりを始め、87年3月期には野村証券の経常利益が5,000億円を超えるとの予想の中で、野村証券株は決算発表前の同年4月に史上最高値となる 5,990円を付けました。その後も野村証券の業績は上がるのですが変化率としては87年度が最も大きく、結果として株価はこの5,990円をピークに下 げ基調に入りました。
今後の証券株の行方は分かりませんが、野村HDを始めとした金融株の動向をみると当時を思い出します。今の株価がどの辺りに位置しているかを考える際、 リーマンショック以降には大手銀行株を筆頭に膨大な額の増資をしていますので、持ち合い解消による浮動株の推移なども踏まえれば、概ね2006 年~2007年当時のピーク株価の半値辺りまででも上がれば時価総額では十分に戻したと捉えるべきではないかと考えています。つまり少なくとも、今のとこ ろアベノミクスから得られる印象や、足元の株式市場のボリュームレベルからは証券株が当面の高値を付けた可能性が高いとも言えそうです。
市場の先行きはどうなるか分かりませんが、足元の予想では東証上場銘柄の今期EPS予想は800円台後半ですから、既にPER15倍前後を超えるところ まできています。これからも日銀の資金供給が継続されることにより一層の過剰流動性が生まれ、より大きなバブルへと向かうのか?それとも、業績を読み込み つつ上下するような落ち着いた相場動向になるのか?
いずれにしても、PBR0.5倍などと言う銘柄がゴロゴロしている株式本来の面白味のない市場では投資家は育ちません。目先の(動きそうな)材料ばかり を追い、一部の投機的な売買ばかりが蔓延る博打場になっているだけです。いくら「貯蓄から投資へ」などと旗を振ってみても、市場の仕組みや運営方法に問題 がある訳ですから、投資家のすそ野は中々広がりません。
NISAにしても10月からの申し込みにもかかわらず、顧客囲い込みを目的に大手金融機関ばかりが広告宣伝競争をしています。NISAでは収益が見込め ないけど、口座獲得した金融機関にその素人さんが相談にでも来てくれれば、「どこにでもある投資商品」をもっともらしく説明して「NISAの上限額とは別 に」売り付ける機会を得られるからです。銀行から見れば、利益を生まない貯蓄から利益を生む投資への乗り換え勧誘です。
最近人気のドラマ「半沢直樹」では無いですが、大手金融機関ほど顧客の利益など二の次三の次であることは新聞の投信広告を見ても一目瞭然です。以前から ある一般的な投信との違いが見いだせ無い(とても新商品とは思えない)新商品を、販売時手数料や信託報酬を少しずつ値上げして新発売しています。NISA の口座開設など焦ることはありませんし、大手銀行に開ける必要も感じません。様々な金融商品を扱い、親身な担当者のいる金融会社をゆっくり探した上で投資 商品を決めれば良いだけです。1年毎に100万円ずつ、しかも1年に一度の利益しか非課税対象にならないのですから商品選びや投資するタイミングがとても 重要になります。NISA口座を急いで作らせようとする金融マンなど信用してはいけません。それは大手金融機関所属の合法的詐欺師です。
今後の株式投資に就きましては、消費税の取り扱いを巡る個別の景気対策や円安を理由とした製造業の国内シフト、企業の設備投資に於ける中国回避の動向な ども踏まえる必要がありそうです。これから1か月間くらいは慌てずに今後の投資方針を決める大事な時期に入ると考えています。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
この1週間の動きをみると、三菱商事は1,866円(8月7日引値)から1,936円(8月14日大引)へと3.7%ほど上がり、JPXは9,330円から8,380円へと10%以上の値下がりをしました。
三菱商事の株価動向は緩慢なものの、大手商社は安定して収益を上げているとの認識が広まったと思われること、配当利回り3%以上と言う好条件から、インデックスにはそれほど変化が無かったにもかかわらず株価が上昇した…などが考えられます。
一方のJPXは相対的にバリューエーション面で割高な状況が続いていること、取引所の出来高が減少傾向にあり収入の伸びが期待され辛くなっていること、年初からの急速な値上がりに対する反動…などを理由として下げたと推測されます。
今後につきましては、JPXのPERは依然として20倍以上で割高と感じられますし、それに対して商事は8倍以下ですから、その他の指標を勘案しても マーケットが沈静化してくれば理論的には商事の方が買われ易いのでしょうが、株価と言うのは安易に予測できないものです。足元では取引所の売買高が1兆円 半ばまで低下していますが、これが再度大幅に増えそうだと考える投資家が増えれば買われ易くなりますし、海外の資源動向や中国の景気動向によっては商社の 株価が低迷する可能性もあります。
但し、少なくとも中長期で見れば人気投票の向かう先も変わりますし、平均的なバリュエーションに比較して割安とか割高、配当利回りの高さなどは株価を評 価する上で重要な指標となりますので、これらを無視してその時々の動きやムードばかりで売買するのは危険です。例えばJPXにしても「高値から大きく下 がった」「まだ人気があるようだ」などと感じても、やはり少しでも割高と感じたら動きは良くても手を出してはいけないのだと思います。
先日も書きましたように、自分としては何を基準に売買するのか?どうなったら見切る(ロスカット)のか?幾ら程度の期間を投資の目処にするのか?など、 ある程度の前提を決めた上で投資を実行し、その前提に反した動きが見られた際にはその考え方を再点検したり修正したりして自分なりの投資基準を見つける作 業が大事と思います。
バブルの傾向が出てくると、様々なテーマや業種が順番に物色されるようになります。思い返すときにはいつも1980年代中頃からの株式市場動向が思い浮かびます。
85年9月のプラザ合意を起点として大幅な円高となり、240円前後で推移していた円ドル相場は僅か2年半で120円辺りまで一気に円高が進みました。 余りに急な動きだったため87年2月のG7ではドル安とマルク安を阻止する為のルーブル合意までされたのですが、その後も容易には円高は止まりませんでし た。
その急激な円高を阻止する為、日銀は公定歩合を始めとした市場金利の押し下げ誘導を始める訳ですが、当時は現在と比較して為替取引の自由化も余り進んで いなかったため余剰資金が国内に滞留し、且つ円がどんどんと強くなっていく過程で日本が債権大国に向かってゆくシナリオがクローズアップされていきまし た。そして資産インフレが起こり、不動産と株式に金が流れ込みます。
84年中頃に東証一部時価総額は100兆円に乗りましたが、その6年後には600兆円にまで膨れ上がりました。そしてそれを先取りするかのように証券株 が値上がりを始め、87年3月期には野村証券の経常利益が5,000億円を超えるとの予想の中で、野村証券株は決算発表前の同年4月に史上最高値となる 5,990円を付けました。その後も野村証券の業績は上がるのですが変化率としては87年度が最も大きく、結果として株価はこの5,990円をピークに下 げ基調に入りました。
今後の証券株の行方は分かりませんが、野村HDを始めとした金融株の動向をみると当時を思い出します。今の株価がどの辺りに位置しているかを考える際、 リーマンショック以降には大手銀行株を筆頭に膨大な額の増資をしていますので、持ち合い解消による浮動株の推移なども踏まえれば、概ね2006 年~2007年当時のピーク株価の半値辺りまででも上がれば時価総額では十分に戻したと捉えるべきではないかと考えています。つまり少なくとも、今のとこ ろアベノミクスから得られる印象や、足元の株式市場のボリュームレベルからは証券株が当面の高値を付けた可能性が高いとも言えそうです。
市場の先行きはどうなるか分かりませんが、足元の予想では東証上場銘柄の今期EPS予想は800円台後半ですから、既にPER15倍前後を超えるところ まできています。これからも日銀の資金供給が継続されることにより一層の過剰流動性が生まれ、より大きなバブルへと向かうのか?それとも、業績を読み込み つつ上下するような落ち着いた相場動向になるのか?
いずれにしても、PBR0.5倍などと言う銘柄がゴロゴロしている株式本来の面白味のない市場では投資家は育ちません。目先の(動きそうな)材料ばかり を追い、一部の投機的な売買ばかりが蔓延る博打場になっているだけです。いくら「貯蓄から投資へ」などと旗を振ってみても、市場の仕組みや運営方法に問題 がある訳ですから、投資家のすそ野は中々広がりません。
NISAにしても10月からの申し込みにもかかわらず、顧客囲い込みを目的に大手金融機関ばかりが広告宣伝競争をしています。NISAでは収益が見込め ないけど、口座獲得した金融機関にその素人さんが相談にでも来てくれれば、「どこにでもある投資商品」をもっともらしく説明して「NISAの上限額とは別 に」売り付ける機会を得られるからです。銀行から見れば、利益を生まない貯蓄から利益を生む投資への乗り換え勧誘です。
最近人気のドラマ「半沢直樹」では無いですが、大手金融機関ほど顧客の利益など二の次三の次であることは新聞の投信広告を見ても一目瞭然です。以前から ある一般的な投信との違いが見いだせ無い(とても新商品とは思えない)新商品を、販売時手数料や信託報酬を少しずつ値上げして新発売しています。NISA の口座開設など焦ることはありませんし、大手銀行に開ける必要も感じません。様々な金融商品を扱い、親身な担当者のいる金融会社をゆっくり探した上で投資 商品を決めれば良いだけです。1年毎に100万円ずつ、しかも1年に一度の利益しか非課税対象にならないのですから商品選びや投資するタイミングがとても 重要になります。NISA口座を急いで作らせようとする金融マンなど信用してはいけません。それは大手金融機関所属の合法的詐欺師です。
今後の株式投資に就きましては、消費税の取り扱いを巡る個別の景気対策や円安を理由とした製造業の国内シフト、企業の設備投資に於ける中国回避の動向な ども踏まえる必要がありそうです。これから1か月間くらいは慌てずに今後の投資方針を決める大事な時期に入ると考えています。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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