5月も後半に入り、例年言われるsell in Mayはどこのその、株式市場の上昇が続いています。押し目という言葉は死語!?と言いたくなるような相場は、まさに「異次元」。嬉しいけど恐さもあり。とにかく半端じゃない相場が続いています。
一方、為替相場は、調整を挟みつつ、100円の壁突破に時間がかかりましたが、ドル・円相場は米国の雇用情勢の改善をきっかけに久方ぶりの3ケタへ上 昇。あっという間に17日ニューヨーク市場で高値103円台まで急速に円安・ドル高が進みました。今週は、週末の甘利大臣の発言で102円台まで戻ったと は言え、底堅い展開が続いています。5月8日の拙コラムで、為替相場の動きはスローな展開で円安へ進み、その背景は円サイドの問題で円安になるだろう、と コメントしたのですが、スピードと背景についての推測は見事に違っておりました。
さて、このところの為替市場動向の特徴は、ドル高です。主要貿易通貨バスケットに対するドル指数は、昨年7月ユーロ安が進んだ際の高値水準84.10を 抜き、先週17日には84.371まで上昇しました。年初来のパフォーマンスで、対米ドルで上昇した主な通貨はメキシコ・ペソ(4.2%)タイバーツ (2.7%)そして、このところ上昇が目立つ中国人民元の1.52%で少数派です。
金融緩和政策の出口に最も近いとされる米国。それに比べて、金融緩和が長期化しそうな日本、英ポンド、更なる金融緩和が予測される豪ドルなどは多数派 で、対ドルで下落しています。また、オーストラリアの利下げ後、トルコ、韓国など、利下げを行った国が多かったことも米ドル高につながりました。
まず、少数派である、中国・人民元について見てみましょう。
ドル対人民元は年初、6.2327で始まり、直近5月21日終値は6.1356と1.56%の上昇。2005年7月の人民元切り上げ後の高値を更新しています。
人民元の上昇には、中国への資本流入が人民元高を促し、資本市場の自由化も進むとの見方の背景には、中国当局による通貨高への許容度の高まりがあると言われます。
人民元対円相場も、昨年ほぼ12円台で推移していましたが、直近では、16円70銭台まで元高円安が進みました。対日貿易で為替レートが不利に働き始めたことへの中国側の不満も聞かれますが、人民元相場を見る上では、対
米関係の影響が強いとされます。
今日の新聞報道に、中国の習近平国家主席が訪米、6月に米中首脳会談を行う予定とありました。人民元高を促してきた米国との首脳会談を前に、人民元高は演出しておきたいところだと思います。
日本円から人民元に投資する手段は、増えつつあります。元預金、点心債を組み込んだ投資信託、FXなどが受け皿になります。外貨投資の通貨分散としても、日本からの元投資は増えて行くと思っています。
中国と貿易面でも大きなつながりがあり、これまで中国市場と相関が強かった豪ドルは、最近、豪中銀が行った突然の利下げ後、弱い展開が続いています。豪 ドルは、準主要通貨として、いわゆるリスクオン相場(リスク選好が強い相場)の際には、外貨投資の受け皿とされてきて、日本の投資家にも根強い人気を保っ てきました。
一次産品の輸出を主とするオーストラリアですから、このところの商品相場の下落は経済に影響していますが、何と言っても、豪ドルは物価水準から見て割高 な状態が続いています。オーストラリアにとっては、人気者の宿命では済まされない豪ドル高。消費者物価による購買力平価は対米ドルで30%近く割高の水準 ですので、今後水準がある程度まで是正されなければ、追加の利下げの可能性もありそうです。
ドル・円相場が上昇したので、1豪ドルは4月に一時105円台をつけましたが、現在は100円近辺での推移。米ドル高基調ということもあり、豪ドルの上値の相対的な重さは続くのではないかと思っています。
さて、最後にドル・円相場です。
米株式市場にも為替市場にとっても、最大関心事は米国の量的緩和QE3の終点、超緩和政策の出口時期と言われ、FRB理事たちのコメントや経済指標が日々影響しています。
22日の米国市場の注目点は、バーナンキFRB議長の議会証言、前回のFOMC議事録の発表です。前回,FOMCでは、買入債券の増額も減額も声明文に 入れていますので、1ヶ月も経過しない今日に、出口時期について明言することはないと思います。また、任期が来年初になったバーナンキ議長発言の影響力は 徐々に弱まるとの見方も出ています。
米国の出口戦略以外で、ドル・円相場が上昇する背景としてあげたいのは、日米の財政収支と日米の実質金利差の変化です。
日本の財政収支が改善しない一方で、米国の財政収支は改善傾向である点。また、インフレ率が低下する米国で実質金利は上昇、日本では逆に下げています。
例えば、米国の消費者物価は昨年初には3%でしたが、直近4月は1.1%に低下。一方、日本の消費者物価、昨年初はマイナス1.1%、直近の3月の数値 はマイナス0.5%。両国10年債を物価調整の実質金利を比較すると、昨年初は米債がマイナス1.08%、日本はプラス2%でしたから、日本の実質金利は 3.08%も高かったのですが、直近では、米債の実質金利はプラス0.83%に上昇し、日本はプラス1.3%に低下しましたから、0.95%縮小したこと になります。こういった要素もドル・円相場上昇の支援材料だと思います。
4月の日本の貿易収支は予想外の悪化でした。輸入はドル決済が多いので、円安は貿易収支の悪化につながります。円安が円安を呼ぶ、という動きになる可能性があります。
100円超えで、次の壁は(ワイドですが)105円から110円レンジ。年末とか来年のターゲットと見る向きが大勢ですが、小さな調整は挟むにしろ、案外予想よりも早い時期につけてしまう可能性が高くなってきたかもしれません。
相場も季節もアツくなってきましたが、判断は冷静に行きたいところです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*5月22日13時執筆。本号の情報は5月21日のニューヨーク市場の終値
レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
余談ですが、私が日本国債をトレードしていた大昔、「今日の高値は明日の安値。買いしかない!」という言葉が飛び交っていた国債バブルの時期がありました。最近の日本の株式相場は、そんな言葉を思い出させてくれます。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
一方、為替相場は、調整を挟みつつ、100円の壁突破に時間がかかりましたが、ドル・円相場は米国の雇用情勢の改善をきっかけに久方ぶりの3ケタへ上 昇。あっという間に17日ニューヨーク市場で高値103円台まで急速に円安・ドル高が進みました。今週は、週末の甘利大臣の発言で102円台まで戻ったと は言え、底堅い展開が続いています。5月8日の拙コラムで、為替相場の動きはスローな展開で円安へ進み、その背景は円サイドの問題で円安になるだろう、と コメントしたのですが、スピードと背景についての推測は見事に違っておりました。
さて、このところの為替市場動向の特徴は、ドル高です。主要貿易通貨バスケットに対するドル指数は、昨年7月ユーロ安が進んだ際の高値水準84.10を 抜き、先週17日には84.371まで上昇しました。年初来のパフォーマンスで、対米ドルで上昇した主な通貨はメキシコ・ペソ(4.2%)タイバーツ (2.7%)そして、このところ上昇が目立つ中国人民元の1.52%で少数派です。
金融緩和政策の出口に最も近いとされる米国。それに比べて、金融緩和が長期化しそうな日本、英ポンド、更なる金融緩和が予測される豪ドルなどは多数派 で、対ドルで下落しています。また、オーストラリアの利下げ後、トルコ、韓国など、利下げを行った国が多かったことも米ドル高につながりました。
まず、少数派である、中国・人民元について見てみましょう。
ドル対人民元は年初、6.2327で始まり、直近5月21日終値は6.1356と1.56%の上昇。2005年7月の人民元切り上げ後の高値を更新しています。
人民元の上昇には、中国への資本流入が人民元高を促し、資本市場の自由化も進むとの見方の背景には、中国当局による通貨高への許容度の高まりがあると言われます。
人民元対円相場も、昨年ほぼ12円台で推移していましたが、直近では、16円70銭台まで元高円安が進みました。対日貿易で為替レートが不利に働き始めたことへの中国側の不満も聞かれますが、人民元相場を見る上では、対
米関係の影響が強いとされます。
今日の新聞報道に、中国の習近平国家主席が訪米、6月に米中首脳会談を行う予定とありました。人民元高を促してきた米国との首脳会談を前に、人民元高は演出しておきたいところだと思います。
日本円から人民元に投資する手段は、増えつつあります。元預金、点心債を組み込んだ投資信託、FXなどが受け皿になります。外貨投資の通貨分散としても、日本からの元投資は増えて行くと思っています。
中国と貿易面でも大きなつながりがあり、これまで中国市場と相関が強かった豪ドルは、最近、豪中銀が行った突然の利下げ後、弱い展開が続いています。豪 ドルは、準主要通貨として、いわゆるリスクオン相場(リスク選好が強い相場)の際には、外貨投資の受け皿とされてきて、日本の投資家にも根強い人気を保っ てきました。
一次産品の輸出を主とするオーストラリアですから、このところの商品相場の下落は経済に影響していますが、何と言っても、豪ドルは物価水準から見て割高 な状態が続いています。オーストラリアにとっては、人気者の宿命では済まされない豪ドル高。消費者物価による購買力平価は対米ドルで30%近く割高の水準 ですので、今後水準がある程度まで是正されなければ、追加の利下げの可能性もありそうです。
ドル・円相場が上昇したので、1豪ドルは4月に一時105円台をつけましたが、現在は100円近辺での推移。米ドル高基調ということもあり、豪ドルの上値の相対的な重さは続くのではないかと思っています。
さて、最後にドル・円相場です。
米株式市場にも為替市場にとっても、最大関心事は米国の量的緩和QE3の終点、超緩和政策の出口時期と言われ、FRB理事たちのコメントや経済指標が日々影響しています。
22日の米国市場の注目点は、バーナンキFRB議長の議会証言、前回のFOMC議事録の発表です。前回,FOMCでは、買入債券の増額も減額も声明文に 入れていますので、1ヶ月も経過しない今日に、出口時期について明言することはないと思います。また、任期が来年初になったバーナンキ議長発言の影響力は 徐々に弱まるとの見方も出ています。
米国の出口戦略以外で、ドル・円相場が上昇する背景としてあげたいのは、日米の財政収支と日米の実質金利差の変化です。
日本の財政収支が改善しない一方で、米国の財政収支は改善傾向である点。また、インフレ率が低下する米国で実質金利は上昇、日本では逆に下げています。
例えば、米国の消費者物価は昨年初には3%でしたが、直近4月は1.1%に低下。一方、日本の消費者物価、昨年初はマイナス1.1%、直近の3月の数値 はマイナス0.5%。両国10年債を物価調整の実質金利を比較すると、昨年初は米債がマイナス1.08%、日本はプラス2%でしたから、日本の実質金利は 3.08%も高かったのですが、直近では、米債の実質金利はプラス0.83%に上昇し、日本はプラス1.3%に低下しましたから、0.95%縮小したこと になります。こういった要素もドル・円相場上昇の支援材料だと思います。
4月の日本の貿易収支は予想外の悪化でした。輸入はドル決済が多いので、円安は貿易収支の悪化につながります。円安が円安を呼ぶ、という動きになる可能性があります。
100円超えで、次の壁は(ワイドですが)105円から110円レンジ。年末とか来年のターゲットと見る向きが大勢ですが、小さな調整は挟むにしろ、案外予想よりも早い時期につけてしまう可能性が高くなってきたかもしれません。
相場も季節もアツくなってきましたが、判断は冷静に行きたいところです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*5月22日13時執筆。本号の情報は5月21日のニューヨーク市場の終値
レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
余談ですが、私が日本国債をトレードしていた大昔、「今日の高値は明日の安値。買いしかない!」という言葉が飛び交っていた国債バブルの時期がありました。最近の日本の株式相場は、そんな言葉を思い出させてくれます。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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