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シンガポール移住の注意点

2013/05/20 13:43 投稿

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こんにちは、株式会社ZUUの冨田和成です。

 ここ数年、特に東京・名古屋・大阪などの富裕層密集エリアでは、外資系金融機関を中心に海外への資産移転が積極的に斡旋されているようです。

 有名な所ではHOYAの鈴木CEOがシンガポールへ、ベネッセの福武会長がニュージーランドへ、サンスターの金田会長がスイスへ、バルスの髙島社長が香港へとここ数年大物達の海外移転が続きました。

 また、私も前職の野村證券時代に東京本社のプライベートバンクや野村シンガポールにてプライベートバンカーをしていた時期があり、実際に富裕層の方の海外移住をサポートしていました。

 時流を掴もうとお考えの方が多いのか、現在海外移住を仲介する会社は非常に増えています。そのためGoogleで検索すると、全てチェックする事を諦めてしまう程の会社数がヒットし、全体の概要や有用な情報を把握する事が難しい状況です。

 そこで、特に富裕層向けの移住の候補として人気の高いシンガポールを例に、海外移住の実態と注意点をまとめてさせてい頂きました。

 やや、最近の移住ブームについて否定的ともとれる内容になってしまいましたが、あくまでも私は海外移住には賛成の立場です。ただ真実を理解することで、失敗する事を避けて欲しいという思いで書かせて頂いています。


【海外移住の斡旋は、誰が積極的に行っているのか?】

 海外に受け皿のある外資系の金融機関や、海外にネットワークを持つ仲介会社などが多いです。

 そしてその中でも特に積極的なのは、UBSやクレディスイスなどの日本で積極的にビジネスを展開している外資系プライベートバンクです。また日本にオ フィスはありませんが、シンガポール系のプライベートバンクであるバンクオブシンガポールなどは、海外から日本へ積極外交していることで有名です。

(しかし、2004年にシティバンクが金融庁より営業停止処分を受けたように、日本でビジネスを展開する金融機関は当局に目をつけられないように慎重に事業を展開しているようです。)


【斡旋業者はどのような事を行っているのか?】

 大袈裟にお伝えしますと富裕層達の不安を煽り、国内の税制の高さや国内に資金を置いておくことの危険性を語り、スイスやシンガポールや香港への資金移動と移住を薦めています。

 そしてその大きなセールストークとして、永住権を簡単に取得できるし、また全ての手配を手伝うと謳っています。


【どのように永住権を取得するか?~シンガポールの例~】

 以前は、シンガポール政府公認の金融投資スキーム(FIS)を使うことが一般的でした。しかしこのスキームは2012年4月に廃止されたため、今ではグローバル投資プログラム(GIP)というスキームを使う事が一般的です。

 なおGIPで重要視される審査基準は以下の通りです。

・過去の顕著なビジネス実績
・事業家としての経歴
・ビジネスプランまたは投資計画を提供
・以下のオプションのいずれかに該当
 ◯オプションA:250万ドル(SGD)をニュービジネス、もしくは既存事業の拡張へ投資
 ◯オプションB:250万ドル(SGD)をGIPが承認するベンチャーキャピタルファンドへ出資

※250万ドル(SGD)は日本円で約2億円です(2013年5月9日現在)


【シンガポール移住に落とし穴はあるのか?また注意点は?】

1)審査の厳格化

 近年は上記のスキーム(GIP)に関しても審査が厳しくなっています。また取得までの期間も長くなりました。

 背景として中国人の申請数がここ数年で倍増しており、シンガポールとしても警戒をしているといった理由があるそうです。

 また、先日シンガポールの政府系機関の友人が来日した際に伺った話では、より審査基準を高くする(例えば最低条件を3000万SGDにするなど)ことで、真の富裕層や大物がもっと容易に永住権(もっと言えば国籍)を取得できるようなスキームを現在検討中とのことです。


2)子息への軍役義務

 シンガポールで永住権を取得する際に一番の懸念材料になるのは、永住権の取得後にご子息の世代が軍事訓練に行かなければならないことです。

 兵役が義務化されていない日本人にとって、ご子息にその義務が課される事にはかなりの抵抗があるのは当然でしょう。


3)税制に関する理解不足

 海外移住の斡旋業者では、シンガポールの証券税制の魅力=所得税の低さ・投資売却益などの非課税などを謳う人が多くいます。しかし残念ながら誤認説明のケースも多々あります。

 まず、完全に移住しない限りシンガポールでは非課税となりますが、日本では課税対象になり申告と納税の義務が生じます。

 多様なプロダクトへのアクセスというメリットは残りますが、税制のメリットはありません。


4)最終的に帰国を決断した場合のリスク

 移住を決意しても、70歳を過ぎてくると、色々な面で不自由を感じることがあります。そのため、結局日本に帰国してしまうこともあるようです。

 もちろんこのようなケースでは、最終的な相続税などは日本で課税されます。


 以上、シンガポールの話題を軸に近年盛り上がりを見せる海外移住に関する情報をまとめさせて頂きました。移住はやはり大きな決断ですので、このような真実やリスク、デメリットを理解した上で行動して欲しいと思います。

 金融の専門家側は、しっかりと勉強をした上で顧客に提案をして欲しいですね。

 やや、海外移住や資産移転に対してネガティブな印象を抱かせてしまう記事となりましたが、個人的な本音は日本のグローバル化や日本企業の海外進出、日本人による海外移住には賛成です。

 しかし残念ながら、きちんと調べる事無く闇雲に海外への移住を煽る傾向も出てきており、そこに不安を感じています。真のグローバル化が始まろうとしてい る日本において、金融機関側の誤認説明や顧客の不注意によりトラブルが起きる事で、グローバル化や移住の流れにマイナスのイメージが着くことを恐れていま す。だからこそ、進出や移転を検討されている方はよく調べきちんと準備を行い、幸せな海外移住を実現して欲しいと思います。

冨田和成
株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO

冨田和成プロフィール

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

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