有力外国人投資家のポジティブな発言もあって日本株は上昇傾向を一気に強め、日経平均は既に1989年末のバブル相場のピークである3万8957円まで16%足らずの水準にまで接近してきました。3万円に乗せてから1カ月もたたないうちに3万3000円台乗せの上昇で多くの投資家には戸惑いもあるのかも知れません。
株高には様々な要因が背景になっています。
エコノミストからは円安による先行きの企業業績の拡大がまずは指摘されるポイントですが、これだけでは不十分でこれまで日本株が割安に放置されてきたことへの是正の動きと思われます。
先週末段階で時価総額は3市場合計で847兆円を超えてきましたので国民全体の資産も増加したと言えます。コロナショック時に日本株をETF(インデックス型投資信託)で大量に購入し日本最大の大株主となっている日銀にとっては含み益が増加しているでしょうし、資金運用額190兆円の年金(GPIFという年金積立金管理運用独立法人で運用)の運用利回りも現段階では向上し将来の年金拠出にプラスとなって働くものと期待されます。
年金基金はともかく、日銀のETF買いは緊急的な株価急落への対応でPKO(株価維持政策)と呼ばれますが、コロナショック時に外国人投資家が大量に売ってきた日本株の受け皿機関が日銀。
その日銀が購入したETF(日経平均型からTOPIX型に移行し直近において日本の時価総額の7%、51兆円を保有していたとされる)はどこかで放出しないとなりません。
先週末の植田日銀総裁もさすがに株価に対してのコメントはできないと記者の質問には答えませんでした。記者も日銀が保有するETFはどうされるのかにまで質問が及びませんでした。株高に掉さす発言は日銀総裁としてはできませんので目下は黙って相場の上昇を見ていると推察されますが、株価が一定水準まで上昇すれば何らかの格好で日銀の保有ETF放出が話題になると考えられます。これは今回の会見でのこれまでの金融政策の大規模緩和維持とともに市場の大きな関心事となるのだろうと思われます。
かつて植田新総裁の就任時の記者会見においてYCC(イールドカーブコントロール)問題とこのETFの問題が語られたようですが、日本株の株価上昇は何らかの対応のチャンスと言えます。
含み益は既に15兆円から20兆円程度になっているものと推察されます。
一度に売却はできないとしても来年から始まる拡大NISAの受け皿としても日銀保有のETFの処分は注目されます。
一方で仮に2%の物価上昇達成で金融政策を転換させた場合においても一定の金利の上昇が日銀保有の国債価格の下落となり含み損問題の発生が指摘されますのでこれを緩和させる意味でも、また防衛費拡大、子育て支援拡大に伴う積極財政継続の予算の出所としても注目される財源となる可能性を秘めています。
日本では銀行に預けた個人のお金がなかなか株式市場には向かわずに来ました。その結果企業の発行した株式の多くは国際分散投資を実践する欧米の外国人投資家に保有されている現状があります。その結果、いわゆるグローバルな活動をしてきた日本企業の株式は日本人ではなく外国人投資家によって保有されています。
代表的なセクターは精密(医療機器)、電機、医薬品、その他製造(主に任天堂)、機械、保険、化学などです。全業種では30%余りが外国人投資家に保有されているようです。
外国人投資家の保有率が高いのはHOYA63%、ソニーG57%、ファナック53%、東芝49%、オリンパス51%、キーエンス47%、日立46%、信越化学45%、東京エレク40%、ダイキン40%などで外国人投資家は日本を代表する有力なグローバル企業の株主になって長期的なリターンを得ようとしています。ですからこうした銘柄は日本株のようで実は日本人投資家主体の銘柄ではないとも言えます。
これまで商社株はバフェットさんが注目するまではコングロマリットというビジネスモデルであったため理解されずに外国人持株比率は比較的低い状況でしたが、バフェットさん効果もあり、このところの株価は外国人投資家持株比率向上とともに上昇の一途を辿っています。
またトヨタを代表とするバリュー銘柄群は自動車、金融、素材株に多いのですがこれまで直近の評価を高めています。既に日本株は国際分散投資のポートフォリオに組み入れられ、ネガティブな市場となった中国・香港から逃避する運用資金の受け皿になってきたようです。
このところの株高の背景はこうした点にもある訳ですから、この潮流に乗る日本を代表する主力銘柄には概ね株価上昇のトレンドが続くと考えられます。
このように、せっかく右肩上がりの相場展開が続いているのに日銀ETFの売却など嫌な聞きたくない話だと思われるかも知れませんが、短期的な相場の行き過ぎは善良な個人投資家にとってはなかなかついていくのが大変です。
この相場は個人投資家主導ではなく外国人や機関投資家主導で続いているとも言えますので、このスケールの大きさにはスケールの大きな売り主体が出てこないと短期急騰型の相場を安定させることはできません。
もはや「上がるから買う、買うから上がる。」のインデックス主導の展開になってきた株式相場に程よい売り手が現れ多少でも偏った展開が正常化することになれば幸いです。
(炎)
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