岸田総理が、資産所得倍増計画を打ち上げ、昨年から金融庁でも新しいNISA制度の改革など、様々な議論が展開されていました。
その中でも「顧客本位タスクフォース」の中で、金融機関がどのようにしたら顧客本位の姿勢で利用者に対峙できるかという事が議論されていました。
私も、一般の人が金融機関(銀行、証券会社、保険会社)でひどい目に遭っている姿を多く目にしていますので、この「顧客本位」の姿勢が整わない限りいくら制度を整えても、政策効果を上げにくいと思っています。
今回は、この「顧客本位タスクフォース」の委員の一人から声をかけていただいて今週「顧客本位」を徹底している金融機関があるということで、京都信金さんに訪問して、お話を聞いてきました。
京都信金のディスクロージャー資料
https://www.kyoto-shinkin.co.jp/pdf/match-situation2021.pdf
結論から言うと、京都信金は小屋が思った以上に「顧客本位」の姿勢が徹底されていました。
榊田理事長のお話では、顧客本位がもう社内のカルチャーになっているという話でもありました。
しかし、そこまで来るには約25年ほどの時間をかけて、しっかりとみんなで教育をしてきた成果でもあると感じました。
京都信金は、過去京都のフィクサーとも呼ばれた、山段芳春に経営を握られた黒い歴史があり、そこから脱却した後から、25年間必死に顧客本位の姿勢で社内を立て直してきたという経緯があるようでした。
丸一日、京都信金さんの本店、支店、その他施設や職員とのインタビューなどを通じて理解できたことは下記の2つです。
1)「顧客本位」の姿勢は簡単ではない
京都信金さんの「顧客本位」の姿勢や職員を見て、ここまで来るのは簡単ではないなというのが第一印象です
先程25年ほど徹底してきてカルチャーになっていると書きましたが、カルチャーに昇華するまでの努力と時間は大抵のものではないはずです。
7年前には、職員のノルマも完全廃止し、一職員レベルでは数字のことを考えることもなく、顧客に対する対応に集中できる環境が整っていました。
現在、金融庁では各金融機関に当然「顧客本位」の姿勢を持ってほしいと思っていますが、京都信金のプロセスを聞くほどそんなに簡単ではないし、ましてや金融庁が号令をかけたぐらいでは、変化することは難しいというのが正直な印象です。
2)「顧客本位」には、それはそれで悩みがある
1)で職員が本当に顧客の事を考えられるようになるためにノルマを廃止したと書きましたが、職員レベルでは、売上や利益などの数字に追われることなく目の前のお客様のために誠心誠意対応できるというメリットがありますが、一方で、理事長や理事さんたちとお話をしていると、会社経営では当然売上も利益も大切な要素ではあるわけで、いくら「顧客本位」を貫けば、結果が付いてくるとは言うものの、数字の面ではトップマネジメント層はいつもジレンマを抱える状況にありそうでした。
信用金庫は、株主ではなく、利用者が会員となって、経営にかかわる組織です。
なので、株式会社とはちがい、利用者である会員=顧客本位を貫けば、そこまで収益性、成長性に関しては要求されない組織形態でもあると言えます。
ここが、地銀や都銀、証券会社、保険会社などで株式会社経営をしているところでは、なかなか現実的には理解と実行が難しいところでもあると思います。
個人的には、今回京都信金を見学させていただいて、弊社の「顧客本位」の姿勢にも大変学びになることが多くありました。
また、最後1)2)で書いたように、既存の金融機関が本当に「顧客本位」の姿勢を持つにはまだまだ課題も多く実際難しいのではないかという印象も持ちました。
京都信金のような「顧客本位」の姿勢を保つ金融機関が、きちんと評価されて、収益性も上がってくると社会的にも注目され、京都信金に続く金融機関も出てくるのではないかと期待をしています。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
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