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相川伸夫の信和・丸順3Q取材報告

2022/03/10 00:16 投稿

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 年明けからキツイ相場が続いています。

 こんな時に株をやる必要があるのか?というレベルで厳しい様相になってきています。つい二年前のまさに今頃が地獄の窯が開いて奈落行きの切符さながらでした。

 今回のウクライナとロシアをきっかけにしたこの動きは戦争という側面だけではなく、資源価格の高騰に加え小麦価格の高騰を引き起こしています。さらには半導体製造に関するガスが世界的にウクライナとロシアに集中していることから今でもひっ迫している半導体不足がさらに深刻になるリスクも出てきています。

・希少資源に調達危機 ロシア・ウクライナ産7割依存も
半導体ガス一部停止2022年3月4日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58768540U2A300C2MM8000/


 この状況でも行けるだろうと思えるのは値上げが出来ていて利益が確保できており、かつその利益を十分に株主還元しているにも関わらず配当利回りも高い企業は比較的買いやすいと感じています。

 この条件に合致しているピックアップ銘柄の信和に3Q明けに取材をしました。
 今日はその報告をしたいと思います。
 丸順にも取材しましたので同社にも簡単に触れたいと思います。


◆フォローアップ 信和(3447)


 最近の相場の中ではかなり強い印象です。
 配当利回り4.9%でしかも3月一撃配当なので今は値持ちが良い局面というのもありますし、そもそも日経平均が大底だった16000円台を叩いた頃の信和の上場来安値が2020年4月6日の632円です。

 付け加えると、日経平均の安値を付けたのは2020年3月19日の16358円であり、信和が安値を付けた日は日経平均が大きく反発をして18576円の終値の日に安値を付けている格好です。
 信和の上場来安値4/6を基準に日経平均の上げ幅と比較しても15%ほどアンダーパフォームしている状況であり、株価評価としては反発していない状況です。

 しかし、業績が悪いか?と言えばそんなことはありません。
 コロナ影響が一切無い2019年3月の営業利益は1,963百万円でしたが今期予想の2022年3月期は2,050百万円なので好調と言えます。


【それでもなぜ信和は買われないのか??】

 私の個人的な解としては、そもそも信和が属する金属製品セクターは不人気であり仮設足場の製造という業態も不人気でしょう。
 また、高配当利回り目的の方はすでに買っているでしょうから新規に上値を買う人が乏しいということも主要因になると思います。

 あとは創業家がLBOしたときにできたのれんが気になる投資家が多いというのも買われない理由になるでしょう。
 しかし、多くの投資家が懸念するのれん減損の懸念に関しては以前にもお話しましたが特に問題にならないと考えています。
 これはコロナショックでの急速な経済停止でも、その後に訪れた猛烈な鉄鋼価格上昇でも一切減損は起こらず、赤字にすらなりませんでした。

・株探―信和ページURLリンク
https://kabutan.jp/stock/finance?code=3447

 赤字にすらならなかった、というかコロナショックも鉄鋼価格爆上げも何も影響していないかのような好業績です。競合他社はちなみに業績悪化しています。
 信和は3Q累計での業績進捗率に関してはすでに93.2%の進捗になっており、これは前期、前々期の83%~82%に比べても10%高い状況なので好調さが伝わるかと思います。

・ピックアップ時の記事
https://note.com/okuchika/n/n7cd0a1cfd734

 鉄鋼価格と亜鉛価格に関してもすでに値上げで価格転嫁済みのPLが3Qでも出ているのでそういったリスクは全て乗り越えたと私は評価しています。
 なので、今後の業績での再評価待ちという状況かと思います。

 3Q明けに取材した内容をこちらに掲載します。


【Q&A】

Q、通期予想進捗率93%でも上方修正してないけど4Q悪いの?

⇒保守的に見ているという感じ。1月がコロナのまん延防止で動きが鈍ったという感じだけどそのあと戻ってきてる。需要が無くなった訳とかではない。

Q、今期のくさび足場は売上高で見ると好調に見える(値上げ影響)けど販売数量ベースではどうか?

⇒販売数量で話した場合ではおおむね平年並みの感じ。値上げで好調に見えてるかもしれないがまだコロナ前までの水準には戻っていない

Q、値上げをしてから受注に影響は無いか?

⇒消耗品なので一定の更新需要があり、鋼材価格高止まりは顧客でも十分に認識している。丁寧に説明をする中で値上げを承知してもらえたので影響は感じていない。

Q、中計の仮設資材の2024年の数字がかなり低いと思う。売価を約20%値上げしたのであれば過去の販売数量実績から簡単にクリアできてしまうと思う。この数字の理由を教えてほしい

⇒仮設の中にはくさびや次世代足場がある。これらの製品は伸びているし今後も伸びる想定をしている。落ちる部分として枠組み足場の修復資材などが含まれており、ここは枠組み足場そのものを次世代足場に切り替わっているから無くなっていくところになる。
⇒仮設部分の数量は増加する見込みであり、基本的に保守的に計画して作成した。

追加Q、レンタル資産を中期で30億円積み増すという中計になっている。減価償却費負担が大きく増加して一時的に減益になることも想定しているのか?

⇒未来のことなので約束はできないが、この中計自体は右肩上がりに増収増益でしか数字を作っていない

追加Q、御社のレンタルは物貸しだけのレンタルだと認識しているが、償却負けで赤字になる可能性はあるのか?

⇒↑の質問への回答通り、償却込みで利益は出せると考えている。

追加Q、御社は販売がメインだったと思うが、どうしてレンタルに力に入れるようになったのか?

⇒今期でもレンタルでの売上はある。ただ、お客様のニーズが多様化してきたからそこに合わせようという話。

追加Q、御社が販売しているレンタル会社に対してはカニバリが起こるのでは?

⇒レンタル会社にもレンタルできるようにする。レンタル会社も繁忙期だけ弾が足らなくなることがあり、「買うまでもない上振れ部分だけ」って時用に弊社からレンタルできるようにするイメージが実態に近いと思う

Q、そもそもの御社の顧客属性はどんな感じ?

⇒ザックリだけど、リース会社5:商社3:工務店2
⇒金額ベースでは↑になってて、件数ベースだと工務店(親方)が圧倒的に多い。

追加Q、レンタルを欲しがってる方は誰?

⇒これはリース会社と工務店になる。商社はそこまでニーズが無いかもしれない。工務店はニーズが高い。

追加Q、レンタルを始めると仮設足場が売れなくなるのでは?

⇒それは無い。レンタルが良いってお客さんとレンタルが良い人がいる。
⇒これはリースがいいか、購入が良いかの話だから自動車を保有する話と同じ。償却の話も絡んでくるのでお客様が考えることで、弊社はその両方に合わせられるように経営する。

Q、物流機器の伸びは何が伸びるの?

⇒全部がまんべんなく伸びる感じになっている

Q、中計の投資計画100億円の中身は?

⇒50億円はMA、機械設備に20億円、レンタル資産30億円
⇒MAはまだ明確なことは何も言えない。
⇒今後も増収増益増配で実直な経営をして株主にも還元していく。自社株買いに関しても市場を注視しながら臨機応変に検討していきたいと考えている。


というのが取材でのポイントになります。

 今後とも応援していきたい実直な会社だという評価です。



◆フォローアップ 丸順(3422)



 こちらも3Q明けで取材させて頂きました。
 取材3:提言7という取材に成りました。

 ザックリとした報告をまとめるとこのようになります。

・受注していた試作型が試作型レスに変更になった⇒デジタル解析だけして本型整備という話に変わった※設変が入れば費用は追加でもらえる。

・原材料高騰での影響は自家調達部分が主なところ。拠点によるものの数%~20%程度の部材で影響があり、順次価格転嫁交渉をしていく。

・タイ拠点のダイセル向けは10月に稼働した。今期末営業黒字目指してるで変更なし。

・広州・武漢は増産に備えてきたのでまだまだ売上を伸ばせる余地がある。

・今期業績では日本が一番負けてる。中国は多少の落ち込み程度。


…という感じが取材報告です。

 この後の下記は私が提言した部分です。
 基本的に資本政策に関しての方針や中計含めたIRに関する部分に関して提言をしました。

・自己資本比率40%達成しても『2円増配で安定配当』等はあり得ない。
 株主は自己資本比率の向上を求めているのではなく、株主価値の最大化を求めている。

・投資効率から考えても今の株価での自社株買いは絶好の好機。

・本決算開示にて来期予想を「無闇に保守的に」出すと株価は失望でいつも下がる。上方修正前提になるほど保守的に出すならレンジで開示すべき。

・丸順のEPSはバーチャルになっている。財務健全化してPLも良化しているのにこの5年投資家にリターンが全然返って来ていない。投資家にとっては業績向上していて株価も上がらないわ配当も少ないわというのは嘆かわしい事態。

・中計は出した後に手を加えてはいけない物ではない。形骸化した中計を出し続けることは大きくマイナスなIR姿勢であり、修正する必要があるのであれば本決算のタイミングでも遅くないのできちんと修正すべき。

・現金などの資金使途が明確にあり、それを理由に株主還元ではなく事業成長に使うつもりなのであれば株主に説明することが上場企業の義務。従業員の給与を上げるなら速やかに上げて純利益から配当するべき。


…以上に成ります。

 丸順は経営が大変厳しかった2018年に990円で1,188百万円の公募増資をしました。
 この時の投資家からの資金を使って3000tプレスやその建屋等を購入・建設して、その後見事に経営再建は果たされました。

 当時自己資本比率1ケタ%から40%間近までの大復活を果たしたのです。
 銀行借り入れも厳しい状況だったからこその非常に価値あるエクイティファイナンスだったことと思います。

 しかし、反面株価はその時がピークであり、名証から東証二部に昇格した2021年3月に上昇した高値でも1208円であり、ここを抜くこともできず、今の株価は655円なので公募増資を大きく下回っています。
 これだけ財務が健全化し、CATLや旧パナからのバッテリーモジュールの量産受注やトヨタやフォルクスワーゲン等からの新規受注やタイではダイセルからの受注での営業黒字化も見えてきているにも関わらずこの株価です。
 どう考えても同社の業績改善を投資家は評価していないと言えます。

 『業績を評価しない』というのは、『投資家に還元されない利益』と市場が評価しているとも言えるでしょう。

 IR姿勢にも問題があると私は感じてますので、先ほどの提言をしました。

 また、そもそも経営陣が自社の企業価値を正しく認識できているのか?というところにも正直大きな疑問も感じます。IR担当に「御社の企業価値はもっと高くあってしかるべきですよ!!」と伝えても釈然としません。

 現在の時価総額77億円だと前期フリーCF62億円なので1.24年で回収できます。
 買収価格算定に使われるEV/EBITDA倍率を減益になっている今期予想で計算しても2倍と激安です。

 ちなみに一般的な相場では8~10倍程度と言われています。事業がシクリカルで赤字⇒黒字とボラがある場合などはここから割り引くのですが、丸順は決算を見てもらうとわかるように経営再建での改革以降非常に好調な状態が続いています。
 マクロ経済での影響は現在も懸念がある状況なのはもちろん間違いないとはいえ、それでも安すぎると言わざるを得ません。これまでの新規受注状況や今後の経営計画の発表から考えるとここまで売り込まれるほどの悪材料が控えているとは思えず、投資家にとって現在の経営陣からリターンを得られると期待できないと考えられているであろう大変嘆かわしい事態が今の株価なのではないか?と私は思います。

 丸順が公募増資をした2018年の高値1350円を付けた時のPBRは2.59倍でした。今の株価655円の実績PBRは0.46倍に成ります。
 赤字で経営再建が急務であった時と現在では状況が変わってきており、あまりに安い株価でフラフラしていると東プレが買い増して連結化もありえると思います。
 株主構造上そのシナリオが薄いことは良く分かっていますが、それでもさすがにそうしたことが起こっても不思議ではない株価になって来ています。

・株探―丸順ページURLリンク
https://kabutan.jp/stock/finance?code=3422

 斎藤社長を始め、現経営陣は株式市場で「財務改善化して名証から東証二部に昇格したのに株価が前より下がっている」ことの意味を真摯に受け止めて頂きたく思います。

 現在は自己資本比率40%達成という目的に向けた中期経営計画を推進しています。
 よって、自己資本比率40%を超えたら配当性向30%での株主還元を実施するのも財務状況として全く問題はなく、資本政策から見ても適正な数字になっていると思います。
 安定配当を第一にするのであれば2~2.5%を目途にDOE(株主資本配当率)を導入するのも好ましいと思います。

 株主は丸順が経営再建するまですでに5年以上待ちました。そして会社は業績をしっかり改善してきました。
 自己資本比率40%という大願を叶えてからも緩やかに、ましてや2円ずつ増配なんてことが『もし』あれば、その時は本当に「株主軽視だ!」と大きく声を上げていかねばなりません。

 兎にも角にもまずはIR姿勢を改善して頂き、どういう資本政策を今後取っていくのか?
 これを示して頂き、目まぐるしく変化する市場においての経営方針を説明資料で開示したり、説明会のさらなる充実を切に願いたい。

 堅いのはハイテンだけで良く、是非とも時流と自社の置かれている状況に合わせて成形加工して頂きたいと思います。


 厳しいことばかり書きましたが、株主にとって投資している会社は『当社』であり、社長に提言できるのは株主だけです。
 今後も引き続き応援していきたいと思います。


それではまた!


『全力全開全力前進!!!』


(相川伸夫)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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