昨年は125もの銘柄がめでたく新規上場を果たしました。前年より30銘柄以上も増加しましたので一見すると活気のあるIPO市場との印象がもたれそうですが、内情はそうでもなく既存の市場でリターンを上げにくくなったことから、そのはけ口として放出株(公募+売出株)の少ない銘柄のIPOに物色の矛先が向けられ異常な初値が公開価格の10倍以上ともなるような銘柄も出てきた一方でその後の急落を演じるという乱高下が見られるような状況です。
未来を期待しての成長株の登龍門としてのIPO市場だが、その咎めが生じており、このところは公開価格を下回っての新規上場が日常茶飯事となってきたようです。
企業にとっては念願のIPOが実現したのも束の間。このところの市場の需給悪、宇露戦争、原油高、米金利上昇などが株価形成の重しとなり株価の低迷が見られる事例が相次いでいます。ここに至っては投資家の様子見気分が強まっており、有事の株安の様相を示しています。
容赦のない売りがどこまで続くのかを固唾を呑んで見守る展開が続いています。
IPOに関わる市場関係者にとっては悩ましい展開で、こうした状況が継続すれば上場を目指す企業の意欲を損なう可能性もある。
そもそもIPOの目的は上場することによる成長資金の取り込み、つまり市場参加者、投資家からの資金調達にある。更には知名度の向上による事業規模拡大や従業員の採用などにあるが、上場した途端に株価が大きく下落したのではイメージが悪い。特に公開価格から大きく乖離しての上場には疑問が持たれてしまう。上場時にオーナーの持ち株が一定数売られることもあるが、公募以外で売り出される株が多い場合にも需給悪で株価が上場後に下落していくパターンも多い。
現在のIPOの仕組みには問題も多いとの指摘もなされています。
ブックビルディング(略称BB)という機関投資家(どの投資家などは不明)へのヒヤリング期間が設けられIPO時の発行価格や売出価格が決められる訳だが、その内容は明確ではない。
ブラックボックス状態の中で下限価格と上限価格の上限価格で決められることが多い。その下限価格と上限価格の決定についても引受幹事証券の思惑が絡んでいそうだが、上場前に公募で得られる投資家を含め大半の投資家はIPO時の需給の良さを利用しての短期的なキャピタルゲイン獲得に向けて機械的に参加してきたのが現実なのかも知れません。
今年になってIPOしてきた銘柄は2月の7銘柄に続き、先週は2銘柄。
今月は更に9銘柄のIPOが予定されていますが、先週までの状況は初値が堅調でもその後大きく値下がりする銘柄が続出しており、今後のIPO銘柄の株価にも暗雲が漂っているとの印象が持たれます。
2020年のコロナショックの際も同様の展開が見られましたが、今回は一段とIPO銘柄に対しての関心が薄れてしまっています。客観情勢が悪すぎるのでIPO後の銘柄への積極的な投資を見送る投資家が増えているものと推察されます。
このような初値が公開価格を下回る状況は全体相場が不透明な状況の下で起きがちです。IPO銘柄に注目する投資家もある程度は心得て臨んでいる筈なので、市場が不調だと思えば少し様子を見ようとなる訳です。
こうした状況下ではありますが、どのような局面においても自由かつ積極的に市場に参加する投資家もお見えになる筈です。これは売りも買いもですが、この局面では売りたい投資家が多く、大半の銘柄がダウントレンドを余儀なくされている現状があります。
個別銘柄の株価の下げ止まりには全体相場の底打ち、売り材料の消滅かそれを上回るポジティブな材料の出現が必要で現在は誰がどう見ても売り方優位の展開となっておりますが、全体相場の下げ止まりを待つのではなく個別銘柄の企業価値を見据えた株価評価を理論的に考えていくことも時には必要となります。
それも短期、中長期に分けた株価変動のシナリオ構築が求められます。
このように需給面に影響を受けやすいリスクの大きなIPO市場ですが、こうした局面でこそ勇気を奮って未来の大化け銘柄を見出す努力を投資家にとっては必要なのかも知れません。
(炎)
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