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自己株買い

2021/07/14 15:10 投稿

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 企業が発行した株式を市場の内外で買うことを自己株買いという。
 株式市場では日常茶飯事にこうした自己株買いは行われている。

 この施策は取締役会での決議で実行されるので比較的容易に打ち出せる施策だと言える。

 投資家は様々な理由で個別銘柄に投資されているかと思うが、市場の需給が悪化し投資した時から大きく値下がりをした余裕ある企業に対して期待したいのは継続した利益成長や成長施策の打ち出しだけではない。企業価値以下で取引される状況が続くのであれば経営施策として自己株買いは有効だ。


 直近ではトヨタ(7203)が上限41百万株、上限2500億円、の自己株買いを9月末まで行うと発表。既に6月中は220万株、21.5億円の自己株買いを行った。
 平均単価は9773円。市場内で買うことになるためこのところの株価は全体相場がどうであれ結果としては底堅い。
 しかも9月末には5分割というイベントが待っている。


 私は少なくとも今年の秋までは全国民が神輿を担ぐトヨタ祭りが続くと見ている。そのお祭りを支える出し物の一つが自己株買いということになる。

 時価総額30兆円超のトヨタの前には孫社長率いるソフトバンクGが積極的な自己株買いを実行し一定水準まで株価を押し上げた。

 日本を代表する時価総額上位2社が行っている自己株買いという施策は何もこうした大型企業だけに許されている訳でない。他社も見習って実行すべきだ。

 特に理不尽な株価下落が見られるようなキャッシュリッチ銘柄など行って当然だと思う。
 いたずらに不安を煽るような記事で溢れ返っているヤフー掲示板などで投資家は該当企業に対してもっと積極的に呼びかけてはどうだろう。


 自己株を巡っては東証市場改革でも注目されている。

 なぜかというと発行済み株式数×株価で表される時価総額が250億円以上、ここから役員保有株や10%以上の大株主保有株、更には自己株を除く流通株時価総額が100億円以上というのがプライム市場に上がれる条件だからだ。

 つまり自己株は浮動株から除外されるのでむしろ実行しないでおこうとなる。こうしたことが足下の株式相場で起きていてプライムにいけるかいけないが分からないボーダーライン銘柄を一旦売っておこうとするから株価の下落につながっているのではないかと疑われているのだ。

 東証2部銘柄は指数の動きから比較的堅調な推移だと見られているが、これはプライムかスタンダードかの動きが既にある程度、結着しているためかも知れません。


 東証1部銘柄は1)プライム2)スタンダードのいずれか(時価総額によってはいずれの市場からも外れる可能性も)、東証2部銘柄、JASDAQはスタンダードに基本的には移行。

 マザーズ銘柄はグロース市場が基本だが、中にはプライムに移行する銘柄も想定。

 自己株取得発表のリリースは基本的には好感されるが市場外で単発で実施する自己株買いにはネガティブな評価がなされる。
 一方で市場内で一定期間内で比較的まとまった自己株買いが発表されるとポジティブな評価となる。

 特に流動性のない銘柄をお持ちの投資家にとって自己株買いの発表は下支え要因となり、買い安心感につながる。


 テノックス(1905)の事例を見てみよう。

 同社は無借金経営の基礎工事会社。しかも保有するキャッシュの金額が実質時価総額を40%以上も上回る状態だった。株主からは業績への不満だけではなくPBR0.5倍という株価水準への不満も見られ、株主総会では2年続きでそうし不満の声が聞かれたそうだ。

 自己株買いの要求圧力も高まったせいか、同社は本年2月24日に上限15万株、上限1億30百万円(平均単価866円)株の自己株買いを3月1日から6月末まで実施する発表した。

 この発表までは株価は850円以下で推移していたのが、この発表後に900円前後まで上昇。この結果として14.6万株、1億2999万円(平均単価890円)を取得した。このどさくさまみれの中で大株主として浮上してきた光通信が6%以上保有する大株主となったのは蛇足ながら注目に値する。

 自己株買いで平均890円で浮動株(11%、85万株)が吸い取られたとは言えいまだに上値には1000株単位で売りがまとまって出ており相変わらず上値は重い。

 長期保有の株主としてはなおも不満が募る株価展開と言えそうだが、時価890円は時価総額60億円。保有する実質現預金が81億円なのでまだ大きく時価総額が保有する現預金を下回ったままとなっている。
 3カ年計画で経常利益15億円を目指す実質無借金経営の企業が再度の自己株買いが期待される。

 次回は1.3億円と小出しにしないで5億円程度を用いて大型の自己株買い(上限50万株)をやってみたらどうだろう。
 そうなれば41万株ほど保有する大株主の光通信も喜んで売るのかも知れません。


 取得した自己株の使いみちとして注目されるのがM&Aに活用するというもの。M&Aで事業拡大しようという企業にとっては株高賛成。自己株を用いた株式交換によるM&Aが次の成長戦略に取り込めることになる。

 例えば日創プロニティ(3440)の場合はソーラー発電の設置架台の製造販売で2013年のFIT実施以降、累計で80億円ほどの利益を積み上げてきた。この結果今8月期3Q末現在で65億円あまりの現預金(有利子負債は12億円弱)を保有する企業となった。
 このうちの50億円を上限とするM&Aを推進しようとしているがなかなか具体的になってこない。コロナ禍でかなり選定が難航しているものと推察される。

 持てるキャッシュを断熱パネル生産など今後の市場拡大が期待される分野に投資しようとしている一方でM&Aにも注力する意向なのだが、ここでは株価の低迷を打破すべく自己株買いを実行してはどうだろう。
 現状において保有する自己株は93万株だがこれに新たに上限30万株、上限3億円(平均単価1000円)の自己株取得を行うことで次のM&Aに備えるというアイデアだが、いかがだろうか。
 これを7月中旬から10月末まで時間をかけて実行することで株価のトレンドを成長指向型の企業イメージに変えていくことができればオーナー経営である同社の首脳陣にとっても大きなメリットとなる筈。
 現状の時価総額は48億円余り。自己株買いの結果、株価900円となれば自己株を除いて55億円。実質保有現預金並みの水準となる。

 同社株はこのところの調整場面で底割れを演じ安値728円まで売られたが、こういう局面での自己株買いは長期スタンスで保有する投資家にとって大いに歓迎されるだろう。


 この提案を聞いてもらえるかどうかは分からないがかつてもこうした提案を聞いて実行してくれた企業もあるから投資家の皆さんも掲示板や企業へのレターなどで要求されてはいかがでしょうか。


 但し、問題は今後の業績です。
 キャッシュポジションが潤沢でも先行きの業績に不安があるとか実際に投資案件が迫っているなどの事情があれば保守的にならざるを得ないことになりますので注意が必要です。


(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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