投資家が買える株数は発行済み株数が上限となりますが、実際にはその中の浮動株を対象にしていることになります。
浮動株は会社四季報にも出ていますが、1単元(通常は100株)以上50単元未満の株主が所有している株式のことで、その合計が発行済み株式総数に占める比率が四季報には掲載されています。
ついでのことながら少数特定者持株は大株主10位までと役員持株(役員持株会を含む)・自己株式の単純合計で、四季報にはその比率が掲載されています。
浮動株比率が高くても中には流動性が低い銘柄もある一方で、浮動株比率が低くても流動性が高く、短期投資家の関心も高いのか日々活発な売り買いがなされている銘柄もあります。
一方で、大株主には日証金や証券会社名で保有されているケースも多く、信用取引を用いた短期売買の対象になっている場合もあって、その比率が高いから株主が安定しているとは一概には言い切れません。
不特定多数の一般個人投資家の所有株は浮動株になります。
できるだけ多くの投資家に関心を持ってもらって最低1単元の株式を保有してもらえると株主数は増加します。しかも長期保有につながると浮動株が吸収されて市場に売り出される株式が減って需給がタイトになることが想定されます。
IPOしてIRに努め、多くの個人投資家や機関投資家に長期保有されるようになったら浮動株は吸収され、株高のトレンドを形成することができるようになります。
また、海外の投資家にもIRを通じて自社の事業内容や成長性を理解してもらい、株式を長期保有してもらえればますます需給がタイトになってきます。
浮動株の多くを抱える短期投資家の売りを背景にした株価下落に対して、浮動株を吸い上げる中長期投資家の存在。日常の株式取引で水面下で繰り広げられる浮動株をめぐる戦いを楽しむことにしたい。
【事例研究1】
バーチャレクス・HD(6193・M)の浮動株77万株をめぐる戦い
同社はコールセンター運営受託のほか顧客管理などのコンサルなどを手掛ける企業で、ブロックチェーン技術、RPA、ボット、AIなどをテーマにしたビジネス活動を続けています。
2016年6月にマザーズ市場にIPOし、以来2年近くが経過して参りました。上場直後の2016年7月に公開価格1090円(公募12万株発行)に対し1986円という高値をつけましたが、その後は調整を続け翌年の4月には699円という安値をつけました。
その安値から本年1月の高値1624円まで2.3倍になったことは記憶に新しいのですが、その後またわずか1か月余りで783円まで売られたのです。時価は先週末現在で886円。浮動株はわずか77万株に過ぎず、その浮動株をめぐってのめまぐるしい熱き戦いが続いているように感じられます。
その浮動株は時間とともに業績の進捗とともに株価が低迷すればするほどいつの間にか吸い上げられているのかも知れません。
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【事例研究2】
協立エアテック(5997・JQ)の浮動株100万株は吸い取られた?
同社は中堅の空調機器専業メーカー。ダンパーのシェアは約3割でトップ。
ビル空調が主力でしたが、住宅用途を拡大中。桧家HDとの共同開発のZ空調が今後本格化するとの期待が高いが、株価は比較的穏健なままで推移。
発行済み株式数は600万株、自己株はその20.6%の123.9万株。
会社四季報による浮動株比率は16.7%で浮動株は約100万株。
特定株比率は67.6%で特定株は406万株で残りは194万株。
2017年6月現在の単元株主数は1889名で、一人平均1000株を保有している計算になります。
外国人投資家と投資信託は合計2%を保有。
1993年6月にIPO(公募46万株、公開価格3300円)してその翌年には1対1.3の分割。時価は768円で公開時投資して保有している株主はまだ評価損が出ている状況。
自己株を除いた時価総額は36.6億円で今期予想経常利益7.3億円の5倍にしか過ぎません。浮動株時価総額は7.7億円で上位10位の株主になれる株主数12万株では9200万円となります。
なぜか今期予想PERは7.3倍と低く、実績PBR0.67倍、配当利回り2.6%(配当性向19%)の水準も比較的低評価だと感じられます。
浮動株100万株がいつの間にか吸い取られてしまったようにも見受けられます。
【事例研究3】
パウダーテック(5695・JQ)は浮動株42万株で超品薄?
先週の相川伸夫氏の報告で注目を浴びつつあるパウダーテックですが、残念ながら浮動株が少なく、評価が高まる中でますます超品薄な状態となり、出来高も売買代金も限られているようです。
会社四季報によると同社の浮動株比率は14.1%で浮動株は42万株となります。先週末の株価は5330円ですので売買の対象額は22億40百万円となります。
発行済み株式数は297万株、時価総額は158億円で今期予想経常利益18億円に対してはなおも割安な評価となっています。特定株比率は83.9%で特定株は249万株。
相川伸夫氏が言うまでもなく会社の内容が良いことは彼らが最も分かっていますのでなかなか大株主が売ることはなく、売買は浮動株42万株を対象にしたものとなっていることになります。
特に上位3株主(南悠商社、三井金属、常陽銀行、合計持ち株比率75.7%)は上場来まったく動きがなく、安定した株主構成になっています。
とは言え、過去の株主構成で変わったのは外国人投資家や投信が若干増加したことに加え、光通信が10位以内の株主に名を連ねたことです。
また自社従業員持ち株会も2001年3月末の19万株から2017年9月末に45万株(株式併合前、第7位から第4位に)を保有するに至っている点が注目されます。
これまでは限られた浮動株をめぐってクールな玉集めが続きましたが、どこかで大胆な玉の奪い合いとなるのか、注目したいと思います。
(炎)
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