経済政策「アベノミクス」は、もはや第二次安倍内閣の代名詞だと言える。長期にわたって低迷していた株価は上昇し、為替も円安に向かっている。ここからは、ただ株価や為替の数字が良くなるだけではなく、給料や雇用など、生活する人々の目に見える形での景気回復の成果が必要になる。政権発足からちょうど2カ月の夜、甘利明・経済再生担当大臣のもとで政策を実務に落としこむ役割を担う西村康稔・内閣府副大臣をお招きして、詳しく話を聞いた。
インタビュアーは、コネクターの角谷浩一氏。はたして、アベノミクスはこれから日本の景気をどう牽引していくのだろうか。これまでの自民党政治とどう違うのだろうか。
角谷浩一氏(以下、角谷):みなさんこんばんは。ニコニコ動画コネクターの角谷浩一です。日米首脳会談が先週末、ワシントンで行われました。オバマ大統領との会談に臨んだ安倍晋三総理は、アベノミクス、日本が今やろうとしている経済政策について事細かに説明したという報道も伝えられています。オバマ大統領からも、日本は経済再生に向けて順調に進んでいるというようなやりとりもあったと言われています。
2月1日には、甘利明・経済再生担当大臣にニコニコ動画に出てもらって、一体、アベノミクスとは何なのか。日本経済再生会議とは一体どんなものなのか。大臣はどんな仕事をするのかを伺いました。ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)では久しぶりに日本のアベノミクスが話題で、日本が中心となる会議は久しぶりだったという感想も甘利大臣から伺いました。そして今日は、西村康稔・内閣府副大臣……ということでいいんですかね。
西村康稔・内閣府副大臣(以下、西村):はい。
角谷:西村副大臣にお越しいただきました。こんばんは。どうぞよろしくお願いいたします。
西村:よろしくお願いします。
角谷:さて、第2弾は西村副大臣にいろいろ伺おうと思っています。今日はイタリアの総選挙があった。それから、日本銀行の人事の内示があったこともあって、株価、それから円がかなり動きましたね。
西村:はい。
角谷:夕刊紙などを見ると、「日銀人事ショックだ」という書き方があれば、「イタリアの総選挙でユーロ不安で円高が加速しているんだ」という書き方もあります。日経平均株価が1万1398円。そして円が91円80から81銭ということで、ちょっと円高に振れた。こういうのを見ると、西村さんは敏感に反応するんだと思います。政府の人間ですから、感想は言う必要はありませんけれども、イタリアの総選挙や、日銀の人事についてのマーケットの反応をどんなふうにご覧になりましたかね?
西村:安倍政権ができて、日銀の金融緩和、2%の物価目標というのも、われわれの念願だったことです。ようやく日銀も、物価目標を入れて金融緩和を責任持ってやるということを断言しました。そういうタイミングと、プラス、アメリカの経済も良くなってきた。ヨーロッパの債務問題も安定してきたところで、良い条件が揃って、これだけ急激に円安になって、株価も上がってきたということなんです。ですから、その条件のどこかが崩れるとやはり脆い。期待感が崩れていきますから。そのことが今回よくわかったと思うんです。
イタリアでベルルスコーニ氏の率いるグループがどちらかというと、ばら撒きに近い、放漫財政をやりかねないような政策を打ち出しています。そのグループが、それなりに善戦したということで、ユーロがグッと安くなって、今度は円がグッと上がって、引きずられてドルとの関係でも円が高くなるということですから。やはり相当なことをやらないとインフレ期待とか、日本の経済が良くなる感じは出てこない。私はやはり、もう一回、金融緩和、日銀には「一本目の矢」を頑張ってもらうと。われわれは「二本目の矢」、財政出動はなかなか出せませんけども、「三本目の矢」である成長戦略は相当思い切ったことをやらなきゃいけないなということを今日改めて感じました。
角谷:麻生太郎副総理が言うように、「こういうことをやりますよ」というメニューは見せたけども、まだ実際は始まってないんだと。今そのメニューだけでマーケットも動くし、円も動くと。大変結構なことなんだけれども、これをやっていかなきゃいけない。
それから、「骨太の方針」を6月に出す。その後に参議院選挙があるわけです。民主党政権の時には、消費税を上げるということを国民に理解してもらうために大変苦労した。同時に、その決断をすることだけで手いっぱいで、景気を良くするところまでまったく手が回らなかった。でも、本当ならばその両方があってこそです。
西村:そうですね。
角谷:三本の矢の前に、やはり国民に負担も頼むけれども、景気も良くすると。この2つがあってこそ、消費税の増税も、議論として本当は国民の頭の中にも上がってきて良かったと思うんです。民主党は、どうも負担をかけることに怯えすぎていた節があります。もちろん、われわれも「負担を回してくれ」と言えるほどのことはないですよ。だけど景気が少しでも良くなれば、気持ちも変わる。やはり40歳以上の人はバブルを知っていますから。バブルを知らない世代にとっては、これが当たり前です。逆にデフレ基調は、物価があんまり上がらなくて良かったんじゃないかと思われてしまう節もある。そこを乗り越えていかなきゃいけない。ここが今ものすごく難しいところです。
西村:そうですね。
角谷:その司令塔の要は甘利さん。そして実務は西村さんがやっていると。
西村:はい、ありがとうございます。
角谷:今日はじっくり伺っていこうと思います。話したいことはたくさんあると思いますが、こちらもいっぱい伺いたいと思います。よろしくお願いします。
西村:よろしくお願いします。
角谷:さて、西村副大臣ですけれども、みなさんからの質問を受けようと思っています。番組ではユーザーのみなさんからの質問やご意見などを募集します。メールは番組ページのメールホームからお願いします。質問やご意見をいただいて、後半でご紹介するということにしようと思っています。
さて、西村副大臣のまずはプロフィールと役割、それから内閣府は一体どんなことやってのいるかを伺いましょう。だって副大臣って言うけれども、今、ものすごくいっぱい役職あるんですよね。
西村:そうなんです。
角谷:西村さんの主な担当、どれ一つも相当大変な仕事じゃないかと思うんですけども、まず経済再生。これは、もちろん今、国が大きく掲げている政策ですからね。それから経済財政政策。社会保障と税の一体改革。それから、拉致問題も週末も会合出ていましたね。
西村:そうですね。はい。
角谷:それから、PFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ。防災、国土強靱化。それからPKO(国際連合平和維持活動)とNPO(民間非営利団体)と。こんなにたくさん一遍にできるんですか。
西村:そうなんです。内閣府って何やっているか、よくわからない方が多いと思うんですけども、基本的に各省にまたがるような話について、総合調整をやったり、あるいは司令塔的な機能を担っています。経済の関係も、財務省、経済産業省、それ以外に国土交通省があったり、金融庁があったり、いろんなところが関わる部分です。
それから外交安全保障。拉致もPKOもそうですけど、外交、防衛はそれぞれ外務省、防衛省と関わります。防災、国土強靱化も、国交省だけじゃなくて、消防庁もあれば、病院の関係で厚生労働省もある。PFIも民間の資金を使ってできるだけいろんなことをやっていこうというんですけれど、金融庁も関係するし、国交省も関係する。そういう幅広い分野を担当しているんです。
甘利大臣をはじめ、内閣府大臣は5人います。あと官房長官がいますので、内閣府は、大臣6人に副大臣が3人しかいないんです。ですから、私は甘利大臣の経済関係、社会保障と税の一体改革のところ。それから古屋圭司大臣の拉致問題、防災、国土強靱化。それから官房長官のPKO。NPO、PFIも甘利大臣なんですけれども。そういう役割分担になっていまして、相当大変です。
角谷:そうですね。この場合、私ども政治記者のイメージで言うと、官邸の出先機関と思ったほうがわかりやすいんですか?
西村:そうですね。官邸とは一体的になって、全体の調整と司令塔的な機能と両方果たしていきます。官邸とは密に相談しながらやることが多いです。
角谷:それが内閣府の大きな仕事で、西村副大臣の担当はこれだけあるということがわかっていただければと思うんですけれども。じゃあ、西村さんはどんな人なのかということも、少しご紹介いたします。僕は、西村さんが経産省出身ということしかよくわかっていないんですけど、「私はこういうもんだ」という説明をすると、どんなふうになりますか?
西村:経産省で15年いまして、どちらかと言うと環境・エネルギーをやっていました。原発はやったことなくて、どちらかと言うと、新エネルギーとか石油をやっていました。それから地域の開発、あるいは駅前の中心市街地の話。それからベンチャーの支援とかを15年くらいやりました。その間にアメリカにも留学をさせてもらって、戻って来て、もう一回、石川県庁に出向しました。石川県の地方財政や地方振興みたいな話も現場で経験させてもらった。これはすごく活きているんです。
経産省は15年で辞めました。それから選挙に出たんですけども、1回目に落選して、4年近く浪人しました。非常につらかったんですけども、この間、ポスター持って10万軒近く歩いたり、朝早く街頭立ったりした。その成果かどうか、後援会のみなさまからものすごく応援をしてもらって、その後、4期連続当選をさせてもらっているという状況です。
角谷:実は、西村さんは自民党総裁選にも立候補したことがある。そこで一気に永田町の顔の一人になっていったということなんですね。
西村:まだまだです。
角谷:お話を伺いますと、経産省での仕事が内閣府副大臣の業務に相当役に立ちそうですね。
西村:そうですね。経済関係はずっとやってきましたし、党においても経産部会長とか財金部会長をやらせてもらいました。まさに日銀法改正なんかも、自民党案をまとめた責任者でした。その時に、甘利大臣は当時政調会長に就く前で、経済財政金融の調査会の会長で、私がその事務局長をやっていました。そういう意味では、ずっと一緒にやってきたんです。当選後、外務政務官もやらせてもらいました。拉致問題やPKOも担当していましたから、今は私のやってきたこと、経験を活かせるポジションだと思っています。
角谷:そういうことになっているんですね。ですから、西村さんは突然、副大臣からスタートしたわけではなくて、実は今まで役所でもやってきた。それから県庁に出向していた。こういう経験が今ストレートに、今度は官邸機能の中の一部として、甘利さんとコンビを組んでやっているということなんですね。
西村:はい、そうです。
角谷:そういう意味では、甘利さんが大きな枠を作って、一つひとつ実務に落とし込んでいくというのが西村副大臣の役割だということは、お話を聞いていてわかってくると思います。自民党と民主党では層の厚さの違いがあるんだけれども、当時の民主党政権だと、当選回数4回くらいの大臣がうじゃうじゃいたんですね。当選5回だと、大臣を2回くらい経験している人がいるくらい回転が早かった。野田内閣だけで4回内閣改造やっていますから。そういう意味では、ほとんどの人が何らかの形で内閣、政府の仕事に就いたということになったのかもしれません。だけど自民党はそんな甘くない。当選4回でこれだけ仕事をしても、まだ先輩がいっぱいいますからね。
そんな中で、自民党が新しい世代に上手にソフト・ランディングしている。同時に、安倍さんの年齢のこと考えても、自民党は今かなり若返っているんですね。そもそも野党時代に青年局に何人いたのか。小泉進次郞議員は当選1回で青年局長になって、ほんの十数名を束ねていた。自民党の青年局というのは、45歳以下が入れる。45歳より上の人は「俺は入りたい」と言っても青年局には入れない。こういうルールになっています。この青年局に、今回選挙の結果、80人余りがいるというから、自民党は世代が相当若返りましたね。
西村:もうガラッと変わったと思います。
角谷:そうすると、今、自民党の若い議員たちの中で、どんな人たちが西村さんの元で働いているんですか?
西村:今、政府で甘利大臣が中心となって日本経済再生本部をやっています。党でも経済再生本部を立ち上げています。政府はどうしても日本全体のことを考えがちですので、党は主として地方のこと、地方が活性化するようなことも念頭に置きながらやろうということになっています。いくつかチームを作って、当選2、3回くらいの後輩議員たちが主査クラスをやっています。そういう意味では、若い人たちが毎週地元に帰って、現場の声を聞いて、現場の感覚でいろいろ提案してくれると思います。この何十人かのチームが一緒になって、党と政府でキャッチボールしながらやりたいと思っています。期待しています。
角谷:そこなんですね。官邸と内閣だけがものを進めてもうまくいかない。党の言い分を聞いていたら、引きずられちゃう。TPPもそういう議論になりつつありますけども、党と内閣の役割分担がかなりうまくいっているように見えるんです。副大臣から見ると、どうでしょうか?
西村:例えば、経済財政諮問会議や産業競争力会議で議論があったことは、党の側にもできるだけ伝えて、党の側から出てくるいろんな意見をわれわれ吸い上げて、政府の中で提案したいと思っています。今のところ、そのキャッチボールが良い感じでできているんじゃないかと思います。
ちょっとさっきの話に戻りますけども、やはり議員には連続当選してほしいと思うんです。かつて小泉チルドレンも80人くらいいたんですけれども、(2009年総選挙で)グッと減って10人くらいになった。今度また戻ってきていますけれども。やはり、継続して国会での経験を積んで、党での仕事で汗をかいたり、政府の中に入ったりということを繰り返しながら、経験も積み、だんだん仕事ができるようになってくると思うんですね。途中で落選して、また通るかどうかわからないような状況ですと、仕事を任せられませんし、経験も積めません。
日本の政治としては、やはり民主党も同じことですよね。今回ガラッと落ちていますけども、良い人はずっと当選してきてくれるような政治でないといけないなと思います。ぜひ、そこを応援したいと思いますし、仕組みも考えなきゃいけないのかなと思いますね。
角谷:西村さんのように選挙に強くなってくださいということだと思います。さて、アベノミクスの話をじっくり伺おうと思います。状況としては、政権が発足してから、今ちょうど2カ月くらいです。その間に外交のほうで活発な動きがありました。最初は、アルジェリアの人質事件からスタートしました。その後、日米首脳会談。それから森(喜朗)元総理のロシア訪問。韓国の大統領就任式。外交において、それぞれの役割の人たちの活躍が目立ちました。
一方で、まだ何もしてないけれども、ムード先行でアベノミクスは非常に風に乗っている感じがします。これを形にしていくためには何が必要か。それから3月の経済状況です。今日、補正予算案が一票差で参議院で通りました。衆議院で予算の自然成立を待つよりも、ここでスタートすると。つまり、この後の本予算に向けて動き出せる。つまり15カ月予算の最初のスタートが切れたと。
西村:スタートが切れるわけです。
角谷:こうなっていくわけです。3月以降、どんなことが始まるんですか?
西村:10兆円規模でお金が出ていきますから、相当な経済効果になります。円安の効果もこれから出てきます。そういう意味では、今年前半はそれなりに景気……。さっきも言いましたけれども、やはり海外の状況に依存していますから、ヨーロッパで何かあると、また大変なことになります。アメリカはそれなりに住宅を含めて良いようですから、期待をしたいと思いますけれども。
角谷:(アメリカは)雇用も良い。
西村:雇用も良いですね。ただ、「財政の崖」の問題があるんで、どこかでガクンとくる可能性もあります。そこは要注意ですけれども、海外の状況が今のように安定してくれば、今年は10兆円の予算が出て、円安の効果が出ます。それから年中から後半になると思いますけど、来年4月消費税上がるという前提からすると、すでに一部出ている駆け込み需要があります。今年は、それなりに経済は良いんだと思います。
ただし来年4月以降、やはり駆け込み需要の反動があったり、消費税が実際に3%上がるとすれば、お金を吸収します。だから、ガクンとならないように、そのために第三の矢である成長戦略です。規制緩和であったり、あるいは特区であったり、いろんなことを打ち出していって、年後半から来年につながるようにする。これをぜひやりたいと思います。
角谷:財政出動はそう簡単ではないというけれども。どちらかというと、民主党政権時代に同じような補正を組んだりすれば、「何でこんな無駄遣いするんだ」とか、「こんなにお金があるわけないじゃないか」ということになった。やはり今回も借金で財政出動しているわけです。補正も含めてね。
西村:はい。
角谷:そういう意味では、財政出動はやめていきたいと。もちろん景気が良ければ、あっと言う間に解決の糸口はつかめるんだと言えば、いつでもその状況はあるわけです。どの政権の時もあったかもしれない。だけど、それが恒常的に続かなければ意味がないんです。瞬間風速でできても無理なんですね。それはどうやるんでしょうか?
西村:さっきもおっしゃいましたけれども、われわれは増税の前に景気を良くしようと。これが先だと。デフレでずっと不況の中で、そりゃ増税なんてやったらもっと悪くなります。やはり景気が良くならないと増税なんてできませんから、増税の前にやることがある。それは景気回復であり、デフレからの脱却だというのはわれわれの強い意識です。そのために今回借金は多少増えるけれども、しかし中長期的な財政規律を守る。かつての自民党のように、ばら撒きの無駄遣いはしない前提で、今回10兆円規模、数学的には20兆円規模の予算を組んだわけです。
これはよく評価されて、(国債の)金利は上がっていません。自民党になって、これだけの規模でやって、中長期的に財政規律がむちゃくちゃになるんじゃないかと思われたら、その瞬間に国債は売られて金利が上がります。その状況は今のところありませんので、そういう意味では、まず景気対策を思い切ってやって、景気を良くする、しかし中長期的には財政規律を守って財政再建をやっていくんだという自民党の政策、われわれの姿勢がよく理解をされているんじゃないかと思います。
ですから、今回は相当思い切ってやると。しかし財政出動はそう何回もできない。しかも中身は、防災のためにどうしても必要な堤防とか、民主党政権の時に予算を減らされて遅れてしまった小中学校の耐震化などを前倒しで思い切ってやること。まず、どうしても必要な防災対策をやる。これが一つの塊ですね。トンネル事故がありましたから、トンネルの点検もやりますし、道路の点検も何万カ所とやります。
一方で、もう一つの公共投資のグループは、未来に活きるものです。例えば羽田空港の国際化に役立つ工事であったり、ミッシングリンクと言っていますけど、高速道路がつながっていなくて効率が上がらないところをつなげるとか。あるいは、大学の研究施設。iPS細胞なんかもそうですけども、研究棟が足らないところに研究施設を作って、そこで研究してもらう。こういうタイプの未来に活きるような公共投資を今回やっています。
角谷:民主党が仕分けで「止めよう」と言ったものばかり復活させている感じがします。そうじゃないですか?
西村:そうなんですよ。ハヤブサもものすごく予算カットされて、何十分の1になった。ハヤブサが何年か経って帰ってきたら、民主党は予算を増やしているんですよ。民主党の悪口を言ってもしょうがないんで、批判はもうしません。だけど例えば、中小企業のものづくりの補助金も民主党でゼロになったんですけれども、今回、1000億円復活しました。ざっくり言うと、1000万円で1万件くらい応援したいと思うんです。新規で商品開発をやったり、試作品を作るところを応援します。何でもかんでも応援するというんじゃありませんから、やはり頑張って何かやろうという人たちはぜひ応援したい。
角谷:甘利大臣もよく言うんです。「ばら撒きとは違うんです」、「吟味します」、「選びます」と。でも、それがとても大事なんです。またお手盛りにやったり、申請してきたら「いいよ」ってやっていたら、今まで通りの自民党の感じですよ。その違いはどうやっていくんですか?
西村:まさに未来に活きるかどうかというところを厳選していきます。
角谷:そうか。未来に活きるか。なるほど。
西村:未来に活きるかどうかをまず見ます。それから、実際にお金がどう使われて、どういう効果を上げたかというところをぜひチェックしたいと思っています。プラン・ドゥ・シー・アクション、PDCAサイクルというか。これをやりながら、もう一回、自分たちでやったことも反省もする仕組みを入れたいと思っています。
角谷:でも西村さん、使い勝手の悪いお金だと、「これには使えるけど、こっちには使えない」となる。つまり流用できないと、実は不自由なお金で、「政府から来るお金は使い勝手が悪いんだ」ということは、みんな言いますよ。
西村:例えば、かつては1000万円の補助金をもらうのに、書類が10センチと言われたわけです。その人件費だけで何万、何十万、何百万使うかもしれない。だから書類はできるだけ簡素化する。だけど、やはり国民の税金ですから、しっかり吟味して良いものに付けるということです。一方で、似たような話ですけども、復興の交付金がやはり使い勝手が悪いという話はある。復興はいろんなことが一遍に起きていますから、やはり進捗状況によって多少流用したり、関連のものに使ったりしなきゃいけない部分は出てくる。だから、復興の交付金はもうちょっと使い勝手を良くしたいと思っています。
角谷:全然関係ないものに使っていたという問題もありました。だけど、「使っていた物が壊れちゃったんで、これで買いました」というのが、融通が利くと見るのか、関係ないものも買っているんじゃないのかと見るかは相当これ……。
西村:難しいですね。
角谷:難しいですよね。その吟味は、復興担当大臣がやれば良いことなのか。それともそれを含めて景気復興なんだというふうにやるのかというのは……。
西村:「この範囲で」という大枠は、国民の税金ですから、やはり国がやらなきゃいけないと思うんです。ただ、その範囲でどういうふうに使うかは、できるだけ自治体に任せたいと思っています。県や市町村の実勢に任せて、ある程度融通を利かせて使えるようにしたいと思います。
角谷:そういうところで、震災後の2年間は何か思うようにいかなかった。お金は用意したのに思うようにいかない……。
西村:不用が出ていますね。使い切れなかった。
角谷:余っちゃっている。それは余っているわけがなくて、本当は融通の利くお金があれば良かったんじゃないか。そういう意味では、民主党政権の時の予算で組まれたものを、もう一回洗い直して、復興担当大臣とうまく相談しながら、うまく活かしてくれないと。うまくいく人だけ伸びるというのも結構なんですけど。
西村:みんなにチャンスがないとですね。
角谷:やはり、少なくても被災者の人たちが後回しにされたり、置いてけぼりにされるようなことでは、こちらもあまり良い気持ちはしませんよ。
西村:そうですね。もう一つ、復興地域の公共事業も不調と言われるんですけど、入札してもなかなか整わないわけです。
角谷:そういう話を聞きますね。
西村:いろいろ調べてみると、やはり人件費がどんどん上がっていて、あるいは建築資材も上がっていて、「予定された金額で取ると、もう全然赤字でだめだ。やってられない」という声が非常に多かった。ですから、人件費や復興の資材の見直しも、もうすでに始めています。それ以外の日本全国、かつては自民党政権も年間3%くらいずつ公共投資は減らしましたけども、民主党政権でガクッと減っていますので、人手がもうないんですね。どんどん解雇されていますし、建設会社の数も減っています。いきなり公共投資が増えるからといっても、できないわけです。人件費がドーンと上がっています。
角谷:そうなんですね。
西村:それもうまくやらないと。工事をやってもらうのは必要ですけれども、やってもらったけど赤字でまた倒産になったり、あるいは不調になって工事が全然……。
角谷:公共事業損じゃ困るんですね。
西村:そうなんです。
角谷:「人のためになるから工事を受けたけど、こっちがつぶれちゃったよ」では意味がない。
西村:公共事業が減っているから叩き合いで取り合っているところもあります。
角谷:なるほど。
西村:ちゃんと現状を踏まえた適正な人件費にならないか、また建築資材を高騰しているのであれば、その分をちゃんと見合うような形にならないかと検討し始めています。
角谷:西村さんは国家強靱化のご担当だから伺います。小泉内閣の時から、公共事業の予算はどんどんカットされ始めました。ですから、もう8年ぐらい前から続いている作業です。公共事業自体が明らかに自民党政権時代の予算からも削減されていった。民主党でガクンとまた下がる。「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズでちょっと状況が変わりました。また戻ってきました。
国家強靱化、「なんだ、また公共事業中心の自民党政治とタックを組むのか」と思われたけれども、公共事業は最初に土地の買収をしておかないと、上物なんて最後の最後なんです。実は、土地を年々の予算で確保して、やっと上物が最後に建てられると。
西村:何年か計画でやらないといけない。
角谷:そうですね。ですから今言ったように人はいなくなっちゃった。建設会社の数も減っちゃった。一方で、土地の買収がままならなければ、上物が建つのはずっと先になっちゃう。それを短期間にやろうとするのか。それとも、やはりスピードは守って、強靱化計画とマッチングするのか。そこら辺はどうなっているんですか?
西村:もちろん、無理をして手抜き工事のようになってしまったらいけませんから、やるにも限度はあります。しかし、役所との手続きや入札の手続きなど、簡素化できるところはできるだけ簡素化しようということで今回もやっています。そういう意味では、できるだけ早く今回の補正予算の効果が出るようにやりたいと思っています。
いきなり買収を始めろと言っても無理ですから、やはり何年か計画あるものを前倒ししてやってもらうことが主となります。一番いい例が小中学校の耐震化工事ですね。これは何年かかけて100%やる計画を1年前倒ししようと。来年やろうとしているのを今年やろうとかです。こういうものはどんどん進めたいと思っていますね。
角谷:その優先順位が今度は実はものすごく大事で、ここに政治主導が活かされないと。役所主導よりも、ここは逆に政治主導だと思っているんですよ。
西村:そうですね。
角谷:政治が「優先順位はこれです」「これをやりなさい」というふうにしていかないと。まさに、ここが大事だと思うんですね。だって、やらなきゃいけないことはたくさんあるけど、それをどうするかというのは政治が決めていかなきゃだめだと思うんですね。
西村:闇雲に何も分からずに、政治が「ああだこうだ」と、計画もないところ「やれ」と言っても無理ですから。やはり、積み上げたものや計画あるものがありますから、それをちゃんと聞いた上で、判断しなきゃいけないということですね。それが真の政治主導だと思いますね。
角谷:その中で、政治だけで荒っぽくやるのでは良くないと。そのために今回、いろんな会議ができましたね。まず日本経済再生本部。西村さんがいるところでもあります。それから産業競争力会議。それから経済財政諮問会議。いろいろ会議ができました。この役割はどういうもんなんですか?
西村:まず再生本部は、全閣僚が入っています。総理が全閣僚の意見も聞きながら指示を出す一番の司令塔の部分です。全体の設計は再生本部がやって、マクロ経済の設計みたいなところは経済財政諮問会議でやってもらいます。今の財政再建と経済成長との両立など基本的な議論を経済財政諮問会議でやってもらって、それを受けて再生本部でいろいろ指示を出していくんです。
もう少し細かい実施設計、細かいミクロの政策みたいなところを再生本部の下に置いた産業競争力会議というところでやります。例えば、国際化をどうやって進めていくのか。競争力のための規制緩和をどうやって進めていくのか。そういった実施設計みたいなところを考えてもらおうということにしています。
さらに規制改革会議があり、総合科学技術会議があり、社会保障国民会議がある。会議がいっぱいあるように見えるんですけれども、全部連動しています、競争力会議で「こういう規制緩和が必要だ」という球が出てくれば、規制改革会議に投げて、専門家に議論してもらう。あるいは、「こういうテーマで研究開発を進めなきゃいけない」というのは総合科学技術会議で議論をもらう。「社会保障の負担をどう考えるか。その制度設計を考えよう」と諮問会議で議論が出れば、国民会議とキャッチボールしてもらう。
一番の特徴は、全閣僚が入って総理が指示を出す日本経済再生本部を中心にして、全部の会議を連動させていることです。民主党政権時代のように、いっぱい会議ができて、いろいろ好きなようにバラバラにやって、結論出しても実行できないということではなく、やれることから結論を出して実行していこうと。毎回、総理がそういう指示を出して、全部連動させています。
角谷:産業競争力会議には民間の人もたくさん入っている。例えば、楽天の三木谷(浩史)さん。それから最近では……。
西村:ローソンの新浪(剛史・社長)さん。それから、竹中(平蔵・慶應大学教授)さん。
角谷:高橋洋一(経済学者)さんの名前が出始めましたね。
西村:いえ、それはないです。
角谷:ないですか?今日の報道では高橋さんの名前が……。
西村:競争力会議のメンバーは今、10人ですけど、増やすことはないですね。
角谷:そうですか。
西村:あと、コマツの坂根(正弘・会長)さん。榊原(定征・東レ会長)さん。秋山(咲恵・サキコーポレーション社長)さんという女性はものづくりやっておられます。それから東京大学教授の橋本(和仁)さん。それから経済同友会(代表幹事)の長谷川(閑史・武田薬品社長)さん。岡(素之・住友商事社長)さんですね。岡さんには、規制改革会議とつないでもらっています。
角谷:民間の人から忌憚のない意見があるから、会議の中身は生放送できないので、私どももニコニコ生中継ができないんです。だけども、どういう中身だったかというのは後日……。
西村:議事録が全部出ます。
角谷:議事録が出ることになっています。
西村:相当思い切った議論がなされています。ものすごく刺激的です。
角谷:日本は変わるなという感じを受けますか?
西村:そうですね。今日も総理からTPPの報告、訪米報告を言い渡させていただいて、それに対してご意見いただきました。基本的に賛同していただいていますけれども、さらに、「もっといろんな点、こんな点に注意すべきだ」ということも相当出されました。そういう意味では、叱咤激励、応援団でもあり、一方で相当な注文もいただきます。それをわれわれこなしていかなきゃいけません。これをこなしながら、総理が各閣僚に指示を出していくということになっています。今は良い循環になってきていると思います。
角谷:高橋洋一さんの起用を検討するという報道が今日出たんです。そんな話も出てきている。
西村:私は聞いていませんし、承知していません。
角谷:そうですか。そんな記事が出ているようです。まあ、そんなこともいろいろあって、兎も角、いろんなところの声を出している人の英知を入れ込もうと。春闘の最中で財界と連合ではもう賃金を1%上げるなんて無理と言われていたけど、2月1日に甘利さんに出ていただいた時に、「そんなの待っていないで、何か目に見えたものが経営者だけじゃなくて、サラリーマンにも、働いている人たちみんなにもいきわたるように」と。
そうしたら、ローソンがボーナス3%アップすると。景気に関わらず、業績に関わらずやりますと。メンバーだから言ったのかなと思いましたけれども、これは最も良い話で、20代後半から40代のモデルケースで、だいたい15万円くらい春と冬の賞与でプラスになると。3人くらいお子さんがいる家庭だと、30万くらいプラスになると。こんな数字がモデルケースで出てくると、やはり生活しているお父さんたちは、ちょっと良くなるかもしれないなと考えますね。だけど、消費税が増税になったら3%くらいは消えちゃうんじゃないかという不安がある。つまり、相殺されてしまうと。
こういう不安と期待が今入り交じっているけど、まだお金がちゃんと手元に届いてない状況です。僕はローソンの新浪社長が頑張っているし、最初に手を上げることは大変なことだと思います。だけど一方で、コンビニはアルバイトの人もたくさんいる。派遣で働いている人もいるのかもしれない。いろんな働き方があって、パートの人も多いでしょう。いろんな形で、実は正規の社員じゃない人たちもたくさん働いている。それはもちろんローソンだけじゃない。そういう働き方をしている業種はいっぱいあります。
安倍さんも「良くなってきたところから給料上げてくれよ」と財界に投げかけてくれた。甘利さんもそういうアプローチをしてくれている。連合や組合の言うことは聞かないかもしれないけど、安倍さんに頼まれたら、「分かりました」と。そうしたら、「安倍さんに期待しようかな」と思う人増えるかもしれない。でも、みんな正規社員の人たちのことなんですよ。今は、たくさん働き方があって、そういう人たちばかりじゃないということを分かってもらって良いですか?
西村:はい、ありがとうございます。まず、総理からお願いをして、ローソンをはじめ、いくつかの企業はもうすでにやってくれています。ベースアップという基本の給料を上げていくことは、競争があってなかなか難しいところもあるんです。業績の良くなった分はボーナス、一時金で出してもらうということは、多くの企業を賛同してくれています。これはそれなりに今回やってくれると思うんですね。それは一つですね。それから、おっしゃったように働き方が多様化しています。
角谷:だって時給で働いていたらボーナスないんですもん。
西村:ええ。いろんな働き方があるのに、正規か非正規かというこの二つしか分かれていないわけですよね。これがもう少しきめ細かにできないかというところは……。
角谷:多様化ということを認めていく……。
西村:多様化に応じて、認めて、できないか。例えば、自分は正規になりたいけども、転勤があったら嫌だとか、責任持たされるのも嫌だとか、もう少し何かやりたいけども非正規のほうが楽で良いやという人もいます。そういう意味では、正規と非正規の間に準正規みたいな、ちょっと転勤がないようなものとか、そういう正規社員みたいなものを作れないかとか。
角谷:地域採用というところね。なるほど。
西村:地域採用とかですね。今いくつか工夫、検討を始めています。単に正規か、非正規かだけで分かれないようにしたいなと思っています。それからローソンもそうですけど、トヨタなどの期間工、一時的に働きに来た人もそうです。ローソンのアルバイトの人もどんどん正規社員化を希望者しています。そういう仕組みをもう少し流していくようなことも考えたいなと思っています。
それから、いわゆるフリーターの人たち、アルバイトの人たちも含めて、私は初当選の時からずっと取り組んでいますけども、いわゆる「トライアル雇用」です。企業に一部補助金出して、3カ月や半年間、雇用を試しにやってもらい、お互い良ければ正社員になるという仕組み。この仕組みでもう何十万人という雇用がこの10年間で生まれています。こうした仕組みをもっと取り入れられないかとか。
これからの課題で言えば、インターン。日本では、大学生のインターンってあまりないですよ。うちの事務所には、アメリカから学生が来て、インターンで単位を取ったりしています。夏休みに働きながら、学んで単位が取れる。インターンで実際の仕事を学んで、その企業に就職するという仕組みを少し具体化できないかなと思っています。
角谷:それこそ、このいろんな会議には財界の偉い人、会社の社長さんがいっぱいいるわけでしょう。でも、エントリーシートや履歴書を出して選ぶのは、実はその会社の人事なわけだから。「君、この間何やっていたの?」「西村君、落選して浪人時代あるけど、収入もなくて、この間何やっていたの?」となるわけでしょう。つまり、いろんな人生あるじゃない。
それから、例えば浪人したのが1、2年あったからといって、別に人生だめになるわけじゃない。新卒で就職できなかったから、人生だめになるわけじゃない。それはみんな知っているのに、でも企業には「昔から、そうしています」とか、「この学校以外、うちは取っていません」とか、そんなことばっかり言っている人たちがいる。もちろん企業として、「それは必要だ」と言うなら良いけど、世の中がもうそうじゃなくなっている。そういうことも言ってくれているんですか?
西村:そういう企業はだめになるんですよ。
角谷:だめになるの?
西村:だめになる。
角谷:なるほど。
西村:もう変わってきていますから。例えば、統計で明確に出ていますけども、女性をたくさん採用して、女性の役員が多い企業ほど業績は良いとか。かつてとは全然違ってきています。
角谷:先週の21日ですけども、厚労省が発表したところによると、女性の給与は今、男性の7割まで迫ってきている。つまり、男女雇用機会均等法ができたというよりも、優秀な女性がたくさんいるんですよね。ところが、「君、まだいるの?」みたいなパワハラとセクハラが交じったような社会がずっとある。働き方がこれだけ変わっているのに、まだそんなこと言っている会社はだめになりますよ。
西村:だめになる。もうだめになると思いますね。自然淘汰でだめになっていきますから、若い人たちもそんな企業にこだわっちゃだめなんですよ。もっと大胆に、いろんなことをやってくれる企業、あるいは新卒に限らずいろんな時期に採用してくれる企業もたくさんあります。大きな企業だけじゃなくて、中堅企業でも良い会社はいっぱいありますので、もっと目を見開いてやっていただきたいと思います。それから、もう一つ、希望する学生は全員留学に行けるということを今やろうとしています。希望したら、全員海外に行ける。これをぜひ打ち出したいと思っています。
角谷:そんなプランもあるんですか?
西村:今、それを検討しています。例えば民間にも多少資金を出してもらって、国からも3分の1出す。残り3分の1は奨学金的な形で、無利子の融資でもいいですよ。就職してから返してもらえば良いので。
角谷:つまり、チャレンジしたい人たち、留学したい人は行けると。
西村:例えば、年間300万円費用がかかるとして、国が100万円を出せばいいわけですから。1万人に出して100億ですよ。10万人に出して1000億ですよ。たいした金額じゃないんですから、どんどんグローバル化して、海外に行きたい人は行ってもらう。このようなことも、ぜひやりたいと思っています。海外からも、良い学生が日本に来てくれて、切磋琢磨してやってほしいと思います。安倍総理の言われる「次元の違う政策」をいろいろ……。
角谷:次元が違うんですね。
西村:次元が違う政策を出していきたいと思っています。だから企業も次元が変わらないと今まで通りやっている会社はもうだめになります。
角谷:「いつやるか?今でしょ」というフレーズも今流行っていますけど。つまり、そういうタイミングに来ているということですね。
西村:そうですね。
角谷:そういうのは西村さんのプランから出てくるんですか?それとも会議から出てくるんですか?それとも役所から出てくるんですか?
西村:それはもうすべての英知、知恵アイデアを結集しています。もちろん役所の若い人たちからも出てくる。私もいろいろ意見を出す。それから、産業競争力会議とか諮問会議からもいろいろ意見が出てくる。もちろん甘利大臣は大臣で思いを持っておられる。これを全部結集してやろうとしていますので、別に誰が言おうと関係ないです。党の1年生であっても意見言ってもらえれば、良い意見であれば採用したいと思っています。
角谷:でも西村さん、そういうのはとりあえず盛り上がって活性化するような気がするんですよ。だけど、「先生、ご発言は大変結構なんですけど、私どもの政策としては」「西村さん、そんなこと言うと先生の経歴に傷がつきます。おやめになったほうがいかがでしょう」と何とか省が言ってくるんじゃないですか?
西村:役所の抵抗や役所の縦割りを廃止するのが内閣府の仕事です。
角谷:しびれる発言ですね。本当ですか?
西村:それが内閣府の仕事です。もう総理になったつもりで指示出さないといけない。甘利大臣もやられていますし、私もそのつもりでやっています。
角谷:でも、過去にも内閣府で特区構想をやろうとか、いろんな人たちが一生懸命やっていて、それでみんな協力してくれなくて、梯子を外された形でがっかりして終わっていくというようなこともたくさんありました。
西村:ありましたね。
角谷:ある意味では、行政改革だとかいろんな改革をやろうと言っている、今「みんなの党」の代表になっている渡辺喜美さんだって、前回の安倍さん時に行政改革担当大臣やったけど、誰も付いて来てくれなくて、怒って辞めちゃったということがありました。本当に最後まで梯子を外さないんですか?
西村:一つは、今、7割近い支持がありますから、総理の政治姿勢に対してこれだけの国民の支持があるということは非常に大きな強みです。ただ乱暴にやる気はなく、丁寧に議論は積み重ねていきたいと思っています。あまり拙速に、まさに変な政治主導みたいなことをやりたくないんです。各役所がいろんな抵抗あるでしょうけど、その意見は聞きます。しかし、そこは丁寧に説得して、方向性は変えずにやりたいと思っています。かつての自民党政権では、やや無理して強引に社会保障費削減をやったことある。そういう反省の上に立って、方向性は出しつつ、TPPもそうですが、やはり丁寧に話して了解してもらいながらやる。
角谷:その辺、僕らは忘れていたけど、自民党の中では「今までの自民党は良くなかった」という反省がいっぱいあるんですかね?
西村:かつての自民党を反省して、新しい自民党でやらないと、もう次の選挙はないです。別に選挙のためにやっているわけじゃないですけれども、日本の将来はないと思っていますね。
角谷:評価はもらえないと。なるほど。そうすると、衆議院選挙に勝って、安倍政権ができて、自民党はもう満足しちゃったのかと思っていたけどそんなことない。
西村:自民党にとっても、ラストチャンスですよ。これでできなかったら、われわれはもう次はないし、日本の将来もないと思って今やっています。相当思い切った方向性を出したい。しかし、単に強引に方向性だけ出すというんじゃなくて、丁寧に説得しながら実行していきたいと思っています。やれることはもう今すぐ実行していくという姿勢でやっていっています。
角谷:さて、全体的にはその責任の範疇(はんちゅう)じゃないかもしれませんけど、成長戦略の中ではTPPという問題があります。施政方針演説では、総理から踏み込んだ発言があるんではないかというふうにも言われています。日米首脳会談を受けて、総理は今日の参議院でも説明を一生懸命していました。成長戦略の中で、TPPはどういう位置付けなんですか?
西村:TPPというと、関税交渉が一番メインのように思われています。もちろん、これはこれですごく大事です。日本から輸出していく上で、アメリカを中心に諸外国で関税あるものについては下げてもらうことは大事です。日本の関税が比較的高い農業についても、「ゼロにしろ」と言われたらこれ大変きついですから、やはり日本としては、一定の例外品目は必要です。
アメリカの農業は日本の農業規模の90倍くらいあって、オーストラリアは日本の1500倍ありますから。そんなところと対等条件で戦えと言われても、なかなか無理。いくら日本のものがおいしいとは言えです。そこは一定の例外も必要ですし、もし自由化するとしたら一定の予算措置なり支援策も必要だと思います。構造改革も必要になってくるでしょう。
しかし、関税の議論はごく一部で、投資をした時にしっかり保護をしてくれるとか、知的財産を守るとか、政府調達ちゃんと公平なルールでやるとか。つまり21世紀の新しい時代の国際経済、貿易、投資のルールを決めていこうという枠組みなんですね。同時に日本はEUとも議論を始める。アメリカはEUと議論を始める。つまり、日本・アメリカ・EUもほぼ同時にそういう議論を始めていく。
角谷:つまり、二国間FTAみたいなのがいっぱい結ばれるのとTPPは同時進行と?
西村:同時進行。しかもその中にはオーストラリア、カナダ、シンガポール、先進国はほとんど入って、そこで新しいルールを決めていくという。これがすごく大事でして、世界の枠組み・ルール、特にアジア太平洋でのルールが決まっていく。これを将来、知的財産や投資などで、中国や新興国に守っていくように促していくのが大事なことだと思っています。中国に投資をしたは良いけども、すぐ道路ができるからと没収されたり、例のレアアースにしても民間同士で契約をしているのに、いきなり入ってこなくなった。こういう国際ルールを無視したようなやり方をやめてもらう。国際社会の一員として、ルールを守ってもらうことを新興国に言っていかなきゃいけない。その一つのベースになっていく新しい時代のルール作りがものすごく大事です。そこに日本が入らないわけにはいかないし、主体的にルールを作っていくと。できることなら日本の国益に合うような形のルールが良いに決まっていますから。そういう主張をしていく。
角谷:だったら、日本がTPPなんて入るんじゃなくて、ロシア、オーストラリア、中国も入った、もっと大きなこれから可能性がある貿易のグループを、日本が策定してイニシアチブを取れば良いじゃないですか?
西村:日本がイニシアチブを取ってやったのが、APEC(アジア太平洋経済協力)なんですよね。APECも同じ枠組みで、2020年に自由化しようという方向で議論進んでいます。われわれはすでに合意文章をAPECの中で結んでいますので、2020年貿易自由化、投資の自由化って言っているわけですから、ある意味TPPと同じような議論をやっているんです。
角谷:こちらのほうが相手にしている国の可能性が広いんじゃないですか?
西村:広いからなかなかそう簡単に進まないんで、むしろ雄志が集まったTPPのほうが議論は早く進んでいくわけですよね。
角谷:なるほど。
西村:そういう意味で、私はTPPというのは一つのプラットホームになっていくと思う。TPPがベースとなって、EUやオーストラリア、カナダが入って、さらにASEAN(東南アジア諸国連合)+6やAPECの議論のベースになっていくんだと思うんです。
角谷:13カ国とか20カ国とかに広がっていますね。
西村:日本はしっかり主張して、国益に合うような形を作っていくことが大事だと思います。もちろん、やはり農業はこれ守らなきゃいけない部分があります。北海道、東北を中心にもう大規模にできるところはやってもらうとしても、私の地元の淡路島もそうです。総理がよく言われる、下関から日本海側の棚田ですね。中山間地域。
角谷:淡路島のタマネギおいしいからね。
西村:タマネギはおいしい。タマネギはもう競争していますからね。これは強いんですけど。しかし中山間地域で棚田のところはいくら規模を大きくしろと言ったって、できませんから、地域の特性とか品目別にいろいろ対応していかなきゃいけない部分もあります。農業の持っている多面的機能ですね。国土保全、自然との共生。都市農業でも一定の安らぎを与えてくれていますし、防災的な機能もあります。そうした機能も評価していかなきゃいけないんだと思いますね。そのための支援策は、ぜひやりたいと思っています。
角谷:そういう意味では、自民党の農業をベースにしている選出の議員の先生たちは……。
西村:私もそうです。私も農業をベースに。
角谷:反対している人たちが多い。それから地元の県会、市会の議員だって、なかなか納得できないという声も強い。条件闘争に入っていくならば、政権としては、しめたものかもしれませんけれども、まだなかなかそんな甘いものじゃなさそうですよ。
西村:条件闘争とかそういうことじゃなくて、TPPあるなし関わらず、安倍総理もまったくそう思われていますけど、農業は成長産業として絶対生まれ変われる。放っておくと高齢化していく私の地元もそうですけれども、65歳、70歳の人が一生懸命やって元気ですよ。元気ですけれども……。
角谷:後継者の問題がありますね。
西村:後継者がいなくて、跡をどうするのか。この5年、10年の間に集約化できるところで集約化してもらう。それも集約化しようにも飛び地になっていたりするんですね。若い農業者とも議論しますけれども10ヘクタール、20ヘクタールやっているんだと言っています。よく聞いてみると、飛び地で効率性が上がっていないんです。それをどうやって土地交換したりしながら集約化していくか。農業委員会、農協、市町村と窓口も1カ所になってなかったりします、ワンストップで行けるように、いろんな情報が集まってそこでできるようにするとか。例えば地方の都市公社みたいなところでやってもらうとか。
あるいは一時、都市部の開発で民都機構(民間都市開発推進機構)というものを作ってやってもらいましたけど、農業版民都機構的な集約化をしていくための機能。土地の公社、県の公社ができれば良いですけれどもね。いろんなアイデアを使いながら、この5年、10年の間でできることはできるだけ集約化していこうと。
やはり、地域をよくわかった農協の力も必要です。農協は農協で去年ファンド法というのを作って、今年補正予算でも追加していますけれども、農業者が何かやりたいというときに、例えばカゴメやキューピーとかそういう商工業者と一緒になって、付加価値を付けて全国展開する、海外に売っていく。そういうところを支援するのに農協も出資してもらうと。そういうスタイルの投資銀行的な投資家インベストをやってもらう。そういうところも農協に新しい機能として頑張ってもらいたいなと思うんですけれどもね。
角谷:なるほど。最後に、一言で言えっていうのは難しいですけど、このアベノミクス、中長期的には今までの仕組みはどんどん変わるという話はずいぶん伺いました。公共事業にしても、農業にしても、それから留学だとか、文科省の政策も大きく変わるのかもしれない。そういう意味では、その先どんな国家像を描いて、アベノミクスをやっているんですか?
西村:一つは、時代の変化において変わらなきゃいけませんけれども、伝統的に引き継いだ日本の良さ、伝統文化であったり、地域の共同体であったり、人と人との信頼関係であったり。この日本人としての良さ、強みは絶対忘れちゃいけないんです。日本の良さを守りながら、しかし時代はどんどんグローバル化して、インターネットもこれだけ広がってきていますから、やはり国際社会の中で活躍できる人であったり、企業であったり、それから日本で勉強したい、仕事したいという海外の意欲を持った人たちはぜひ来てもらって、切磋琢磨をしてやる。ある意味、開かれた保守というか、開かれた共同体というか、そういう国家でありたいなと私自身は思っています。安倍総理もやはり日本の良さは大事にしたいと思っておられると思いますね。
角谷:はい。メールを頂いています。質問があります。神奈川の男性です。先ほどの議論の先にあるものですね。もう少し具体的なことだと思います。「最近アベノミクスの影響か、円安や株価が上昇していますが、いまだ僕のような一般市民には実感がありません。そのような時は来るんでしょうか?また、それはいつごろですか?」。
西村:これまでの景気の回復、過去の経験で言うと、賃金が上がってくるのは少し遅れてきます。それから地方に波及してくるのも遅れてきます。大企業が良くなった後、中小企業に裨益(ひえき)するのも遅れてきます。だけど、できるだけスピードアップして、同時にいくようにしたいと思っています。だからこそ賃上げをお願いしたりしています。それが一つですね。
それから、これまでは雇用か賃金かというときに、日本経済全体として雇用を取ってきたんだと思うんですね。失業率そんなに上がっていません。しかし、その分賃金は下がってきています。ある意味、二者択一で雇用のほうを優先してきた面があると思うんです。今回われわれは二兎を追いたいと思っておりまして、雇用もできるだけ維持拡大したい。しかし、賃金も上げていきたい。これはインフレになる以上、当然上がっていってもらわないと困ります。そういう意味で、これまで雇用だけを守ってきたところを、次元を変えて、両方追い求めていきたいと思います。そう遠くない将来、果実が行き渡ると思います。ぜひ頑張りたいと思います。
角谷:なるほど。京都の男性からです。「先日、日銀人事案が発表になりましたが、この人事案はアベノミクスの成功たらしめるために十分だとお考えでしょうか?」。
西村:黒田(東彦)さんは国際感覚豊かですし、金融緩和に対して積極的です。それからある意味、財務省出身で財政規律を守る。財政ファイナンスはしないというメッセージにもなりますから、そういう意味では、総理の選ばれた人事として、すばらしい方だと思います。それから私が財金部会長の時にも部会に来てもらって、金融緩和の議論をしていただいた岩田規久男先生(経済学者)も、リフレ派というか金融緩和派の第一人者ですから、相当メッセージが出ると思います。とは言っても、日銀の組織をやはりしっかり運営していかなきゃいけません。
角谷:独立性も保たなきゃ。
西村:保たなきゃいけないということで日銀出身の方を入れた。そういう意味ではバランスの取れた人事だと思います。
角谷:なるほど。愛知の男性です。「西村さんはアベノミクス始動後、どのようなところで一番効果が出てきているとお考えでしょうか?また次、強化したいところはどんなポイントでしょうか?」。
西村:政策を発表して、金融緩和、財政出動機動的な出動、それから成長戦略。これに対する期待感で人々の気持ちが変わったところです。株も上がり、円高も修正されてきたことは、まず一番の効果だと思います。マーケットがしっかり反応している。株価と経済成長は過去を見ると、見事に半年後パラレルに動きます。株価が上がったということは、半年後の経済も上向いてくることの兆しであります。先行市場ですから。そういう意味では、期待感先行ですけども、われわれがしっかり政策をやれば、経済も必ず良くなるというところです。
先ほどからお話している通り、第一の矢で金融緩和をやっても、そのお金を使ってもらわなきゃいけない。その呼び水の第二の矢の財政出動をやったと。しかし、これは何度もできない。三本目の矢で規制緩和なり、特区なりの成長戦略で、企業がお金を使おうと資金需要が出て、インフレ期待が起こることで、物価も上昇して、経済も本当に良くなっていきますから。三本目の矢、規制緩和、特区、成長戦略を。
角谷:6月に骨太の方針を出すんだと思いますけど、もう矢継ぎ早にいろんなものやって、多岐にわたる分野にやらなきゃだめなんですよね。
西村:そうなんです。ですが、6月に骨太と成長戦略もまとめますけれども、それを待っているわけじゃなくて、やれることはもう全部やっていこうと。例えば薬事法の改正も7月の緊急経済対策に入れてももう走り出しています。医療機器とか再生医療も規制改革をして、もっと進むようにしようということも打ち出して、ぜひ早くやりたいと思っています。それから雇用の話もいくつか賃金上げも要請もしました。できることは次から次へ、ぜひやっていきたいと思っています。それをマーケットは見ていますから、それに応えていきたいと思っていますね。
角谷:なるほど。ということで西村副大臣にいろいろ伺いましたけれども、今いろんな話をした中で、ニコニコのユーザーのみなさんに「これはもっと強調しておきたい」「これは言い忘れた」というところがあれば。どうぞカメラ目線で。
西村:今日は経済政策を中心に話しましたけれども、私は拉致問題とかPKOとか安全保障の問題にも関わっています。この安全保障面についても、次元の変わる政策を安倍政権は打ち出しています。集団的自衛権であったり、あるいは防衛費を増額させたこと。あるいは普天間を基地の移設を進める。これらのことをオバマ大統領に安倍さんから言って、オバマ大統領がものすごく評価をしてくれたわけであります。
そういう意味では経済も次元が違う。安全保障も次元が違う。これまでの日本が内向きで、しかも縮み思考で経済も伸びなかった中で、ガラッと変えて、外に目を見開きオープンに、そして日本のやれることは経済も安全保障もやっていこうという。新しい世界のリーダを目指してやっていくと。世界の中で信頼され、尊敬される国になろうというところを、経済だけじゃなくて安全保障面でもこれからやっていきたいと思います。
角谷:前回の甘利大臣に続いて、今回、西村副大臣に出ていただきました。これは第2回日本再生会議といってニコニコ動画で何弾もやっていこうと思っています。分野が多岐にわたりますから、いろんな閣僚のみなさん、内閣で働いているみなさんにここに来ていただいて、お話を伺うというのもさることですけれども、甘利大臣や西村さんには何度も出てもらおうと思っていますから。
西村:喜んで。
角谷:ちょっと停滞していたり、あまりスピードがアップしていませんよということが起こるだけで呼びますから。
西村:はい。分かりました。
角谷:また来ていただけますかね?
西村:はい、わかりました。
角谷:今日はやっていただいて、どうですか?
西村:喉が渇きましたね(笑)。
角谷:そうですか(笑)。
西村:暑苦しいですもんね(笑)。すみません。
角谷:すみません。だけど期待は大きい。その期待が大き過ぎると。この間、麻生さんが民主党を皮肉って言っていましたけどね。期待が大きすぎると、うまくできなかったときに落胆も大きいと。だから、もう休んでいる暇はないんです。本当に今このメンバーのみなさんだけじゃなくて、閣僚のみなさん、それぞれ頑張っているのがよくわかるんですけれども、やはり国民一人ひとり見えてこないと実感が湧かない。頑張っているだけじゃ、「政治家、それ仕事だろう」と言われちゃう。結果を出さなきゃいけないところが、参議院選挙で評価されるんでね。選挙のためにやるわけじゃなくても、参議院選挙という中間試験があるみたいに思われていますから。
西村:そうですね。結果をぜひ出したいと思います。
角谷:そこはやはり出さないとだめだということも含めて。ここで分からないこと何か動きがあったときには、また来ていただこうと思います。今日はどうもありがとうございました。
西村:よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
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