経済政策「アベノミクス」を柱に掲げ、動き始めた第二次安倍内閣。発足以来、低迷していた株価は上昇し、為替も円安方向に。niconicoが1月31日に実施したネット世論調査でも、内閣支持率が56.6%となり、経済政策への期待が大きかった。「アベノミクスで日本は再生するのか?」「安倍首相の掲げる三本の矢の中身とは?」「円安株高で景気は良くなるのか?」。今、最も知りたいアベノミクスについて、甘利明・経済再生担当大臣をお招きして、詳しく聞いた。
インタビュアーは、コネクターの角谷浩一氏。はたして、アベノミクスでに日本は再生するのだろうか。
角谷浩一氏(以下、角谷):みなさんこんばんは、コネクターの角谷浩一です。さて、国会がいよいよ始まって、与野党の論戦がスタートしました。これから個別に予算委員会だとか内閣委員会で、日本の経済の再生についてどういう議論が行われて行くのか。これは政界だけではありません。財界も、そして私たち国民も、いったい景気は良くなるのか? これからの経済はどうなるのか? 世界の経済が不安定な中、日本はどうなっていくのか? 大変、関心が高いというふうに思っております。
ニコニコ動画でも、その辺はじっくり勉強していこうと考えておりまして、日本経済再生について番組を作っていこうということになりました。この呼びかけに応えていただきまして、今回、第2次安倍内閣で、日本経済再生の重責を担っていく、甘利明・経済再生担当大臣に今日はお越しいただきました。甘利さん、どうぞよろしくお願いします。
甘利明・経済再生担当大臣(以下、甘利):こんばんは、よろしくお願いします。
角谷:とにかく国会はありますし、それから、国会が始まる直前はダボス会議――。これがまた強行日程だったそうですね。
甘利:1泊3日でをやったんですけどね。向こうに居る時間は1日だけでしょう。それで、朝4時前に起きましてね、4時半にホテルを出るわけですよ。ダボスってスイスの田舎町ですから、そんなに泊まるところもないんですよね。だいたい一番近いところがチューリッヒですから、そこのホテルに泊まって、4時半に出て行くわけですよ。朝7時からもう打ち合わせがあって、7時半のセッションから始まると。特に1日のうちに、3つのセッションを入れて、5つのバイ会談をこなしたわけですから。
それでね、道が1本道だから、もし渋滞でもあると大変だあって言うことでですね。昔、経済財政政策担当大臣の大田弘子さんという人が、渋滞で間に合わなくて会議に出られなかったということがあったんですよ。そういうこともあるからって言うんで、「2時間で良いんじゃないの?」って言ったところを2時間半。だから4時半に出てですね、そうしたら早く着きすぎちゃってね(笑)。向こうで暇を持て余してましたけどね。かなり強行軍でしたけど、でも、非常に行って良かったと思います。
角谷:同時に今回、日本の政権はいったい何をやろうとしているのか、相当、世界から注目されたと思いますけれども、実際はどうでしたか?
甘利:ダボス会議って、毎年テーマがこれだっていうのがありますけどね。日本って、いままで主役だったためしがないんです、ここのところ何年も。ところが、今年は日本が主役。それから、もうひとつ驚いたことがあって、「アベノミクス」という言葉が国際語になってたわけなんですよ。もちろん、外国メディアにも「アベノミクス」と載るわけですよ。誰かがマニアックに言っているのかなあと思っていたんですけども、向こうに行きましたらね、「アベノミクス」と言うのがみんな通るわけですよね。だから、本当は総理が行ったらすごかったろうなあと思ったんですけどね。私が行っても準主役ぐらいにはなれましたからね。
角谷:まあ、その分期待値と、それから日本がやろうとしている経済の大きな実験を、いまどう受け止めるかということ。生で甘利さんは体感してきたんだと思いますけど、同時に、世界がいま注目する「アベノミクス」とは一体どんなものなのか、日本でもまだまだ良く分かってないよ、という人たちもいるようですから、今日はそんなところも教わりながら、番組を進行していきたいと思っています。本日は甘利大臣にお話を伺うというとともに、ユーザーの皆さんからの質問だとか、それからご意見などもいただきたいと思います。番組のページのメールフォームからお願いしたいと思います。同時に、またいくつかご紹介できるようでしたら、番組の最後に大臣に質問していきたいと思っています。
さて、甘利大臣は、今回の内閣の中では経済担当の大臣。我々は「財務大臣」とか、「金融担当大臣」とか、こういうふうに思っていますけど、日本の経済を再生する大臣と。これは、もう20年ぐらいその大臣はずーっといても良いぐらいだと思うんですけれども、その重責を今回、甘利さんにということになりました。経産大臣の経験がある甘利さんにとって、日本の産業界、それから経済の再生ってのは、テーマのおひとつだと思いますけれども、どういうことをやろうと思っているのか、どういうことを考えているのか。それから、経済となるとどうしても難しくて分かりにくいんじゃないか。僕たち、どうしても「景気がそんな簡単に上がるんだったら苦労しないよ」と――。
甘利:そうそう。おっしゃる通りですね。
角谷:ですから、そこら辺を今度、甘利さんにですね。また、甘利さんの発言で、株価も円も大変大きく動くということが、実は続いております。ですから甘利さんがここでひとこと言うと、もうマーケットが反応しちゃうんですね。
甘利:こう、“お口チャック”して(笑)――。
角谷:そんな、心配せずにですね、どうかひとつ今日も忌憚なく、いろいろお話いただきたいと思っています。まず、経済再生を最優先とする「危機突破内閣」という安倍内閣の中で、甘利さんは一体どういう仕事をするのか。実は、「経済再生担当」と、「社会保障、税の一体改革担当」、そして「内閣府特命担当大臣の経済、財政対策」という、とにかく、どれもこれも気が抜けない仕事ばかりですけれども。
甘利:肩書きばっかりがいっぱい付いていますけどもね。もちろん、社会保障と税の一体改革というのは、今、有識者の方にやって頂いていますね。そこをしっかりハンドリングする担当大臣をやっています。それ以外に、一番メインはやはり、日本経済をどうやったら再生させることができるか。何が問題かと言いますとね、日本経済はこの15年間ぐらい、デフレっていうことに悩まされているんですよ。
言ってみれば、夏になっても溶けない「根雪」みたいにですね。冬に雪が積もって、太陽が出てきて春がやってきたと。でも、根雪はずっと残ったままだと。この根雪が、いわばデフレなんですよね。デフレがなんで困るかというと、デフレっていうのは今年よりも来年のほうが物価が下がる、いや、悪いことじゃないんじゃないかって言うんですね。でも来年、今買うよりも来年のほうが下がるんだったら、下がったほうがいいなあと。じゃあ、今買わないで来年まで待とうよと。来年になるとまたさらに再来年も下がるわけですよ。じゃあ、今買わないほうが良いんじゃないと。そうやってね、じゃあこの次、この次、この次っていうことになりますと、消費は冷え込んでいきますよね。そうするとどういうことになるかというと、生産が落ちてきます。
角谷:なるほど。
甘利:生産が落ちてくると、企業業績というのは伸びないから、人件費をカットするとか、給料を下げるとか。だから、物の値段だけ下がって、給料がそのままだったら良いのかもしれませんけども、マイナスの連鎖になっていっちゃうわけですね。経済が下に向かってずーっと落ちて行っちゃうわけです。
角谷:物価が安いということは、買い控えどころか、消費者から見るとすれば「まあ、この値段ならいつもは買わないけれども買っておきましょう」というふうにするけど、それはもう小売りのレベルであって――。
甘利:1回だけそれが起きれば良いんだけども、ずーっとそういうことだと、「なにも今買うことないよ」と。来年になったら、もうちょっと待ったほうが良いんじゃないと。その連鎖が経済を縮小させていっちゃうんですね。そうすると日本は、借金の利息払いはずーっと増えていくわけですよ。それから、社会保障費、医療とか年金、国が足し前をするお金は増えていくわけですよ。片方がずーっと継続的に増えていくお金があるのに、入ってくるお金がずーっと小さくなっていっちゃうと持たないわけなんですよ。だから、インフレもあんまりたくさんなっちゃ困るけれども、軽いインフレでずーっと行くとなると、生産が拡大し、給与に跳ね返るようにしていけば、良い方の連鎖になっていくわけですよね。
角谷:なるほど。
甘利:だから、悪い方の連鎖から、良い方の連鎖に変えなければならない。これができないでずっといるんですよ。世界中でデフレから十数年間脱却できない国というのは、いまだないんですよ。日本だけなんです。で、「アベノミクス」というのは何をするのかと言うと、今までいろいろやりました。公共事業をやって需要の追加をして、一時的には良いけれども、公共事業が切れちゃったらまたドーンとね。で、残ったのは借金だけだ、みたいなことになりますから。
「よし」と、思い切って金融政策も大胆にやれと、財政政策も機動的にやりましょうと、それから何より大事なのは、国の予算で経済を動かそうったって、規模はそんなに大きくないわけですよ。ところが、日本のGDPというのは500兆円。これは民間経済で主に動いていますよね。500兆円を動かすようなことをするためには成長戦略、つまり、民間企業がこの分野だったら投資して、こっちの方面へ社業を強化していこうかっていう、そういう魅力的な投資先があったら、みんなお金持っているんですから――。
角谷:継続的な投資先になる可能性。1発じゃダメなんだという――。
甘利:そうなんですよ。公共事業というのは1発勝負ですから、それが終わったら借金だけ残るということになっちゃいますから、民間経済、民間企業が継続的に投資をしていけば、それがどんどん回り出すんですね。そういう、自動的に回っていくようなところの「種火」が公共事業なんですよ。今までは、種火があっても、本体が湿っていて火が付かないから、種火だけ燃え尽きて、また種火で借金ばっかりが残るわけですよ。種火を燃やしたら、本体にもっと何十倍の大きいたき火の山に火が付くようにすると。その、火が付くような環境を作るのが、やっぱり成長戦略なんですよね。
ですから、金融政策というのは、日銀が「これから皆さん、物価は2%ぐらい上がりますよ」と宣言することなんですよ。それに向けて、お金を借りやすくする環境をどんどん整えますよと日銀が宣言すれば、「2%に向かっていくんだってさぁ」、「これはずっと買い控えよりも、今、多少余力がある分は買ったほうが良いかなぁ」、「来年2%上がるからなぁ」っていうような、世の中がそういう規模になってくると、いい方に回り出すわけですね。
角谷:企業であれば内部留保というお金を、まだ使い途が決まらないから取ってあるんですよという――。
甘利:そうです。
角谷:それから、お家にも少し何かまとまったものを…いや、でもまだいいかあと思って貯めてあるタンス預金もあるし、銀行に入っているお金もある。銀行に入れてもちっとも金利が上がらないし、何かに使いたいけど、使う方法がないから寝かしてあるだけですと。それを「あっ、これならやっても良いかな」と思う気持ちにさせていく。ここが大事なんですね。
甘利:そうです。ここが大事です。それに企業がいろいろ投資を始める。研究開発を始めると、いままで世の中になかった魅力的な商品が出てくるわけですよ。そうすると、そういうプラスの連鎖が始まってくると、良い商品、良いサービスはどんどん世の中にデビューしてくるし、そうすると、「今まで欲しくなかったけど、これだったら欲しいなぁ」といって買うという、良い循環になって行くんですね。
角谷:なるほど。じゃあ今は「分かってるけどもうちょっと待とう」と、「来年まで待ってみよう」と。こんなことばっかりだった?
甘利:企業は設備投資をしないし開発投資をしないから、旧態依然とした物しか市場に出ていないし、どんどん魅力的な物やサービスが出てくるという循環になってこない。
角谷:そういう方向に行きたいと、安倍さんも言いました。 甘利さんも言いました。そうしたら株価が上がったり円が動き出したり。つまり、今まではこういう発言だけで、こんなにマーケットが反応することはあまりなかった。まあこのくらいは言うだろうと、マーケットの世界では「織り込み済み」という言葉がありますけども、このくらいで揺さぶられるぐらいではダメで、本物が来ないとマーケットは動かないはずなのに、今回は非常に動き出しましたね。これはやっぱり可能性があるという空気が出始めたということですか?
甘利:今までは、財政政策は財政政策で単発。それから成長戦略も、投資する方から見て「コレ本当かなぁ」と、「政府はどのくらいやる気なのかなあ」と。「このプラン本当に実行に移す気?」というような疑心暗鬼で見ているから、お金が動かないでしょ。今度は、初めて日銀と共同声明をした。「物価上昇率2%」という目標に向かって共同声明したということは史上初めてです。
なんで今までやらなかったのって話になるかもしれませんが、今までは「2%を目標」って明確にしないで、まあ2%ちょっと無理だから「当面は1%、それも目途ね」っていう姿勢ですよ、日銀も。政府のほうも、それほど決意を込めてやっている感じではないと。今度は日銀が「2%を目標」としたわけですから、初めて。そして政府も、「俺たちにできることなら何だってやるぜ」って言って成長戦略を作る。
しかも、その財政も、行け行けドンドンの単なるバラ撒きではなく、種火は付けますよ、でも、いつまでも野放図にやりませんよと。その次は本体を、湿っているんだったらちゃんと乾かしますよと。火が付きやすいようにしますよと。多少、油も撒いてっていうふうにね。本体に火がついて行くようなプランをキチっと出しているわけなんですよね。だから、マーケットというか市場が、「今度は本物だなと、けっこうやるかもよ」ということで、期待値がずっと上がっていくわけですよ。
角谷:なるほど。
甘利:為替がいくらが良いかなんていうのは私は言っちゃいけないんですよ。またすぐ上がったり下がったりするから、怒られちゃうから言いませんが。株価は見事に反応して、このひと月で2000円くらい上がったんですよ。2000円上がるとどういうことになるかというと、日本中の会社も、よその会社の株を持っているわけですよ。銀行だって持っているわけですよ。持っている株の資産が、日経平均株価9000円から11000円に上がっただけで、いくら含み益が増えたかというと、40兆円増えているんですよ。
ということは、例えば企業がお金を借りるのに、資産として株がいくらあるか、それといくら借りれるかと。その余力もその資産がいきなり、事業会社で言えば17、8兆円、金融機関ないし銀行で言えば20兆円ちょっと。両方合わせて40兆円くらい評価が増えちゃったわけですよ。それだけ体力が、何もしないうちに体力が上がっちゃったという話ですよ。
角谷:問題は、たまに上がるだけじゃダメで、それが定着しないとダメだということになりますね。
甘利:そうです、そうです。
角谷:そこで、策が必要になると。そこは、いろいろこれから始まるんでしょうけどれも、ちょっとそれは待っておいてください。実はですね、ニコニコ動画でいろいろアンケートを取りました。およそ13万人の方にアンケートを取りました。その結果がここ(番組中のフリップ)に出ましたね。見えるかな? こういう感じですね。はい、寄ってください。
「あなたは安倍内閣を支持しますか」ということで、昨日(2013年1月31日)、やりまして、13万人の方、そのうち56.8%の方、約7万4,000人が安倍内閣支持という数字が出ました。これは、ニコニコ動画のサイトにも全部データが出ていますから、そちらのほうもぜひ後で見ていただけたら良いと思います。「まだ分からない」「どちらともいえない」というのが31.6%、「支持しない」11.6%という数字が出ました。今の段階では、メディアの世論調査なども同様の数字が出始めていますけれども、ニコニコ動画でも「支持する」が56.8%。ちょっとメディアよりは少し、まだ低い数字と言ってもいいぐらいかなあ。だいたい60%ぐらい(の内閣支持率)がメディアでは出ていますから、まだまだ慎重ですけれども。経済政策が軸になっているっていうところが、難しくて分からないのかなあと。こういうふうなことになっているのかもしれませんけどもね。
さて、続いてちょっとこれも、甘利大臣に見ていただきたいと思うんですけれども、続いては世論調査の後、続けて調べたものですけども、こちらです。「安倍内閣で一番評価している点」はどこかと。ここもハッキリと出ています。「日本経済の建て直し」というところに期待値と、それから、評価があると言っていいでしょうね。57.0%という数字が出ています。「外交・安全保障の強化」が21.0%、そのほか「東日本大震災からの復興」が7.5%、「教育の再生」が4.5%、「TPPへの参加」が2.8%、「その他」が7.2%と、こういう数字が出ています。ですから、やっぱり何といっても経済再生、経済の建て直しというところに、ものすごい期待があるということですけれども、これはもうまさに大臣の思惑通りの結果が、国民からも聞こえてきているという感じはしますか?
甘利:やっぱり日本って経済でしょう。日本の外交のプレゼンス、存在感というのは、経済大国じゃなくなってしまったら、やっぱりみんな一目二目置かないでしょう。やっぱり日本は専守防衛の国ですしね、外交も大人の外交をする国ですし、経済の力があって、日本の発言には一目置こうということになるでしょうから、その経済の力が失われてしまったら、すべての力が失われてしまうと思うんですよね。中国に抜かれたとはいえ、いまだに世界のナンバー3の経済大国です。ただ問題は、ここ何年も経済規模が大きくなっていないということなんですよ。
角谷:ああ、なるほど。
甘利:ここ十数年で見て、よその国はどんな国だって多分、経済規模が1.5~1.6倍にはなっているはずですよ。もっとかな。みんな先進国でね。日本だけほとんど変わらないんです。そのほとんど変わらない一番の原因が、デフレから脱却していないからなんですよ。
角谷:なるほど。そうしますとね、3年半の民主党政権の時には、消費税という大きなテーマが途中から出てきました。これに対しては、消費税は必要だということでは、自民党も公明党も、いわゆる3党合意というので協力することにしたと。だけど、経済が良くならなきゃダメじゃないかということは、逆に自民党のほうが言っていたような気がしまして、民主党は、消費税を上げますということだけにエネルギーを使い果たしてしまって、同時に景気も上げなきゃ、消費税だけでは景気が冷え込んでしまうんじゃないかと、こういう不安が民主党の政策の中には絶えずあったような気がするんですけど、そこから経済を大きく前進させることで、消費税が負担感としてなくなってくるというのが、やっぱりひとつの戦略なんでしょうかね。
甘利:消費税に正面から民主党が向かい合ってくれたっていうことはありがたいことです。やっぱり政治家として、イヤなことでも勉強すればするだけ、これは消費税引き上げをを避けて通れないということはみんな分かるんですよ。国民には、耳あたりの良いことだけ言って凌ごうという気持ちは、当然、政治家のどこかにあるにしても、やっぱり真面目に考えるとこれはどうもならないです。社会保障を借金で支えているんですから。赤字国債を出して社会保障を、年金、医療、介護を支えるなんていつまでも続きませんから。
それに、消費税を引き上げて、財政を再建するっていう意思を示さないと、日本が発行している国債の信用が落ちて、利息をたんと付けないと売れなくなってしまうわけですよ。利息をたくさんつけないと売れないということは、利払い費はそれだけ上がるから、結局、国民の税金をそっちへみんな使うということになって、そういう連鎖になっちゃうんですね。ちゃんと財政再建もやりますし、社会保障を赤字国債でまかなうなんてことはしませんよという宣言をするだけで、日本の国債の評価が高くなって、少ない利息で売れるようになるわけですね。利払い費が少なくて済むと。
同時に、普通の状態で消費税を上げたら、消費にはプレッシャーがかかると。重圧がかかっちゃうわけですね。圧力がかかっちゃって。ところが景気を良くしていくという合わせ技でやらなければならない。できれば、ちょっとタイムラグがあったほうが良い、先に景気を上げておいて、その後で消費税を引き上げるという、少し時間差があったほうが良いと思うんです。
角谷:一挙に(景気が)冷え込んだりする可能性がありますからね。
甘利:そうです。ですから、補正予算で10兆円を超える国費を投じて、戦後で言えば2番目なのかな。リーマンショックのときの大型補正…あれはまさに世界危機でしたけども。それに次ぐくらいの規模で景気対策をやったというのはそこなんですよ。景気対策をやって景気を引き上げる、そして成長戦略を出して民間需要に、種火から本体に火をつけていく。そういう循環を起こしておいて、地合いを良くして行く中で、これなら3%、そして5%(消費税を)上げる体力はなんとかなるよ、という時間軸で持って行かなきゃいけないと思うんですね。
角谷:当然、今おっしゃられたように順番が大事で、先に消費税上がっちゃいましたじゃあ、またちょっと、家の経済はもたないと言うことで、家庭も財布を閉じてしまうと。となると、その不安感が払拭されるとマーケットも反応するということは、変な言い方ですけども、安倍内閣はスタートした段階で、期待だけではなくて信用されているからマーケットはこうやって動くんですかね?
甘利:だと思います。安倍総理は野党の頃から、選挙戦で何を訴えたかというと、我々が政権を取ったら、特に総裁選では、自分が総理になったら日本経済を立て直す本部を内閣の中に作りますと。これを最重要課題として取り組んでいますと宣言したわけですよ。その当事者が(自民党)総裁になり、総理になったと。それはやっぱり、あれだけの決意を込めて選挙戦で、そして総裁選で言ったんだから、これはきっとやってくれると思った。それから、内閣にそういう(要職を)何度も経験している人たちを当てはめていきました。
角谷:ベテランの閣僚揃いですよね。
甘利:新鮮味はなかったかもしれませんけれども。
角谷:オールスターという見方もできますからね。
甘利:その分野でけっこう苦労してきた人たちを配置して、要するに、これでダメならもうダメだぞという「背水の陣」で臨んだと思うんですよね。事実、今までにないような、安倍総理は「レジュームチェンジ」って言ってますけどね。まったく、この旧体制が変わるぐらいの画期的な対応をしていくよと。ひとつひとつの政策、金融政策も財政政策も、そして成長戦略も、ひとつひとつが今までにないような魅力を持っていると。それが3つ全部あわせて行きますよと。バラバラじゃなくて、三位一体で。
「三本の矢」というのは、例の毛利元就の故事に基づく話ですよね。せがれを集めて1本ずつ矢を渡して、折ってみろって言ったらすぐ折れたけど、3本まとめて折ってみろって言ったら折れなかったと。(フリップを示されて)あ、そうそうこれこれ。ひとつひとつが大胆な政策なんですが、その「大胆×3」ですから、これで日本の苦境が脱せなかったら、もう打つ手はないぞというくらいの背水の陣でやっていると。この思いが、決意がマーケット、市場に伝わって好反応を示したんだと思いますけどもね。
角谷:となると、不退転の覚悟、本気でやるぞという覚悟と、それから、もうここは逃げませんと。これはもう最後の砦で、専門家をすべて閣僚として配置しましたと。これでやってダメだったらもうダメですというところの本気度を見せたことが、マーケットってだいたい発表ものがあったのなら「それは織り込み済みです」で終わってしまう。でもそれが結構、継続したということが、やっぱり変わるかもしれないという期待値ですよね。
甘利:単発に出るニュースには反応しても、それが終わると賞味期限が切れるとすぐ落ちるんですよ。ところが、連続的に2の矢3の矢を射っていっていますから、良いところへ定着して行くんですよね。そこがまた基準になるものだから、元のところの基準で、上がってまた落ちるんじゃなくて、そこが基準になって定着していくそこからまた一段上がっていくと。そういう地合いができつつあると思うんです。
角谷:まあ、総理の言うそれが次元の違うものだっていうことになってきたんですかね。ただ、まだ実体は伴いません。今、補正予算の審議をやっている最中。本予算もこの後、議論がされるわけですけども、今回は参議院選挙の夏になりますから、国会会期の延長がなかなかできない、そういう意味では国会は窮屈だから、どんどんこれを形にしていかないと、国民はやっぱり「最初は良かったけど…」っていう不安がある。
そこで、この3本の矢がある。3本の矢が、どれもこれもひとつずつが走れば強いものになって行くんだというのが、今までとは違うところなんだと、こういうことなんだと思いますけども。ただ、いっぽうで、もう2つ良く分からないところがあります。ひとつは、補正予算がいわゆる15カ月予算なんだと。【重複略】今、審議して2月の半ばぐらいに挙がったとして、年度末は3月ですから、これはもう慌てて10兆円を1カ月半ぐらいで使い切ろうという話なんですかね、これは?
甘利:いやいや、15カ月予算というのは、1年って12カ月でしょ。だから普通の年度予算というのは12カ月なんですね。その手前の3月2月1月というのは、だいたい前の予算をみんな使い切っちゃって息切れする頃ですね。そこをしっかり埋めていくって言うのが15カ月という意味で、本当はまだ成立していないから15カ月じゃないんですよ。補正予算で、4月より前から埋めていくっていう意味なんですね。
大事なことは、この補正予算は、今、角谷さんがおっしゃったように、3月いっぱいで使い切ろうなんて、これ10兆円、事業規模で20兆円を超えるものを使い切ろうなんてそんな乱暴なことではないんです。基金にして少しつなげていけるようにいろいろ工夫はしています。その先に契約をして、お金は後からというようないろんな工夫をしてありますから、だいたい年度末から新年度の4、5、6月あたりに効くように補正予算というのは配置されています。それが終わったら、新年度予算がつなぎ目なく、シームレスにつながっていくようにすると。そこで大事なことは、補正予算で掲げている予算のテーマを新年度予算も引き継いでつながっていくっていうことです。
角谷:いままで単年度予算という考え方でして、「使い切らなきゃ」なんていう言い方がよくありました。ところがそうじゃなくて、こういうことで資金ショートがあったり、これはこのお金あのお金、じゃなくて、ずーっと継続してお金がまわるようにする仕組みを作っていきさえすれば、単年度プラス3カ月という補正を組んでいれば、ちゃんと、足りなくなることがないし、同時に、「あれは何だったっけ」ということにならないと、ちゃんと引き継がれるということが大事なんだと。
甘利:繋ぎ目がスムーズに、そのままずーっと新年度予算に入っていってですね、政策効果がそのままつながっていくようにするんですね。
角谷:それでネットの世論調査のデータに戻りますけれども、安倍総理が掲げる、経済再生のための、先ほどの3本の矢、アベノミクスはどんなものだと理解しているかという調査をしました。そうしましたらいろんな答えが出てきましたけれども、設問に、これじゃないか、というふうにみんな答えたんですけれども、ちょっとまだ誤解している方も多いんですかね。それから、「わからない」が4割近くあるということですね。
甘利:そうですね。要するに、アベノミクスというのは、金融政策と財政政策とそれから経済成長戦略、3つを三位一体で、相乗効果が出るように発動していくというやり方なんですね。
角谷:ですからここらへんの相乗効果、どれかひとつが走ってもいけないし、足りなくてもいけないと。その矢をそれぞれの閣僚が一緒に進めていくんだと。つまり、「いま私のところは関係ありませんから」という閣僚はない。全部がこの日本の経済再生のために、「うちの所管だったら何ができるか」、これを全部目配せするのが甘利さんの仕事ってことになるわけですか。
甘利:うん、それで、これから一番大事なのは何かと言うと、成長戦略なんですよ。よく民主党さんも言ってますけどもね、成長戦略、数多策定したけどもたいして効果がなかったじゃないかと。しかも、いま掲げている安倍内閣の成長戦略のいくつかの柱を見ればですね、「おれたちもあれ出したよ、ライフサイエンスとかさ。あるいは新エネとかさ」ということになるんですね。確かに、個別メニューで言えば似たようなものって結構出てくるんですね。大事なことは、プランを組んで、それが実際に実施に移すまで絵図が描けるかどうかっていうことなんです。
つまり、民間に向かってですよ、「こっちのほうがいいらしいよ」って言うだけだと、評論家で終わっちゃうわけですよ。「ああそう」で終わっちゃうわけですよ。そうじゃなくて、大事なことは、日本が抱えてる社会課題を分析しますね。その社会課題を解決された、10年でも20年でもいいですよ、解決された将来像を見ますね。それを戦略目標にして、そこに達するまでにはどういうことをやっていけばいいのかというをロードマップ上にきちんと落とし込んでいくわけですよ。
たとえば、日本が直面している課題というのは、たとえばですよ、いくつかありますが、少子高齢化。このままいくと、労働力人口が減っていって、社会保障で支えられてる人口ばっかりになっちゃうと。「放っておきゃ日本というのは衰退する国だよね」ってなりますよ。ところが、じゃあ、高齢者が増えていっても活力が落ちない社会ってないんだろうかと。それは、健康長寿をうんと伸ばせるような社会で、現役世代にね、いまよりも長い間いられて。そして、寝たきりの人がうんと少なくて。経済活力もある、社会活力もある。高齢化社会であっても。そういうのをあらまほしき姿と設定したら、それを戦略目標にしてですね、そこまで到達するためにはどういう課題があるかと。たとえば、革新的な創薬、薬がどんどん出てくるようにしたらいいじゃないかと。
あるいは、医療機器だってですね、どんどん日本から新しいものが出ていく。あるいは、ロボットでもですね、介護ロボットとか、あるいは、自分の日常活動を支えてくれるようなロボットが出てきたらいいとか、いろんなのがあるわけですね。そのためには、医療機器がなぜ日本から生まれないか、ここには薬と同じ縛りがかかっていると、これをどう規制緩和したらいいかとか、そういう課題がだーっと出てくるわけですよ。
そうすると、そこに向けて国は、基礎研究としてこういう分野にお金を投じたらいい、というようなことが時間軸のなかで全部課題が生まれてくるわけですね。規制緩和、国がやるべき研究開発、企業が参加すべき環境整備、というようなことが出てきて、向かうべき戦略目標に向かっての絵図ができるわけです。そういうのをいくつか戦略目標に設定して、それに向かってロードマップを描くと、そこに国をどう関与していくんだと。
特に規制緩和って大事ですよ。国にしかできない。民間企業ができることは民間に任せればいいんですよ。でも、国じゃなきゃできないことってあるわけですよ。規制緩和なんか特にそうですよね。民間じゃできませんから。そういうことをロードマップ上にしっかり配置できるようにしていくと。そこに国が意思表示をすると、これが大事なんです。あるいはこれから日本が向かうべき、直面すべき課題っていうのは、原発が止まってると。これも、安全なものは再稼働させなきゃいけないんですけど。それにしても、クリーンで、低コストで、安定的なエネルギーを供給できる社会はどういうふうにしたらいいか、という解決された図を想定してですね、2030年、そこにいくまでにはどういう技術開発が必要だとか、どういう環境整備が必要だとか、ロードマップ上に配置していって、国がやるべきこと、民間がやるべきこと、これをはっきり浮き上がらせることが必要なんですよね。
角谷:よく分かりますよ。でもね、過去も自民党はずいぶんそういうことをやりました。規制緩和とか、特区構想もずいぶん自民党から出てきました。でも、ちょっと役所の壁に阻まれてませんでしたかね。
甘利:それで、おっしゃるように、どこまで抵抗勢力を突破できる態勢ができるかと。ここで大事なのはね、「産業競争力会議」っていうところに、気鋭の経済人がいっぱい入ってるわけですよ。これはすごいメンバーですよ。そこで問題点があぶり出されたら、たとえば規制緩和、規制改革、いくつか出てきますよね。この産業競争力会議の上に、「日本経済再生本部」という、閣僚で構成される部署があるんです。親会みたいなものですね。
角谷:(フリップを示して)こういうことになりますか。
甘利:そうですそうです。ここのね、産業競争力会議、ここが民間有志者が入っていてですね、いろんな問題提起をします。「こういうのを解決しなきゃいけない」「こういう規制緩和が必要だ」、これが親会の再生本部に上がります。ここは総理大臣が指揮をとって、全閣僚が入っています。ここでの問題課題が、総理から各大臣に指示がいきます。もう既に第一弾が出てますよ、指示が。各大臣はそれを解決した姿でまた持ってこなきゃいけないことになってるんです。
同時にですね、産業競争力会議は、こっちにね、規制改革会議がある。規制改革会議の議長は、産業競争会議のメンバーに入ってます。それから、総合科学技術会議、ここのメンバーもここに入れる予定です。こうやって、規制緩和を議論するところの人がここに入って議論します。基礎的研究を、国がやるべきね、上流の研究開発、国がどこを使ってどう先導させるかっていうのも、このメンバーもここに入ってきます。つまり、ここが司令塔になっていろんな指示がいくようになってるんです。その指示は総理大臣から出るようにしているんです。こういう設計図にしてありますから、実効性が高いんです。
角谷:分かった。これは民主党が昔よく言った「政治主導」ってやつが本当に動き出すってことですね。それから、「2位じゃダメなんですか」っていう閣僚がいましたけど、今回、所信表明でも総理はですね、「世界一の」っていう言葉が出ましたね。つまり、やるなら政治がゴーサインを出すから全部突破していけと、こういうことを指示した。
甘利:はい。再生本部の事務スタッフもそれこそね、1週間かそこらでスタッフを集めました。11省庁から精鋭が来ましたよ。なんでそんな短時間に精鋭が集まったかっていうと、「ここが日本の司令塔になる」っていうね、役人はみんな本能で感じてるんですよ。だからここのメンバーに優秀なのを送らないと、自分が蚊帳の外になるということで、ワッとみんな送ってきたわけですよ。ここが司令塔になってですね、日本経済再生本部事務局、60人ぐらい今いますかね、ここが11省庁から集まったメンバーで、司令塔になってですね、事務の司令塔ですよ、いろいろ動かしていくと。この態勢がとれたんですね。
角谷:はい。となってきますとね、いままでとはわけが違うということは段々、規模だとか、本気度がいろんなところに伝わってきてると、それは分かりました。マーケットもそれで反応した。どうやら霞ヶ関も、「これは本気だぞ」と思って、人もちゃんと出すようになってきた。こうなると、民主党と比較する必要はありませんけど、ちょっとその間、失われた何年間を復活させるための作業が増えると思うんですけど。
さて、そこで僕はちょっとうがった見方を申し訳ないけれども、過去自民党はですね、そういうふうにして成長戦略をやったときには、いわゆる「勝ち組、負け組」を生んでしまったりですね、つまり、いい人は良くなったと。だけどその分うまくセーフティネットがきかなかったり、派遣切りだとかいろんな問題が起きて、雇用自体が不安定になってしまったり。いい人は良くなりました。でもその分、普通で良かったのに、普通でいられなくなっちゃった人も増えちゃった。この勝ち組負け組の問題がずっと、社会のいろんな場所にいま尾を引いているような気がします。そういうものはどういうふうに見ていきますか。
甘利:そこも大事なところで、実はもう総理指示がありましてね。まずいま、失業率でみましてもね、若い世代の失業率が高いですよね。これはあの、景気が悪いなかで、企業の終身雇用の名残りで、入った人が、年配者がずっと辞めないでいると、その分若い人が入れないというようなこともあるんですが、実はそれをおいといても、若い人がなかなか就職をできないっていう状況がある。本当はですよ、少子化ですから、労働力は足りなくなるんですよ、これから。
ところが現状では、景気が停滞しているために、あるいは企業の競争力が落ちているために、なるべく非正規労働で、この景気変動を乗り切りたいと。つまり、コアな部分は正規雇用だけども、景気が良くなってきた、季節変動で労働力が必要なときにはパートタイマーで済ませよう、っていうことになってきてしまってるんです。本来の、企業の競争力が落ちてるから。企業に自信があれば正規でどんどん取ってくんですよ。ところが、抱えきれないっていうのがあるから。だから、競争力を企業につける、景気を良くするっていうことが根本に必要です。
それとですね、ミスマッチっていうのもありますから。若者に対して、企業はどういうスキルがあれば取るんだっていうことを、もっと精査につめなきゃいけないんです。そこで、仲介役をやっている人たちを集めてですね、女性と若者の雇用を拡大していく、大作戦みたいなものを、総理指示でこれもやるんです。そこで、仲介役になっている方々に集まっていただいてね、いまの日本社会に、女性がフルに参画できない、若者が参画できない、それはどういうところに課題があるのかっていうことの洗い出しを、今月中にスタートします。
角谷:ということは、雇用の確保、それから、若い人たちの、いま就活でね、いろいろ悩んでいる人もいるでしょう。その人たちのいろんな問題を吸い上げる、また、そこから先の可能性やチャンスを摘み取らないように。まさに、大臣がおっしゃったように、終身雇用に慣れてしまって。だから僕はね、就職だとか、いろんな新しい会社へのマッチング、それから大学と企業の関係、いろんなものも含めてね、いままでは終身雇用を前提としてたり、それから転職にすごく否定的だったり、社会が。それから、第2新卒って言うんでしょうか、1回会社に勤めたけど上手くいかなくて辞めた人たちを、すごく企業が再採用するのを嫌がったり。これ、学生たちもいろいろ考えなきゃいけないけれども、企業側の採用する人たちにも、やっぱりもう少し政府も言ってくれないと困るんじゃないですかね。
甘利:そこをこれから考えようと思っていて。ひとつはもう既に、これから決まっていることは、給料を上げたり雇用を増やしたりしたところには税の恩典をつけますっていう税制改正をいま政府は出すんですよ。これ初めての税制なんですけどね。それと、これはあの、業績が良くなってきた企業からでいいと思うんですけど、業績が良くなったらいきなりベアっていうところまでいかなくても、一時金は増やしたらどうですかっていうことをですね、何らかのタイミングで政府から産業界に働きかけをしたほうがいいんじゃないかなと。まだ構想の段階ですけどもね。
角谷:いまね、サラリーマンの人もたくさん見てらっしゃると思うけれども、一応、世の中には春闘というのが始まっていてね、労使間交渉っていうのがあるんですけど。一方で、会社の、リストラさせたいけど上手くできないから、何か辞めさせるための、部屋のようなものを用意したなんていう議論が始まっていてね、それにいま厚労省が調査に入っているとか、こんな話もあると。結局、成長しようとしている矢先で、そういう雇用の不安定や、何かこう企業側が荒っぽいことをやっているっていうのも、そこも産業界に対して政府はやっぱり目配せしなきゃいけないんじゃないですかね。
甘利:産業界はですね、内部留保があるわけですよ。内部留保は、ここぞというタイミングのときに投資をしたいと考えているわけですね、業績を伸ばすための。その投資、「ここだ」っていう環境を作ってあげるっていうのが、いまの我々の仕事ですね。それから同時に、業績が上がったらそれを社員とかですね、あるいは下請け企業に還元してくださいということを要請していかなきゃならんと思うんです。ただ、春闘でですね、全員揃ってっていったら、体力に差がありますし、良くなってくる順番がありますから、何て言うんですかね、良くなってきた企業、余力のある企業から順番にね、何らかの対応をしてくださいっていう要請は考えていかなきゃと思ってますよ。
角谷:そういうところも、経産大臣経験の甘利さんならね、いろんなことを良く分かってらっしゃると思うんでね。ぜひそこらへんはね、若い人の就職、これも大事です。それから、いま働いている人たちの不安、これもやっぱり考えてあげたい。いろんなこともやっぱり目配せしてもらいたいと思います。でね、ふたつだけ僕ちょっと伺います。ひとつはですね、TPPの問題ですけどもね。日米首脳会談も、今月決まったようです。オバマさんと安倍さんがどういう話になるのか、TPPがひとつ焦点になるのかなと思いますけど。これはどんなふうに思っておけばいいですか。
甘利:TPPはですね、私ども自民党の公約では、その、「例外なき関税撤廃を前提にする」、その前提がある限り交渉には入りませんということを言っているわけなんですね。ということは、その前提条件が変わるかどうかということだと思うんです。で、アメリカだってですね、TPPというのは目的じゃないんです。手段なんです。目的は何かっていうと、APEC、アジア太平洋地域の、アジア太平洋地域ワイドのFTAを作りたいんですよね。
アメリカは、私5年前にね、CSIS、戦略研究所のメンバーが日本に、私が経産大臣のときに来ました。ハムレさんという、あの人は国防副長官だったかな、やられた方ですよ。その人が所長になっていて。当時は小泉進次郎君もそこに留学していてそのメンバーでしてね、一緒に来ましたね。彼らに言ったのは、20世紀のアメリカっていうのは大西洋国家でしたけれど、21世紀は太平洋国家にならないとアメリカの存在も希薄になりますよと言ったらね、「その通りだ、我が意を得たり」って彼が言ったわけですよ。そのあと、オバマ大統領がアメリカは太平洋国家を目指すと、21世紀ね、言ったわけですよ。別に私が言ったから言ったわけではないと思いますけど。
東アジアが世界の牽引力になってきますから、そこのメンバーに入んなきゃいけないんですよ。で、日本はもともとアジアのメンバーですよ。正会員ですよ。正会員の紹介がないと準会員にはなれませんよ、アメリカは。だからアメリカだって、日本とうまくやりながらアジア太平洋の正会員になっていきたいはずですよ。そこは、日本がうまくリードしてやると。そうするとアメリカだって、かたくなに「こういう前提条件は一歩も譲らない」なんていうことじゃね、アメリカ自身が立ち行かなくなるということを、アメリカに日本が指摘しなきゃだめだと思うんですよ。
角谷:なるほど。となると、まだまだ、これは国内議論もあるし、また自民党内もまだまだいろいろ議論があるようですから、TPPはまだまだ、議論としては継続中の議論だと思っていいんですかね。
甘利:うん、ただその、日本がですね、アメリカと話をできる突破口は見つけることはできると思うんですけどもね。
角谷:うんうん。つまりそれは、今度は我が国としての条件とか、可能性とか、ここは譲るここは譲れない、こういうものが出てくるってことですかね。
甘利:そう、どこだって、だってアメリカだって砂糖なんて譲れませんよ。それに、オーストラリアと乳製品で勝負したら負けちゃいますよ、アメリカね。いろんな、やっぱりね、自分が譲りたくないものはありますよ。自動車だって、アメリカは日本に対して譲りたくないんですから。だから、みんな持っていながら、建前は例外なき関税撤廃が前提条件である、なんか言ってるんですけど、本当は違うだろっていう話ですよね。
角谷:つまり、本音ベースで話すためには、こちらもそこには入っていかないわけにはいかないということもあるということですかね。
甘利:前提条件をね、前提条件が一歩も変わらないんだったら、やっぱり公約上なかなか入れませんよ。だけど前提条件をね、崩せる要素っていうのはいっぱいあるんじゃないかと思うんですけどね。
角谷:なるほどねー。そう考えますと、そこらへんはだんだん各論に入ってくると、それぞれの国の本音や事情が出てくると、そこまでいけばものごとは少し変わってくる可能性があるというふうに、いま甘利さんは見てらっしゃるということでしょうかね。
甘利:そうですね。
角谷:ともかく、経済再生といいますとテーマがあまりにも広いと。それこそTPPからはじまって、産業界の問題、雇用の問題、それから先ほどはエネルギー政策の話も少し出ました。エネルギー政策はいまのままだと、使用者の負担増は間違いなさそうですね。これをどうしていくかも、これからテーマになるでしょうし、まさにエネルギー政策は甘利さんのご専門中のご専門であるということを考えますと、これは多岐にわたるけれども、この問題はいま国会で議論がスタートしたばっかりだ、野党からもいろいろあるでしょう、でも中身は分かっていかないと意味がありませんから、今後もこういう番組継続したいんですけど、いいでしょうか。
甘利:いいですよ、結構ですよ。はい。
角谷:まあ、甘利大臣だけでなくて、いろいろ関係大臣いますし。
甘利:ええ、うちの副大臣も詳しいですしね。
角谷:はい。そういう形でもう、どんどん、「あれはどうなってるの」「これはどうするの」と、「これからこういう問題はないのですか」と、まさに規制緩和なんていったら、興味ある人はいっぱいいると思うので。どうかひとつ今後とも、いろいろお出ましいただいてですね、教えていただきたいと思います。
甘利:はい。分かりました。
角谷:今日はちょっと時間がなくてですね、まだまだ聞きたいこと本当はいっぱいあるんです。だってね、順番が大事だって言ったら、景気が良くなってから消費税が上がらないとやっぱり冷え込んじゃうっていうのは甘利さんからありました。これちょっと順番がズレちゃったりするとね、逆に安倍さん、選挙中から少し発言してましたけど、消費税実施延期なんてことも考えられるんですかね。
甘利:あの、消費税、そういうことにならないように景気回復には万全を尽くす、死力を尽くすということが大事だと思います。
角谷:うんうん。いまの段階では、それをスタートしたところだから、延期を前提にすることはないかもしれませんけど、ただ、いろいろ状況が変わっていく、変化に対応する内閣の準備はできてると、そういうふうに思っていいでしょうかね。
甘利:はい。
角谷:はい。ということで、今日は甘利大臣にですね、アベノミクス、それからいま政府がどういったものに手をつけて、何を実現していこうかというふうな、まず今日は入り口の部分でしたね。
甘利:はい、そうですね。
角谷:これからもいろいろなことで、この中身については議論が深まっていくものだと思います。また各論に入ってきたら、それぞれの大臣にもお越しいただいて、いろいろお話伺っていきたいと思います。甘利大臣、今日はありがとうございました。
甘利:どうもありがとうございました。
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日本再生会議 西村康稔内閣府副大臣(2013年2月26日生放送)全文書き起こし
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