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「吉野家大爆笑事件」私の吃音人生史に残る大事件の話 [コラム]

2016/06/24 20:00 投稿

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私は吉野家がトラウマです。

吉野家がトラウマといっても、吉野家の食材や料理、店員の対応に問題があってトラウマになったわけではありません。吉野家で私が起こしたとある事件のせいで、私はトラウマで吉野家に入れなくなりました。

それは今から12年前、私がピチピチの男子中学生だったときのことです。夏休みのある日、塾の夏期講習でのお昼休憩のときに事件は起こりました。

お弁当を忘れたことが、すべてのはじまり

夏期講習は朝9時から夜7時までありました。あいだに1時間のお昼休憩があり、そこで友だちと一緒に昼食を食べます。

私はいつも母が作ったお弁当を持ってきて、友だちはコンビニ飯や外食店のテイクアウトを持ち寄って食べていました。

しかしその日、私はお弁当を家に忘れてきてしまいました。なので私も、友だちと一緒にコンビニに食事を買いに行こうとしました。すると友だちの1人が

「せっかくだからみんなで吉野家に行こうぜ!」

と言いました。吉野家、この名前は聞いたことがあるぞ。たしか牛丼屋だ…!というのも、私は吉野家に入ったことがありませんでした。

厳しい家庭に育った私は、外食をあまりさせてもらえず、吉野家のような牛丼ファーストフードを食べたことがなかったのです。

私はワクワクしていました。

お弁当を忘れたことを母に怒られる恐怖はどこかへすっ飛び、友だちと一緒に吉野家に行ける、吉野家の牛丼を食べられる、そう考えるだけでワクワクドキドキが止まりませんでした。

ただ、私には1つだけ不安な事がありました。

(ちゃんと注文できるかな...)

そして、この不安は現実のものとなるのです。

いざ、吉野家

塾から歩いて5分くらいのところに吉野家はありました。夏の太陽が照りつける中、すこし歩くだけでも汗が出てきます。私たちは急いで店内に入りました。

吉野家の店内は、私にとって新世界でした。カウンター席しかない店内、壁の上の方に表示されている牛丼メニュー、会話をすることなく黙々と牛丼を食べるお客さんたち...。そうか、これが吉野家なのか!!!

お店に入ったときはお昼どきでしたが、私たちはカウンター席にすぐ座ることができました。

涼しい店内で汗をひかせながら、私は"あるもの"を待っていました。待っているあいだ、私は表示されている牛丼メニューを見ながら、何を注文しようか考えていました。

しかし、いくら待っても"あるもの"は来ません。そして、友だちの1人が

「頼むもの決まったー?」

と言いました。いやいやいや、待てまて、そう焦るな。まだ来てないじゃないか、飲食店では必ずある"手元で見れるメニュー表"が。

「決まったよー。」

他の友だちが言いました。このとき、私は気づいてしまったのです。

(吉野家には手元で見れるメニュー表が…ないっ…!!!)

全身から汗がドバッと吹き出し、心臓が大きく脈打ちはじめるのがわかりました。

そう、このとき入った吉野家には、手元で見れるメニュー表がなかったのです。

吉野家でむかえてしまった、絶体絶命のピンチ

手元で見れるメニュー表がないとなぜ困るのか。これを説明するために、少し私の話をさせてください。

私は小さい頃から吃音(きつおん)持ち、俗にいう「どもり」です。吃音持ちの私は、"ふつうに"しゃべることが難しいのです。

吃音には主に連発タイプ難発タイプの2つがあります。「あああああありがとう」というように同じ言葉を繰り返してしまうのが連発タイプ。「……っありがとう」というように言葉が詰まってしまうのが難発タイプです。

当時の私は、連発タイプと難発タイプのどちらも症状としてあらわれていました。いじめや嫌われるのが怖くて、学校や塾では色々な方法を使って吃音を隠していました。

友だちに吃音がバレてしまうかもしれない...。いつかはこのタイミングが来ると思っていましたが、それが学校や塾ではなく吉野家だとは、私は夢にも思っていませんでした。

牛丼並盛りを注文する、ただそれだけのこと

私は焦っていました。手元にメニュー表があれば、指さし注文ができました。指さし注文とは、メニューに書かれている料理を指さしながら「これ」というやり方です。この方法だとわりと楽に注文できます。

しかし今、私の手元にメニュー表はありません。壁に表示されているメニューは遠く、指さしをしてもどれのことか相手に伝わらない距離にあります。

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