12月16日(土)に第4回文化レクが開催されました。この日は文化レクとインレクのダブルヘッダーで企画が組まれています。インレクについては次の記事でレポートします。

 文楽の鑑賞は私自身初めてです。国立劇場では10名以上の予約だと団体割引が適用になり、もちろん席も予め押さえることが可能に。第2回文化レク(寄席)の時もレポートしましたが、法人機能がこうした面で活用できるのは良いことですね。文楽のような伝統芸能の鑑賞には「ドレスコードがあるのかな!?」と思って事前に検索をかけたのは誰にも言えない秘密です。
 この日は週間予報では雨模様の線もあったようですが、会員さんにとてつもない「晴れ属性」の方がいて吹き飛ばして頂きました。実際、一滴も降らないんだからホントに驚きました…。国立劇場は最寄り駅からは少々歩くので時間的な余裕を持っていくのがベストだと思われます。

 さて本題へ。文楽初体験、もうね、とても素晴らしかったです。テクノロジー全盛の現代にあって芸術の幅も限りない広がりを見せている世相の中、伝統芸能はどのような立ち位置を確保していくのか気がかりでもあったのですが杞憂としか言いようがない。あえて不安があるとすれば「どう社会に継続して伝えていくか」という点でしょう。素晴らしい文化もそれが浸透しなければ廃れてしまう。後継していく演者の確保も重要な課題。そういう意味では「鑑賞して、かつ、周囲の人にその魅力を伝えていく」というのが伝統芸能支援の柱であることは疑いありません。
 「文楽」がどういった内容を持つものなのかはホームページや解説モノに触れれば分かることなので、このレポートでは感想を主としたものにしたいと思います。寄席では高性能コンデンサーマイクが用いられていましたが、文楽では語り手(太夫)は拡声器なしの生声でのパフォーマンス。強く喉を鳴らさなければ会場の隅々には届かない。声色で老若男女を使い分ける技術もさることながら、太夫の語り・そして汗を吹き出しながらの熱演そのものが鑑賞者の感情移入を誘わずにはいられません。迫力、気迫、情感、情緒をふんだんに感じさせ、客席の心理と溶け合って一つの演目を構成するかのような空間でした。もちろん、太夫によって語りの熱量・印象は異なるのかもしれませんが、その多様さもまた文楽の面白みの一つでしょう。
 会場に響き渡る三味線の震え。これもまた味わい深いものでした。淡々と弾(はじ)かれているようですが、太夫の語りを支え、盛り上げ、時に包み込むような。あの音色そのものが持っている哀愁というか旅情というか、その力を感じます。ふと考えたのですが、日本に生まれ育つとTVや学校や行事などで三味線の音に触れることが少なからずありますよね。そして、この鳴りが何らかの情感を呼んでくるというのは肌感覚で分かる部分があると思うんです。太夫の語りと肌感覚で想起する情感が噛み合わさって「文楽」の世界が胸に広がるイメージ。一方、この日も散見された外国人にとっては三味線の音に接したことのない方が大半だと考えられ、そうした方々はどのような印象を受けるのか非常に興味がありますね。私達日本人とは必ずしも同じような感想を得るとは限らない。そこにまた文楽の新たな味わい方と言ったものも提示されるのかもしれない。個人的にはそうしたテーマにも関心はあったりします。
 舞台で踊る人形達の振る舞い。1体の人形を3人の人形遣いが操ります。この呼吸を合わせることの困難さを想像しながら鑑賞していました。いやはや見事としか言いようがない。本(ストーリー)自体の面白さはもちろんですが、あの息の合った流れるような動きに目を奪われてしまいます。人間らしさに寄せようとする部分はもちろんあると思うのですが、人形ならではの所作というものも実は奥深い。江戸期から洗練を重ねて成熟してきたものなのでしょう。同じ本を人間の役者が演ずるよりも、もしかしたら人形の方が豊かに訴えるものがあるかもしれない。いや、人形だからこそ共鳴できるメッセージがある。文楽が愛され続ける理由もその周辺にあるのかもしれませんね。
 人形が舞台の主役であることは確かですが、この日は波の演出なども素晴らしかったです。愛しき人を求め渡し場で波に飛び込んだ乙女が洗われるシーン。その心情の激しさを映し出すかのような荒波の動き。これもまた人の手によるもので凄い迫力。人形1体のシーンに、人間が10人位いたのではないかとも見えました。一つ一つの演出が非常によく練られていて、見る者に感銘を与えずにはおかないものでした。

 この日の催しは文楽を知るための教室が用意されており、ユーザーライクなスタンスで好感が持てます。まずは文楽を見る → 教室(解説) → 解説を踏まえて文楽を見てみよう という流れ。人形遣いさんが解説に立ち、太夫さん、三味線さんの実演を個別に提供。文楽での音は「生音」ですから実演中もマイクはオフになっているのですが、実演の合間のトークではマイクがオンになっており、PAさんとのシームレスなやり取りに気付いてニンマリしてしまいました。こういった円滑な運営それ自体も文化の質を下支えするものだなと感じたものです。演者の方々の解説では、小洒落た表現や今風な物の言い回し(AKBがどうのこうの…)なんかも散りばめられていて、会場を和ませてもいましたね。

 以上、文楽初体験のレポートでした。今回は国立劇場という充実した設備環境もあって、舞台上のスクリーンに本(セリフ)が表示されていて理解しやすい状況でした。一方、全国で開催されている文楽は必ずしも同条件ではないことでしょう。でもそれは不利ということでは決してない。見せ方・味わい方は現地現地で異なるでしょうけれど、その多様なあり方自体が文化を一層面白く、魅力あるものへと誘って(いざなって)いるのです。


※第4回文化レクリエーションのアセスメント結果は https://musiumart.or.jp/assess/6 で参照できます。



-MAA集合写真-
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-掲示版-

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-国立劇場全景-
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-立て看-
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-チケット封入-
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-お茶漬け(じゃないよ)-
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-ゆるキャラ(くろごちゃん…謎)-
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-場内喫茶店-
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-開演タイムアタック-
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