あなたが、しっかりと覚えておきたいことはどんなことですか?
今回は、DaiGo師匠への質問でも多いですが、どうすれば覚えた内容を記憶に定着させて、使える知識にしていくことができるのかという質問をもとに、記憶力を高めるための日常的な生活について解説させてもらいます。
「Q. 勉強でも読書でも覚えたつもりがすぐに忘れてしまいます。どうすれば覚えた内容を忘れずに記憶しておくことができるのでしょうか?」
本を読む時にあることをするだけで、その本の内容が記憶に残る確率を圧倒的に上げることができます。
しかも、これはほとんど時間もかからない方法です。
何かを覚えた直後に40秒間復習をするだけで記憶の残り方が段違いになるという研究があります。
これであれば、どんなに物覚えが悪くて忘れっぽいという人でも使える方法だと思います。
この研究では、参加者を集めて26本の YouTube の動画を見せる実験を行っています。この動画を見せる時に2つのパターンに分けて、記憶の保持率がどれぐらい変わるのかということを調べています。
動画を見た後に、40秒間動画の内容の細部を思い描く、または、声に出して説明したグループと、ただ動画を見るだけで何もしなかったグループに分けています。
その2週間後に記憶テストを受けてもらったところ、ただ動画を見ただけのグループは内容をほとんど思い出すことができなかったそうです。
一方で、たった40秒だけでも動画の内容を最後まで思い描くか声に出して説明していたグループは、かなり詳細な部分まで2週間経っても思い出すことができたそうです。
ですから、本を読んでいて覚えていたい内容があったとしたら、本を一旦閉じて頭の中で40秒ぐらいかけてその内容をまとめてみてください。
あるいは、ほんの40秒ぐらいでも構いませんので誰かに説明したり、説明しているつもりで声に出してみてください。
これをするだけで記憶への定着率は全く違ってきます。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
脳の基礎体力を上げる
記憶力というものは、ただ単に情報をインプットする能力ではなく、使える情報としてアウトプットしたり、頭の中の情報を組み合わせてアイデアを作ったりする力のことです。
だからこそ、その力を高めることで人生がイージーモードになります。
記憶力を高めれば、ネガティブな感情や自分をコントロールする能力も高まります。
スポーツ選手が日々の生活や食事を大切にするように、人間の記憶力の底上げをしてくれる習慣があります。
これはいくつか紹介させてもらいますが、もし全ての習慣を取り入れていただければ、驚くぐらい記憶力が底上げされます。
物覚えが良くなるだけでなく、様々な場面で効果を実感できるはずです。
記憶力を保つということは脳を健康的な状態で保つということです。
ですから、お子さんから年配の方まで幅広く役に立つ内容だと思います。
1. 鼻呼吸
人は口呼吸と鼻呼吸を使い分けていますが、人によっては口呼吸が中心になっています。
カロリンスカ研究所の研究を見てみると、普段の生活を鼻呼吸にすることによって、匂いに関する記憶が強化されるのではないかとされています。
参加者には様々な匂いを嗅いでもらった上で、その後に1時間口呼吸と鼻呼吸を行ってもらい、記憶の残り方にどんな違いが出るのか調べています。
その結果、鼻呼吸をした人たちは、口呼吸をした人たちに比べて匂いをより強く記憶していました。
先行研究を見てみても、人間の鼻は脳の海馬とかなり強い関係があるのではないかとされています。
そう考えると、鼻呼吸にするだけでも記憶の残り方に十分寄与する可能性があります。
ですから、毎日勉強している学生さんも、新しいスキルを身につけて挑戦したい大人の皆さんも、普段の生活をできるだけ鼻呼吸にしてみてください。
ちなみに、ヨガでよく使われる片鼻式呼吸法を1日5分から10分で7週間続けることによって英語の学習が捗ったという研究もあります。
この呼吸法は自分をコントロールする力が鍛えられるのではないかと昔から言われてきましたが、どうやら語学学習にも役に立つのかもしれないということです。
週に1回の英語学習の授業を受けてもらいますが、この授業を受ける際に、片鼻式呼吸法を行ったグループと行わなかったグループに分けました。
片鼻式呼吸法は、最初の4週間は毎日5分だけ行なってもらい、その後は少しずつ時間を増やして毎日10分行ってもらいました。
合計で7週間続けた後に、英語の読解スキルやリスニングのスキルなどをチェックするテストを受けてもらい、それぞれの英語学習がどれぐらい進んでいるのかということを調べました。
その結果、リスニングとリーディングの成績が向上していました。
この呼吸法を授業の前に毎日5分から10分行うだけで 、それをしなかった人たちに比べて有意にリスニングとリーディングのスコアが高くなっていました。
そんな簡単なことで効果があるのであれば、受験生はみんなした方がいいのではないかとも思います。
この研究では語学学習として調べられていますが、数学など他の科目でも恐らく効果が出るのではないかと思います。
片鼻式呼吸法のトレーニング
この呼吸法はとても簡単な方法なのでぜひ試してみてください。
鼻を交互に押さえて行う呼吸法です。
片方の鼻で4秒かけて息を吸って、反対側の鼻で4秒かけて息を吐く、これを繰り返すだけです。
①右手の親指で右の鼻の穴を押さえる
②左の鼻の穴からゆっくりと息を吸う
③1秒だけ息を止める
④右手の薬指で左の鼻の穴を押さえる
⑤右の鼻の穴からゆっくりと息を吐く
⑥右の鼻の穴からゆっくりと息を吸う
⑦1秒だけ息を止める
⑧右手の親指で右の鼻の穴を押さえる
⑨左の鼻の穴からゆっくりと息を吸う
これを繰り返すだけです。
片方の鼻で4秒ずつ呼吸するだけで、慣れてきたら徐々にこの4秒を長くしていくといいと思います。
別の研究ですが、85人の学生を対象に1日1時間の片鼻式呼吸を6週間続けたところ、人間のストレス耐性や集中力を測ることができる心拍変動の値がかなり改善したという結果も示されています。
30分や1時間試しても良いと思いますが、5分や10分でも効果があると思いますので試してみてください。
2. 読みにくい字で書く
読みにくい字の方が記憶には残りやすいようです。
手書きではなくパソコンやタブレットを使う場合も、わざと読みにくいフォントでメモした方が記憶に残りやすいという研究があります。
研究では、18歳から48歳の28人の被験者を対象に、架空の宇宙人に関する文章を読んでもらい覚えてもらいました。宇宙人について90秒だけ覚えてもらい、15分後にそれについてチェックするテストを受けてもらいました。
架空の宇宙人についての文章ですから、事前に情報がある人は誰もいません。
その際に、読みやすいフォントで見てもらった場合と読みにくいフォントで見てもらった場合で比べています。
その結果、読みやすいフォントで見た場合は正答率が72.8%でしたが、読みにくいフォントで見た場合は正答率が86.5%だったということです。
研究者によると、読みにくいフォントの場合には、覚える内容を実際よりも難しく感じさせます。
人間の脳は難易度を感じるので、だからこそちゃんと読まなくてはならないと考えるようになります。
文章にちゃんと注意を払って学習することができるようになるので、それによって記憶に定着しやすくなるわけです。
もちろん、実際の難易度が高い場合には、理解すること自体が難しい場合もあるでしょうが、フォントを少し変えるだけで、ちゃんと集中して取り組むことができるようになり、結果として記憶に残りやすくなるわけです。
字が汚い人は頭がいいという通説があります。
これは実は科学的には正しくて、字がぼやけている本とぼやけていない本を見せて、記憶への残り方の違いを調べる研究もあります。
これによると、字がぼやけている本の方が内容が頭に残りやすいということが示されています。
これは心理学的には「望ましい困難」と呼ばれるものですが、情報を読むのに苦労するからこそ、前後の文脈や内容を推察しながら読むようになりますので、結果的に記憶に残りやすくなります。
情報というものは何回も思い出して記憶を再統合することによって過去の経験や情報と結びついていきます。
それによって関連性が深まって記憶が定着していくわけです。
3. ポジティブ習慣を作る
1日の中で定期的に自分がポジティブな感情になる習慣を作ってください。
人はポジティブな気分になろうとしてもポジティブな気分にはなれません。
自分が自然とポジティブな気分になれる習慣を持っておくと、それによって定期的に自然とポジティブ感情を高めることができますので、それによって自分のメンタルを安定させることができるわけですが、この習慣は記憶力を高めるためにも重要です。
年齢を重ねるにつれて記憶力の低下が起きるものですが、それを防いでくれる要素について9年間にわたり調べた研究があります。
その中で年齢を重ねても記憶力の低下が著しく起きづらい人たちがいました。
それはポジティブな感情を頻繁に感じる人たちです。
日常的に自分が楽しい気分になれることを習慣化している人たちは、年齢を重ねても記憶力が低下しにくかったということです。
自分が必ずポジティブな気分になれることを、毎日のスケジュールの中にまず最初に組み込んでください。
それが自分のメンタルだけでなく長期的に見た時の記憶力を大きく左右します。
4. ボードゲーム
11歳の時点で記憶力や認知能力についてのテストを受けた1,000人以上の男女を追跡して、彼らが70歳の時点から3年ごとに4回再度同じテストを受けてもらうという研究があります。
彼らが子供の頃からどれぐらいボードゲームで遊んできたかということも同時に調べて、ボードゲームが記憶力や認知能力に与える影響について調べています。
それによると、大人になってもボードゲームで遊ぶ人たちは、そうでない人に比べて70歳になった時の記憶力の低下が少なかったということです。
さらに、70歳を過ぎてからも、多くの種類のボードゲームで遊んでいる人ほど、記憶力と頭の回転の低下が少なかったそうです。
記憶力や認知機能の衰えというものは30代の頃から進むとも言われていますので、高い記憶力を維持したいと思うのであれば、物事を覚えて頻繁に意思決定をして、それが結果としてすぐに返ってくるボードゲームを楽しむようにしてみてください。
ちなみに、他の読書の効果について調べた研究を見てみると、26人の子供を対象にした実験をしていますが、最先端のテクノロジーが使われたおもちゃで遊んでいる子供よりも、本や昔ながらのアナログなパズルやボードゲームで遊んだ子供の方が、言語能力が高くなったという結果が確認されています。
言語能力が高くなるということは、人生においても成功しやすくなるということです。
子供のそんな人生の成功にも必要な言語能力を高めたいというのであれば、子供と一緒に読書をしたりアナログなおもちゃで一緒に遊ぶといいでしょうし、意思決定と記憶を繰り返すようなボードゲームを大人も日常的に楽しむようにしてみてください。
5. アクションゲーム
トロント大学などの研究チームが、読書に必要な基本能力を鍛えるためのアクションゲームを開発しています。
情報を頭に置いた状態で判断していかなくてはならない短期記憶能力を試すことや、獲物を探し続ける必要がある視覚能力を保持すること、タイミングを見極めて危機回避することや言葉遊びなど、読書にも必要であろう様々な能力を鍛えるアクションゲームです。
学生たちを集めて、半数の学生にこのアクションゲームで遊んでもらい、残りの半数の学生にはプログラミングのゲームをしてもらいました。
週に2時間で6週間続けてみたところ、アクションゲームで遊んだ学生たちは、そうでない学生たちに比べて注意制御能力が7倍も向上していました。
状況判断が即座に求められるアクションゲームは、子供たちや学生にとっても脳を鍛えるトレーニングになるようです。
さらに、このアクションゲームで遊んだ学生たちは、文章を読み取るスピードも精度も大きく上昇していました。
ですから、状況判断を即座に求められるアクションゲームは読書能力も高めてくれるわけです。
しかも、アクションゲームによるこの効果は1年後にも維持されていて言語を操る能力まで高まっていたそうです。
記憶力だけでなく様々な脳機能が高まっていたということです。
他にも、アクションゲームは意思決定のスピードを上げてくれるという研究もありますし、リアルタイムストラテジー系のゲームは、判断力をアップしてくれたり、3D系のゲームは空間認識能力を高めてくれるというように、人間の脳のいろいろな能力を高めてくれるので、実際にゲームが脳トレになるのではないかと考えられます。
スーパーマリオ64を1日30分のプレーをしたグループと何もしなかったグループを比べると、記憶を司っている海馬や判断能力や自制心を司っている前頭葉前皮質、運動能力や空間把握能力を司っている小脳のサイズが大きくなっていたという研究もあります。
ゲームが統合失調症やアルツハイマーの治療にも使えるのではないかということが言われていて、今そのような研究も進められているそうですので、ゲームというものは僕たちが思っている以上に可能性があるものです。
ゲームが単純にすべて悪だということではありません。
ゲームのメリットにも目を向けていただいて欲しいとも思います。
ただ、当然ですがいくらゲームをして脳を鍛えることができていたとしても、それを使わなければ何の意味もありませんので、ゲームで脳を鍛える時間と自分の力を発揮するための時間をちゃんと分けてもらい、仕事や勉強や読書もするけれどゲームも楽しむというようにしてもらえれば、人生はより良い方向に向かうと思います。
6. 音楽を習う
音楽は人間の脳にとても良い習い事です。
学生たちを対象に集中力やワーキングメモリについて調べた研究があります。
半数の学生たちは音楽を普段から習っていて最低でも2年間は続けていて、残りの半数は学校の授業で習ったぐらいという学生でした。
それぞれの学生たちに反射神経の違いはありませんでしたが、普段から音楽を習っている学生たちは、集中力や記憶力のスコアが20%も高かったということです。
研究チームによると、音楽を習うと脳の中央実行系ネットワークが活性化するとされていて、これは言葉に関する能力や短期記憶などを司っています。
音楽を習うことによって、物覚えや要領の良さが鍛えられる可能性があるわけです。
別の研究でも、40代や50代になっても新しく音楽を習い始めると脳が発達するということが確認されています。
もちろん子供にとっても効果的です。
ピアノでは音を聞きながら指を動かします。
自分の指で触覚が刺激され聴覚も同時に刺激され、自分の体の感覚と音の感覚を同時に使うのがピアノや楽器です。
これによって脳が鍛えられます。
脳の底力が上がるわけですから、仕事でも勉強でも別の分野でもそれが影響してきます。
ちなみに、子供が音楽を習うことについて調べた研究を見てみると、社会に出てから役に立つであろうソーシャルスキルを高めてくれるということが確認されています。
自分の自信がなくなってしまうと言いたいことも言えなくなり生きづらくなってしまうこともありますが、ありのままの自分を受け入れて、自分をちゃんと誇れるような自尊心を高めてくれるという効果があるということです。
ぜひ大人も子供も習い事としては音楽も考えてみてください。
7. ヨガ
ヨガを8週間行うだけで記憶力が上がるのではないかという研究があります。
ヨガの脳機能に与える影響について調べた11件の先行研究をピックアップして分析しています。
その結果、ヨガを日常的に行っている人は、そうでない人に比べて脳の海馬が大きかったそうです。
記憶力を司っている海馬が大きくなることにより、当然記憶力は良くなりますし、年齢を重ねてからの認知症やアルツハイマーのリスクも低くなります。
さらに、感情の制御に関わっている扁桃体が大きくなっていたということも確認されているので、ヨガをしている人はストレスやネガティブな感情を上手にコントロールすることができるという効果もあるようです。
前頭前皮質や前帯状皮質も大きくなっていたので、デフォルトモードネットワークが効率よく働くということも確認されています。
これはアイデアも出やすくなるということです。
ヨガを行うことでメンタルが安定して感情の制御が上手になるので、それが記憶力を高めることにもつながっているのではないかと考えられています。
ヨガを行うこととストレスホルモンの関係を調べた研究を見てみると、8週間ヨガを行うだけで、ストレスを受けた際のコルチゾールの反応が弱まる傾向が確認されたそうです。
つまり、日常生活でストレスを受けて多くの人が知らないうちに記憶力が低下しています。
ヨガを行うと、ストレスを軽減するだけでなく記憶力も回復させてくれるということです。
ストレスを和らげるだけでなく記憶力も回復させてくれる効果がヨガにはあります。
ここから先は、日常的に使える記憶力や脳機能を保つための習慣について残り6つ解説していきます。
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