吉田茂はこの時代、重要な役割を演じています。彼は戦後数々の著作を行っていますが、戦前の軍部との協力関係についてほとんど記述していません。

従って吉田論には戦前の軍部との協力についてすっぽり抜ける場合が非常に多いのです。

吉田茂著『日本を決定した百年』では、あたかも自分が部外者であったかのように記述しています。

・植民地は国力の重要な源泉であった。それゆえ、狭い国土と貧弱な資源しかもっていないことは日本の弱味であったし、それを憂うる人も少なくなかった。

・内戦のもたらす混乱状況と、その中で行われる排日運動は中国と満州を圧迫していた。満州のシナ側軍閥は日本人に対して極めて高圧的な姿勢をとり、日本政府はこれに対して十分に日本国民の利益を保護しなかった」

すでに見てきたように、中国に対峙するのに、外務省には二つの流れがありました。

小村寿太郎―山座円次郎―広田弘毅の系統です。これは満州の利権を