私は1943年生まれ。多分最もテレビに影響されてきた世代だろう。中学時代にテレビが家庭に普及し始め、紅白歌合戦、巨人戦、プロレスを夢中で見、夕食時には「てなもんや三度笠」を見ていた。随分多くのテレビ番組を見た。テレビ番組を見て、自分の考えを180度変えた経験が一度ある。BBCが行った安楽死についての番組である。
 1966年夏から68年夏まで私はロシア語を学ぶため英国にいた。当時BBCは面白い番組を持っていた。争点が分かれる案件を裁判形式で討議する。一方が検察、一方が弁護側に立ち、最後に聴衆が判決を下すという仕組みである。そして安楽死が取り上げられた。私はそれまで、「安楽死は認めてもいいではないか」と思っていた。検察側(多分)が「安楽死は認めていい」と主張した。「人生の最後位自分で決めさせていいのではないか」という主張だった。私の考えを変えたのは一組の家族だった。
 一人の中年女性、夫、そして