1967年だったろうか、英国で留学中にBBCの番組を見た。テーマは「安楽死は是か非か」であった。

 形式は、裁判を模倣したものである。陪審人がいる。「安楽死は是」とする検察側の論告に対し、「安楽死は許されない」とする弁護人が法廷闘争を行い、最後にこの番組を傍聴にきている一般の人々が判決を出すという番組だった(検察、弁護人の立場は逆だったかもしれない)。この場合の安楽死は「もう病状が回復する可能性のない患者が安楽死を望んだ時に医者は助けていいか」というものである。

 「安楽死は行うべきでない」という証言に手足がなく生まれてきた女性が出た。

 「手足がなく、自由に動けない。生きている価値があるか」と思う人がいるかもしれない。

彼女は「生まれてきて神に感謝しています。生をうけることがどんなに素晴らしいか」を述べた。そして、子供たちは、「母がいなかったら私達はいない、感謝します」と述べた。