クマムシ博士のむしマガ

むしマガ Vol.17【クマムシのパラダイス銀河】

2012/05/31 00:46 投稿

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 おはくまむし~。

 きょうは、くまむしけんきゅうにっしをおとどけするよ。

 むきゅ~ん。

(クマムシさんより)

★クマムシ研究日誌クマムシのパラダイス銀河

 多摩川河川敷で採取してきたコケにクマムシがいないか、顕微鏡で観察を続けていると、のしのしと歩いているやつが視界を横切った。

 そう、クマムシである。

 本物のクマムシを見るのは、豊島さんに見せてもらって以来2度目のことだったが、自分が採集してきたコケからクマムシを見つけたときの興奮は、今でも忘れられない。

 クマムシは、まるで熊か犬の動きのように、本当に生き生きとしながら元気歩き回っていた。無脊椎動物とは思えない動きだった。

 この時、2~3時間くらいずっと、僕はクマムシを観察していた。深く愛着を感じる生き物だった。改めて、クマムシを対象として研究して行く決意を新たにした。

 とはいえ、一体クマムシの何について研究したら良いのだろうか?

 関教授と話し合った結果、クマムシのストレス耐性について研究することになった。クマムシはこれまでに高圧や超低温などの様々なストレスに耐えるとが知られているが、まだ知られていない他の種類のストレスにも耐えられるかもしれない。

 そこで、僕は乾眠状態のクマムシが高濃度酸素の曝露に耐えられるかどうかを研究することにした。酸素は好気性生物がエネルギーを作り出す上で欠かせない分子だが、それと同時に酸素は毒にもなる。活性酸素が生体を損傷させるからだ。

 この研究を行うには、実験材料であるクマムシ、それも同一種のものを数多く集めなくてはならない。そこで、豊島さんが研究していた時に使っていたヨーロッパチョウメイムシが高密度で棲んでいるコケの場所を教えてもらった。

 そのコケは、横浜の桜木町のオフィス街の路上の隅っこにあった。サラリーマンやOLが闊歩している脇で、僕はなるべく急いでコケを採取し、封筒に入れた。

 持ち帰ってコケを水で戻して翌日に顕微鏡で観察すると、おびただしい数のクマムシがシャーレの中でもがいていた。まさにあの場所は、クマムシのパラダイス銀河だったのだ。

 這い出してきたクマムシは、ガラスでできたパスツールピペットで水と一緒に回収した。

パスツールピペット

 普通のパスツールピペットだと、先端が太すぎてクマムシを吸い込む時に余分なゴミも一緒に大量に吸い込んでしまう。そのため、ガスバーナーを使ってパスツールピペットの先端を細くするのだが、この作業が結構難しい。

 このクマムシ専用のパスツールピペットを上手に作るためのテクニックを習得することも、クマムシを研究する上で必須である。

 このピペットを使って顕微鏡を覗きながらクマムシを吸い取っていくわけだが、この作業もかなり難しい。 

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