相手に痛みを与えるのに、プレイヤーの優しさが重要なんです。
『メタルギアソリッド』や『グランド・セフト・オート』、『スプリンターセル』などなど、ゲームのストーリー上、拷問する/されるシーンというのは...しょっちゅうあるワケではありませんが、チョイチョイ出てくるため、出てきたからと言ってビックリするほど珍しいものではなくなってきた昨今。
しかしそういうシーンが出てきたら、わりと軍隊式の拷問方法が多かったりするんですよね。なので、リアル過ぎて気分を害してしまったり、残忍すぎて衝撃を受けてしまったりする人もいるようです。
ですが、たとえばSMプレイのように双方の合意があって行われる拷問であればどうでしょうか?
そして、そんなシミュレーターがあったなら、みなさんはプレイしてみますか?
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先日リリースされたばかりだという、このゲームの名前は『コンセンシュアル・トーチャー・シミュレーター』。これは無粋ながらも直訳してみますと、「合意の上でする拷問の模擬訓練」というかなり妖しいSMチックなものとなっています。
これはゲームデザイナーのメリット・コーパスさんによって作られたもので、内容は自分のガールフレンドを泣かせるのが目的という、ドSな内容なのです。
その方法は...拳で殴ったり平手でビンタしたり、または道具を使うなら細長い棒でピシッ! と鞭打つこともできます。どのような方法を選んだとしても、ゴールはひとつ。出てくるテキストからパートナーの感情を読み取って、それに応える形でプレイを進めていくのです。
プレイヤーである自分が、この方法を試してみたい! と惹かれたやり方で進めていけば良いワケで...たとえばオシリをペンペンするスパンキングだって全然アリ。本能の赴くままに彼女を泣かせちゃいましょう。
とはいえ! プレイヤーは何でもかんでもやりたいように出来るのではなく、まずはパートナーにお伺いを立てて、その相手が「合意」した方法を使わないと信頼を損ねてしまうのだそうです。
前もってパートナーと道具や方法を呼ぶキーワードを設けておいたり、これを言ったらプレイを終了するという「セーフワード」を決めておく必要があったりとか。これはもう、本気でホンモノのSMの世界と全く同じやり方ですね。
もうコレ以上耐えられない、という限界値まで相手に痛めつけられ、知らず知らずのうちに熱い涙がこぼれ落ちることもある。でもこの言葉を言ったら止めてくれる。自分の弱さをさらけ出せて、なおかつ信用できるパートナーとの絆作りから始めないといけない、リスクを伴う長い道のりなのです。
本格的なSMにきわめて近いこのゲームでは、ただするだけのポルノと違って実際の人間性が存在します。痛めつけているとはいえ、あなたはガールフレンドを気遣い、プレイの前には彼女を抱きしめてあげ、後には心身ともに楽にさせてあげ、途中で気遣いの言葉をかけることだってできるのです。相手の限界を試すのが目的ではなく、痛みの中に心地よさを与えるのがこのゲームなのだそうです。なんだか深いですね。
つまりコーパスさんが重要視しているのは、そういった人間性の部分なのです。
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本当に大事だったのは、プレイヤーが傷めつけるだけのロボットではなく、心を持った人間だということなんです。
誰かをぶつのは大変な仕事なんです。それはアナタの身体にも重いプレッシャーとなります。多くのゲームは、身体に感じることのない暴力性を、スタイリッシュに描写することに興味があるかと思いますが、人間の身体は疲れ、汗をかき、休息が必要になるのです。
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と、彼女は米Kotakuでのインタビューで答えています。
インターネット用ブラウザーから、ハイパーリンクをクリックして次へ次へと進んでいく方法でゲームを作るのがコーパスさんのスタイルなのですが...以前に作られた、お母さんへのメッセージを題材にしたテキスト・クリック型ゲームでも、そこには人の心が感じられる作品でした。
『コンセンシュアル・トーチャー・シミュレーター』は、やはり拷問をテーマに扱っているだけに、暴力性の良し悪しに関する論評からは避けられないでしょう。ですがコーパスさんは、『グランド・セフト・オート』での痛々しい拷問シーンを見て、もしも合意の上に行われる拷問があったらどうだろうか? と思ったのが、今回の制作の動機なのだそうです。
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私はこのゲームが完璧だなんて思いません。(自由度が高いので)プレイヤーにはやれるところまでやる、なんてことがないよう、ある程度信じて作っています。そうでなければ、シミュレーションになりませんし。
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コーパスさんは、テレビゲームの中で描かれる非現実的なバイオレンスについて、常々かなり思う所があったようです。双方が合意をした上での暴力が描写されることができたのなら、それは彼女のプランとして「してやったり」ということになるのでしょう。
銃火器を構えて進むFPSでも、長剣を振り回してモンスターを退治するRPGでも、ボタンを押して敵を倒すだけで、痛みのプロセスを感じることが出来ないゲームについて、コーパスさんはかなり危惧されているようです。
倒されるべき敵キャラが、アナタに向かって「暴力を振るうならオマエもオレと同じだ」なんて言いませんし、相手の痛みをわからないまま終えてしまうゲームがほとんどなワケです。
なにが暴力で、バイオレンスがゲームの中にどうのように潜んでいるのかを提示するゲームがあまり無い中で、コーパスさんによるこのゲームは実験的で革新的、そして人間的なのかもしれません。
この『コンセンシュアル・トーチャー・シミュレーター』は、こちらで入手可能。気になるお値段は、たったの2ドル。トップページには、クロエ・セヴィニー似のお顔も掲載されていますので、チラっと覗きに行ってみてはいかがでしょう?
ついでに、彼女のブログでは、その他のゲームもチェックできるようになっています。個人で活動しているゲーム・ディベロッパーがどういう感じなのか知るのにも、良い機会かもしれません。
A Game Where You Torture Someone Because They Want You To[Kotaku]
(岡本玄介)
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