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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2019/10/3(No.67)
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【No.67】トリチウム汚染水の論点は被害の最小化なのに放出話が消えない
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■トリチウム汚染水の論点は被害の最小化なのに、放出したがる東電とエネ庁

<2022年夏にタンクが満杯になるけど根拠は不明という東電>

 関西電力トップが福井県高浜原発の地元自治体元助役(今年3月に死没)から、金の延べ棒やら小判やらを含む多額の金品を受け取っていた問題が、祭り状態になっている。10月2日に関電の岩根茂樹社長(電事連会長)と八木誠会長(電事連元会長)の記者会見のあと、いろいろな記事が出てるけど、わからないのは「なんで個人対応を続けたのか」ということに尽きるような。

 映画「ミンボーの女」では、暴力団の民事介入について、金品渡すことで「受け取った」という弱みを握ってズルズルと自分の土俵に引きずり込むやる口を描いてるけど、今回のって、それと同じなんじゃないかな。90年代後半以降にいろいろ法整備がされたことや、警察の対応が厳しくなったことや、会社側の総会屋対策が定着してきて、こういうのはほぼなくなったんだと思ってたら、関電で、しかも使い古された手で巨額の金品受領が続いてたことにすごく驚いた。

 こういうときには個人対応は絶対にしない、法務含めて社内で情報共有する、返却も個人では絶対にやらない、が基本なのに、調査報告書や会見(の一部)を見る限り、関電はそれがひとつもできてない。

 さらに疑問なのは、なんでこんなことになったのかがわからないことだ。意図的にやらなかったのか、それともやる意識がなかったのかが、今もって不明。調査報告書でも触れてないし、記事も出てないと言うことは記者会見での説明もなかったんだろうと思うしかない。

 記者会見は全6時間もあるから全部を見たわけじゃないけど、少なくとも役員がここで個人対応をしたのは、コンプライアンス上も、民事介入対応の手順上も、完全にアウトだと思う。もし関電では個人対応が日常になってたんだとしたら、同じような利益供与が他にもあると見た方が自然とも感じる。このへんは、専門の記者さんたちに詰めていってほしいところです。

 そんな役員が居残ったまま、第三者委員会を設置して調査をすると言っても、どこをどう信用すればいいのか皆目見当がつかない。東電も原発事故後に第三者委員会で調査をしたことがあったが(国会事故調に対する調査妨害)、内容はひどいものだった。必須のはずの国会事故調関係者に何も聞かず、自社内だけでヒアリングをした身内調査委員会でしかなく、結論は、意図的な妨害ではなかったというもので、あまりにのひどさに記者会見では批判の嵐だった。関電の第三者委員会がどうなるのか、注目したい。
 
 ということで、本題に。

 福島第一原発のトリチウム汚染水のことが最近、SNSだけでなく新聞、テレビでも話題になってきている。きっかけは、トリチウム汚染水の処分方針について検討している資源エネルギー庁の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の第13回会合(2019年8月9日)で東電が、貯蔵を続けた場合は「3年(2022年夏)に満杯」と説明したにもかかわらず、根拠を示さなかったことだった。

 タンクの建設計画は以前から出ていたので、2~3年で一杯になるという認識は福島第一を取材している記者の間では共通認識になっていた。記事になったのは、東電が明示的に説明をしたからなのと、小委員会で議論の俎上にのったからだった。

 小委員会の事務局(資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力発電所事故収束対応室)では、昨年8月の住民説明会の後、1.処分方法について、2.貯蔵継続について、3.トリチウムの生物影響について、4.トリチウム以外の核種の取扱いについて、5.モニタリング等の在り方について、6.風評被害対策について、7.合意形成の在り方について、8.その他の8つに論点を整理。2018年10月1日の第10回会合から、ひとつずつ議論をしてきた。