礼讃

礼讃・第15回「交尾」②

2014/07/24 13:00 投稿

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  • 殺人

 よく整備された広い牧場に放牧されている馬を見て、昨日の感動が甦ってきた。なんて美しいのだろう。ノーザンテーストとリアルシャダイに会えたことだけで、胸がいっぱいになった。腕時計にチラリと目をやり、時間を気にしている様子の西の祖父。

「おじいちゃん、どうしたの。何かあるの」

「今日は花菜に、種牡馬の仕事を見せてやるからな。ちゃんと予約してあるんだ」

 種牡馬とは、繁殖牝馬に種付けをすることを仕事としているオスの馬だということは知っていた。毎年数千頭の競走馬がデビューする中央競馬では、引退後に種牡馬になれる馬は年に数頭しかいない選ばれし存在だと聞いたことがある。二〇〇七年(平成十九年)の馬の統計では、種牡馬数二七〇頭。全体の約三%の確率である。ヨーロッパが五%、アメリカが九%という数字と比較しても、日本は著しく低い。

種付けシーズンは二月~七月頃である。種牡馬の仕事を見るということは、サラブレッドの交配を見学するのだろうか。果たしてそんなことができるのか。

初潮が来たときに、図書館で調べた本の中に男女の「性交」について書かれてあったことを思い出した。

交配と性交が同じことなのだろうなとは、何となく分かっていたけれど、性器を交えて肉体的に結合するという人間の性交さえ具体的に想像できない。男女が布団の中で横になってする行為という程度の知識しかない私が、いきなり馬の種付けを見ることになるなんて。動揺を隠せなかったが、怖い物見たさの気持ちもあった。

まさか、馬は布団を使うことはないだろうから、寝藁に横たわるのか。人に見られて、馬は恥ずかしくないのかな。交配する相手が気に入らないことはないのだろうか。頭の中で、二頭の馬が交わる様をあれこれ想像した。

 

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