「メンス」も「初潮」も、初めて聞く言葉だ。痔ではなく、違う軽い病気なんだと、私は解釈した。

何故か西の祖母はお風呂を沸かし、糯米を研ぎ水に浸した。純米大吟醸の日本酒を漆塗りのお盆に載せて、祖父のもとへにじり寄り、

「花菜が初潮を迎えました」

と、仰々しく報告して、猪口にお酌した。

「なに! 本当か。まだ小学三年生になったばかりだろう」

 と、西の祖父は頓狂な声を出し、

「間違いありません。私がしかと確かめました」

と、毅然たる態度で西の祖母は答えた。

「これから、薬局に行ってメンス用のショーツとナプキンを買ってきますから。お赤飯を蒸す準備はしましたけど、何を作りましょう。折詰めで注文した方が良いでしょうかね」

「魚屋に鯛とメンメを届けさせて、鯛は尾頭付きの塩焼き、メンメは煮付け、椀は花咲蟹が良いだろう。盛り菓子と口取りも必要だな。今夜は、祝い酒だから仕出し屋に料理を身繕ってもらいなさい」

 と、いう会話を交わし、水道さんや馬喰さん、工務店の社長さんや農家に大型トラクターを売っている重機屋さんを呼んで、お膳を囲む算段をつけている様子が伺われる。何やらおめでたい事が起こる気配がする奇妙な展開に戸惑いながら、私は相変わらず続くお尻からの出血をトイレで確認していた。