初潮の翌日も出血は相変わらず続き、昨日より鮮やかな赤い血が大量に出ているようだった。

「こんなに血が出ているんだから、学校に行かなくても良いんじゃないの。お休みにしちゃだめなの」

と、母の顔色を窺ってみたら、

「何、馬鹿なことを言ってるの。生理は病気じゃありません。これから毎月来るんですからね。それにしても、早すぎるわね。困ったわ。どうしましょう。取り敢えず、多めにナプキンを持って行って、休み時間に交換しなさい。使用済みのナプキンは、交換するナプキンの袋で包んでからティッシュペーパーでくるんで、サニタリーボックスに捨てるのよ。女性のエチケットだから、どこに行っても守らなくちゃだめよ。ナプキンをトイレに流すと詰まっちゃうから、絶対に流しちゃいけないのよ」

 と、早口でまくし立てた。

「サニタリーボックスって何」

「トイレの個室に蓋が付いた小さい箱が置いてあるはずだから、その中に捨てるのよ」

「わかった」

「お母さんが、保健室の先生に聞いておいてあげるから、初潮のことはまだ内緒よ」

と、言って唇の前で人差し指を立てた。

母は万が一にと、ナプキンと着替え用の生理用ショーツも一緒に入れたチャック付きのポーチを渡して、「いってらっしゃい」と学校に送りだした。

 学校のトイレに行き、サニタリーボックスと呼ばれる箱を探した。しかし、三年生用のトイレにそのような箱はどこにも置かれていなかった。

私は、給食のコッペパンが入っていた袋に使用済みナプキンを入れた。下校するまでに、コッペパンの袋の中にナプキンがギュウギュウに詰め込まれ、破けないか不安になりながら、バーバリーの通学鞄に入れた。

血が付いたナプキンを教室のゴミ箱に捨てることはためらわれた。