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【平直行「東方武術見聞録」】その23 武術〜武道へと……武道の道とは。(前半)

2014/11/18 13:28 投稿

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その23 武術~武道へと……武道の道とは。(前半)

明治維新において武術は壊滅の危機に陥った。それまでの日本を一度捨て、諸外国の文明に追いつかなければ……いずれアジア諸国が侵略され植民地化したのと同じ道を辿ってしまう。今回の妄想で暴走はスケールが大きいな(笑)。そんなふうに国の指導者が考えていたとしても不思議ではない。


そして諸外国に追いつくために日本は不思議な国策をとった。それまでの日本独自の文化を捨て去り、生活そのものを西洋的にして西洋の文明を学び、手にしようとしたのだ。植民地化の末に自国の文化が消えることは合っても、自らの国の意思で文化を消した事例は世界史の中でも非常に珍しいことなのだ。


世界でも珍しい思想を持つ武士。武士の行う武術を始めるには、全てを捨て去り、裸一貫で入門する。現代の新弟子とは、入門して寮に住ませてもらい衣食住を保障してもらい修行に励む。武術の時代も同じように住み込みで衣食住を保障してもらいながら修行に励んだ。だが、入門する前にすることが現代とは違っていた。


本当に武術に入門することとは、唯の習い事ではなく、武術を学ぶ際には自分の全財産を師匠に差し出したと耳にしたことがある。本当に無一文になり裸一貫で師匠に全てを任せる。だから師匠は住む場所と衣食を提供するのだ。


当時の日本の指導者は武術の嗜みを全員が持っていた。本気で学び自分を変えるには、裸一貫になりそれまでの自分を一度捨てることが学ぶ効率を格段に高め、目的を遂げる唯一の手段。当時の武術家はそういった状況を自ら創り出し、新しい自分を手にしていた。


だから古い時代の日本を綺麗に捨て去ることが新しい日本を手にする最短で最高のやり方だと考えたのかもしれない。その結果として……日本は世界史上でも稀なそれまでの価値観を捨て去ることで、一気に諸外国に追いつくことができた。


黒船に驚愕し、機械文明において絶望的な遅れをとっていることを痛感した幕末からそれほど時間をかけずに、日本は日清戦争と日露戦争で勝利を収め、植民地化からも逃れたのだからこの政策は正しかったのだろう。


それまでの日本といえば武士が大きな影響力を持っていた。だから新しい価値観に移り、それまでの古い価値観や常識を捨て去るために武士の象徴である日本刀の帯刀を禁じ髷も禁じた。武術は禁じられはしなかったが、時代の空気感が武術を遠ざけ、疎んじる風潮となり武術は存亡の危機に陥ったのだ。


そこに現れた救世主こそが講道館を創設した嘉納治五郎先生。武術を「武道」という名前に変え、柔術は柔道となり、新しい国家をになう人材教育と体育として打ち出した。その結果、柔道はやがて圧倒的な勢いを持って普及してゆくことになった。さらに日本はおろか世界中に普及し、オリンピック種目にまでなった柔道。グレイシー柔術以上の勢いで柔道は世界中に普及していったのだ。


パソコンどころかテレビさえなかった当時の情報伝達の早さと、船で海外に渡航した交通手段を考えれば、現代のグレイシー柔術の普及の比ではない勢いだったに違いない。そしてグレイシー柔術の原点は、講道館出身の前田光世先生なのだ。そこに不思議な何かを僕は感じたりする。



 

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