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第6回 あなたが中途半端に主張しても私は股間が痒いだけだ

最近、己の手を汚さずに権利を安易に主張・表明する人が多く腹立たしいかぎりである。

私事で申し訳ないが課長という要職にある私も、世間一般の平社員男性同様、夏は股間が痒くなる。あいにく公の場所で股間をかきむしれるほどの豪気を持ち合わせていないので人目を避けて痒みに対処している次第だ。

今朝も、例に漏れず通勤電車で如何ともしがたい股間の痒みに悩まされた私は、足を組み直したり、「ポケットに小銭的なものが入っている気がして手を入れてみたけど何も見つからないから手は抜いておくよ」という演技を繰り返すなどして痒みと戦っていた。

僕の前で吊革にぶら下がっていたOL風情が、その戦いを次の停車駅で降車するための準備運動と誤解し、網棚にあげてあったヴィトンを下ろすなどして私が席を立つのを蛇のような目で見つめていた。

無論、股間が痒いだけの私は降りない。