第1回 あなたはパンク青年の不安と真顔を笑えるだろうか?
生きていくうえで必要なのは寛容さだと思う。
毎日ほぼ同じような暮らしをしている庶民にとって他者を許すこと、受け入れることは不可欠といっていい。
私のように毎日半径十キロ圏内で生活する人間にとっては必須である。
職場や家庭以外の公共の場でも顔だけは知っている人物が幾人もいる。そうした人達の言動について寛容でなければ生活することは難しい。
今朝、久しぶりに出社前にマクドナルド、通称朝マックした。
そこで一人のパンク青年を見かけた。
彼に会うのは二回目である。
彼は前に会ったときと同様に黒革のジャケットを羽織り、髪はニワトリのように赤く染めて、逆立った髪質は茹でる前のパスタのようにつんつんであった。
彼とこのマクドナルドで会ったのは二年前、農畜産物に含まれる放射線物質の報道が出されるたびに列島が揺れていた頃。
そのとき彼はチキンナゲットとコーラを頼むと、食品に対して精神過敏になっていたのだろう、店員ガールに「このチキンナゲットはどこの牛ですか?」と真顔で質問していた。
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