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【谷川貞治の人生のホームレス】 第9回

2013/06/14 19:20 投稿

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1.『続・平謝り』 〜格闘技界を狂わせた大晦日10年史〜

この10年間、格闘技は未曾有の盛り上がりを見せたが、結果的にそれを盛り上げたK-1もPRIDEも崩壊してしまった。そこには様々な原因があるが、良くも悪くも一番の原因は大晦日イベントにあった。テレビ局も含めて当事者の谷川貞治(元K-1イベントプロデューサー)が『平謝り』にも書いていない内幕を綴って、検証する。

●第9回 / 2004年(前編) モンスター路線に拍車。ボビー参戦!

2001年   大晦日・格闘技スタート。猪木軍vsK-1最強軍、実現!

2002年   ボブ・サップ、吉田秀彦が社会現象的ブレイク!

2003年   曙、参戦!   大晦日に民放3局で格闘技番組放送!

このように大晦日は常に何らかの話題を作ってきましたが、2004年の大きな特徴と言えば「タレントの格闘技参戦!」ボビー・オロゴンの功罪でしょうね。

まず、その前に曙の参戦で史上初の紅白越えを果たし、3局で放送された格闘技番組の余波を、K-1の立場で振り返ってみたいと思います。

僕はその後、猪木さんに逃げられ、PRIDEで居場所がなくなってしまった百瀬博教さんに声をかけられて、百瀬さんがホストを務めるテレ東の番組に出演しました。百瀬さんは「格闘技をやってるヤツは、どうしてこんなに人を裏切るヤツらばかりなんだ」と、寂しそうでしたね。百瀬さんはもう一度、僕らとやり直したい感じでしたが、僕はハッキリと答えることは出来ませんでした。

なぜなら、実をいうと、その同時期の年明けに、猪木さんにも声を掛けられたからです。猪木さんが常宿とするホテル・オークラ。猪木さんがやった『イノキ・ボンバイエ』は、日テレで5%と、大惨敗を喫し、もはや継続の芽は完全に摘ままれていました。ところが、驚いたことにフジテレビが放送した『男祭り』は、『イノキ・ボンバイエ』と泥沼の選手引き抜き合いをやっていながら、17%の高視聴率。PRIDE+フジテレビ連合軍とは当然、まだまだ闘いが続くことになります。そこで僕らは、迷わず猪木さんと組むことにしたのです。

本来、K-1とPRIDEがうまくいっていれば、「立ち技のK-1」と「総合のPRIDE」として共存共栄できたでしょう。しかし、大晦日格闘技が原因で、今後さらに熾烈な闘いをしていかなければならない。2003年はPRIDE内で『イノキ・ボンバイエ』派と内部分裂を起こしたからいいものの、2004年からは本格的にK-1ファイターを引き抜いてくる可能性もありました。それを防ぐためには、K-1も総合の舞台を用意する必要があります。なぜなら、当時ファイターは「総合にチャレンジしてみたい」「ミルコのようになりたい」ということを理由に、PRIDEと駆け引きしを始めたからです。

では、PRIDEなしにK-1がどうやって総合をやるのか?  それにはやはり猪木さんの力を借りるのが一番いいと判断し、2004年はさっそく猪木さんとよりを戻すことにしたのです。折しも2002年から、僕は新日本プロレスの上井文彦さんと交流を持つようになり、K-1は「新日本プロレス+猪木軍」にK-1ファイターを絡ませて、総合をやっていこうと考えたのです。

これは言うなれば、僕らが当初PRIDEを盛り上げようとして試みた戦略と同じ。ところが、これが全然うまくいかなかった。それが 「K-1 ROMANEX」なのです。メインは「藤田和之vs ボブ・サップ」、セミは「中邑真輔 vs アレクセイ・イグナショフ」を始め、「猪木軍+新日連合軍  vs  K-1軍」をコンセプトにマッチメイクをしたのですが、K-1ファイターの不甲斐なさだけが目立ち、内容はボロボロでした。僕は自分がプロデュースしたイベントは、ほとんど何らかの成功の手応えを感じていますが、このK-1  ROMNEXだけは、失敗したなと激しく反省しています。こうして、「PRIDEを潰してやろう」と意気込んだ総合のイベントは、大苦戦のスタートを切ったのです。「クソッ」とゴミ箱を蹴ったのは、後にも先にも、この日が初めてでした。

2004年はこの総合に絡んで、もうひとつ嫌なことがありました。2003年の大晦日、視聴率で唯一、大惨敗を喫した『イノキ・ボンバイエ』は、その後主催者と日本テレビが裁判に発展するほどモメにモメ、コンプライアンス問題も含めて、格闘技から全面撤退し始めたのです。なにせ、この時の『イノキ・ボンバイエ』は、日テレの社長のクビまで飛ぶほどの大事件に発展。K-1も、2004年当初は沖縄でK-1ジャパンを開催し、日テレも紅白越えのパワーをそのまま利用して、「曙軍  vs  ボブ・サップ軍」という企画までやったのですが、大晦日のとばっちりを食うかのように、K-1ジャパンの放送が休止されてしまったのです。

誤解してほしくないのは、K-1ジャパンに関しては、最後まで視聴率が悪かったわけではないということ。最後の方は、数字をとるにあたり、総合の試合を混ぜたり、モンスター路線に走ってコンテンツ的には迷走しましたが、数字そのものは良かった。ですから、日テレの社としての格闘技撤退が原因なのです。これは痛かった。このように、K-1に関わる総合の展開は、けして順風満帆なものではありませんでした。

 

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