これでブームと言うなら、日本酒は終わっちゃうでしょうね(笑)
山口 いま、巷ではグローバルという概念が広がっていて、その背中合わせにローカルという概念もまた浮かび上がってきたりしてます。
お得意の大吟醸の作り方とかをたっぷり聞きたいところなんですが、今日は酒造りを通した「グローバルとローカル」をテーマに話を聞けたらなと思ってます。
南雲 どっちにしても両方たいしてわかってるわけじゃないんで、なんなりと、どうぞ(笑)。
柳沢 八海山が東京で売られるようになったのはいつぐらいなんですか?
南雲 30〜40年ぐらい前ですね。本格的に東京営業所を作ったりっていうのは20年ぐらい前です。最初は駐在員を置いたりして、だんだん営業所に変わってくるわけですけど。
魚沼という土地は新潟県の端で、群馬県との県境にある。だから、新潟県内に売りに行こうとしてもなかなか市場がないわけですよ。そうすると僕らは魚沼の中でしか商売ができない。
魚沼っていうのは新潟県内でも非常に市場の小さい人口の少ないところなんで、なかなかそこだけでやっててもっていうのがあったんですね、バブルの前は。ですから関東に出ざるをえなかったところがあるんですよ。
山口 地酒も手に入れやすくなってますけど、いま南雲社長から見て日本酒っていうのはブームですか?
南雲 これでブームじゃ終わっちゃうでしょうね(笑)。
柳沢 一時期、いわゆる“地酒ブーム”があったと思うんですけど、あれはどのくらい前でしたっけ?
南雲 30年とか40年前。それが“新潟の酒ブーム”の始まりでした。全国的には酒の消費量がどんどん減る中、新潟の酒は平成8年まで出荷量が伸びて来た。しかしながら平成9年以降は全国と同じ様に前年割れが今日まで続いています。
越乃寒梅は50年ぐらい前から売れだしてるわけですよ。その越乃寒梅に端を発して、どうも地方にはいい酒があるらしいということがだんだん首都圏で気づかれて、いろいろ騒がれるようになり、またホントにいい酒を作ってる酒屋が地方にいっぱいあるわけです。
寒梅さんから始まって何社かが売れるようになってきて、そういう先人たちのお陰で、新潟の酒は何を飲んでも安心だという神話みたいなものができて、新潟の酒ブームというのが起きたんですね。
そしてそれが落ち着いて、今度はそれが地域のブームというよりもいちブランドのブーム的なものになった。十四代さんだとか、黒龍さんだとか。
いまは比較的全国どこでも、それなりの酒を作る蔵が増えてきてるということだと思いますね。だから、いまは全体のブームではない。
柳沢 いわゆる地ビールとか、流通の発展とともに地方のものがどんどん広がってるイメージがあったんですけど。
南雲 名前が出てる酒屋は多くなってますけど、ブームっていうのは全体がブワーッと盛り上がることで、直近でいうと焼酎。あれは完全にブームですよ。
それからワインブームがあって。地ウィスキーブームだとか、全体がブワーッと上がることをブームというんだとすれば、日本酒のブームはそのとき新潟の酒は上がったけど、全体はどんどん下がってるっていう。
だからあれは新潟の酒ブームだったんですよね。新潟の酒の全体が144パーセントぐらい上がったわけですから。ほかの地方の酒が売れたこともありますよ。でも全体が上がってるっていうのはない。
柳沢 20〜30年ぐらい前のイメージでいうと、そんなに日本中の地酒が東京で飲めるっていう感じがなかった気がするんですけどね。
南雲 イメージはそうかもしれませんけど、全国の酒を取り扱うような酒屋がすごく多くなったのは、その20〜30年くらい前からなんですよね。
200種類ぐらいのお酒を冷蔵庫の中に入れて飲ませる飲み屋さんだとか、そういうところも増えてきて。そういうことがあって、いまはそれなりの居酒屋に行けば一種類しかないっていうことはないでしょ。
何種類かは置いてあって、好きなものを飲んでくださいみたいな感じ。それはその頃から始まったんですよ。
安くて不味いのも、高くていいものも僕から言わせれば似たようなもんなんですね
柳沢 いまや地方発で日本中に広がってきた日本酒が、最近では世界にまで広がって行く環境がどんどんできてるのかなと思うんですよ。
南雲 できてますね。食が広がるとアルコールもついていきますから。日本でイタ飯なんて言われて久しいですけど、イタ飯とかフレンチなんていうのが当たり前になってきて、それでワインが入ってきたんですから。
柳沢 そうですよね。たとえば海外に行っていいお米を食べられることよりは、いい日本酒に出会えることのほうが多いわけですよね。
南雲 そうですね。
柳沢 そういう意味では、社長がこれからどう広げていくのかっていう、そういうお考えを持ってるのか、そこらへんを聞きたいですね。
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