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【特別公開】『神神化身』朗読台本 「泡沫の舞台」

2022/04/30 20:00 投稿

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ニコニコ超会議2022 超声優祭
『超かみしんバラエティ オレたち!舞奏衆!』で上演した朗読台本を公開いたします。

「泡沫の舞台
 

三言「観囃子のみんな! 見えてるか? みんなの歓心のお陰で、もう一度この場所に立つことが出来たぞ! 俺達が相模國舞奏衆、櫛魂衆だ! ちゃんと帰ってこられたな!」

比鷺「やー、まさか二度目のワクワク超パーリィに出られるなんて思わなかったよぉ! これでもう俺は名実共に人気実況者と言っちゃっていいでしょ~! はあ、そろそろくじょたん公式チャンネルが出来てもおかしくないよね。運営さん、見ってるー?」

遠流「それだと僕も名実共にスーパーアイドルって言っていいことになるし、公式チャンネルが出来るのは僕が先ってことになるけど。言っておくけど、僕はお前より上手くやれる自信がある」

三言「この一年の間にアイドルとしての自信が増してる! いいことだな!」

比鷺「いいことだけど!」

鵺雲「そう、本当に素晴らしいことだね! ……舞奏披というのは時と状況により、様々に形を変えてきた。カミに歓心を奉じる為、舞奏の何たるかを人々に知らしめる為、その時々に応じて、最適な舞台に変じてきた。そうして今日は、この舞台だ。……そんな素敵な舞台で大好きなひーちゃんと一緒にいられるなんて! これはとっても素晴らしいことだよ!! ね! ひーちゃんもそう思うよね!」

比鷺「で、でたー!!!! ワクワク超パーリィからワクワク要素を引き算してくるクソ兄貴~! 思わねえよ! あんたのせいでワクワク超パーリィがワクワクでも超でもパーリィでもない通夜会場になってんの!」

鵺雲「こういう場でも喜びを表に出さないなんて、ひーちゃんは奥ゆかしいね!」

巡「いやいや、あれ絶対嫌がられてるでしょ……。はーあ、覡主がこんな感じだと俺達も困っちゃうよねー。ここはいっちょ俺と佐久ちゃんで、遠江國御斯葉衆の最高さを観囃子ちゃん達にアピールするしかないよ!」

佐久夜「……わかった。俺は遠江國舞奏社所属の社人であり御斯葉衆の覡が一人、秘上佐久夜だ。僭越ながら御斯葉衆の紹介をさせて頂く。まず、遠江國の遠江というのは、この地にある湖に由来している。都から近い琵琶湖が近淡海と称されていたのに対し、浜名湖は遠淡海と称されていたのだ。この浜名湖であるが、実は我が主である栄柴巡の栄柴家と深い縁があり」

巡「ちょっちょっちょっ、佐久ちゃんストップ! そのスケール感で説明してたら終わっちゃうから」

佐久夜「だが俺は、秘上家の人間として栄柴家がどういう歴史を辿り、どう舞奏の世界に貢献を果たしてきたかを説明する責務がある」

巡「その心がけは従者として百億点だけど! 固すぎるんだよお前は! ていうか、そうして従者の自覚とかなんとか言うなら、お前このワクワク超パーリィで絶対フラフラするなよな。主が誰かをちゃんと認識して、慎みを持て」

佐久夜「……善処する……」

去記「ふっふっふ。何やら騒がしいが、所詮その他の者は前座よ。この場の主役は我らであるぞ! 我ら、上野國舞奏衆・水鵠衆! そして我は上野國で一番キュートな九尾の狐、拝島去記だコン!!」

阿城木「待て。そのコンってなんだ、コンって」

去記「入彦、どうしたのだコン?」

七生「そうだよ阿城木。何に引っかかってるのさ」

阿城木「普段そんな語尾付けてなかっただろうが」

去記「ほら、ワクワク超パーリィだし、我の九尾の狐っぽさをアピールする目論見っていうか……あ、目論見っていうか、コン」

阿城木「こんな大事な時に、付け焼き刃の雑なキャラ付けで間違った印象を与えてどうすんだよ!」

七生「阿城木って、なんだかんだ去記の九尾の狐設定を一番大事にしてる人間だよね……」

阿城木「名乗りってのは大事なもんだろ。これはある意味で宣戦布告だ。他の奴らにぶちかまそうぜ」

七生「好戦的だね。まあ、嫌いじゃないよ。ワクワク超パーリィは初めてだけど、一つ大きな波を立たせてもらうよ! 僕ら水鵠衆が来てあげたんだから、存分に感謝してよね!」

皋「クソ、俺がこういう場で臨機応変にやれないから、闇夜衆が目立てないんだ……」

萬燈「それはちっとばかし卑屈が過ぎるんじゃねえのか?」

皋「卑屈になるなって方が無理だろ! なんか色々インパクト負けしてるんだって」

萬燈「俺からしたら、お前も相当興味深くて面白えけどな」

皋「んなこと言うなって。こういう時にあいつがいたらベラベラ余計なこと喋りたくってササっていってただろうけどさ……。どうしてこういう時に限ってあいつがいねーんだよ。普段だったら一回につき176文字は喋るような奴が……」

萬燈「なんだ? お前と昏見は常々べったりだとは思ってたが、こういう状況にあってもあいつがいないと心細いか?」

皋「心細いとかそういうんじゃないんだよ。俺は盛り上がり的な面を気にしてるわけで」

萬燈「今まで闇夜衆はお前を要として最高のエンターテインメントを生み出し続けてきた。そのことを誇れよ。なんなら、観囃子じゃなくて俺のことを楽しませようって気概で挑みゃいいだろ?」

皋「そっちの方が余計気負うんだけど……」

萬燈「気負うなよ。どうせこの場は一夜の夢。須臾の奇跡だ。そこに溺れる才能は、その舌に宿ってんだろ?」

皋「……おーおー、言ってくれるじゃん。ならやってやるよ。麗しき観囃子の皆々様! 待ちかねたか? 俺達が武蔵國舞奏衆、闇夜衆だ! 仲良しこよしで相当手強い櫛魂衆に、どこぞの怪盗よろしくトリックスター気取りの水鵠衆、伝統とかいう遺留品にこだわる御斯葉衆! 俺らがここで一つ、エンターテインメントを見せてやるよ! そして観囃子! お前らにここで会えたことに、俺は感謝してるからな!」

萬燈「それでこそだ。折角なら、他衆との交流を深めんのも悪くねえんじゃねえか?」

皋「あ? え……マジ……?」

萬燈「明らかにトーンダウンしてやがるな」

皋「や、八谷戸……元気か……」

遠流「何でここで僕に振るんですか。見知った、しかも当たり障りのない相手でお茶を濁そうっていう魂胆が見えていますよ。もっと社交的になったらどうですか」

萬燈「表情一つ変えず言うじゃねえか。俺もお前も、前のワクワク超パーリィの時とはまるで違った人間ってことか。いいじゃねえか。俺はそっちのが好ましいぜ。なら、お前こそ多少社交的なところを見せてみろよ」

遠流「それはどういう……。……七生千慧……」

七生「……それで、僕に話しかけてくるんだね」

遠流「僕は……泡沫の夢でも、幕間でもない舞台で、君と話してみたい。向き合いたい。その為に──借り物のこの場所で立ち続ける」

七生「……そこに君の信じる縁があるなら。僕は……僕はいつかきっと、……」

鵺雲「確かに、縁というものは不思議なものだね。萬燈先生がそうして闇夜衆にいることも、奇縁の成せる業だろう」

萬燈「よく言うぜ。お前はそれだけの縁に恵まれようと、まるで変わらねえようだが」

鵺雲「ふふ、君が言うならそうかもね。今度また会う時は、比鷺だけじゃなく僕にも優しくしてくれると嬉しいな」

萬燈「縁があったらな」

三言「縁……縁か。確かに、俺達はもう一度ここに来るまでに、沢山の縁に恵まれてきたな。そうして変わったものも、沢山ある。俺達は今日この場だけじゃなく、きっといつか相見えるだろう。その縁の行く先を見届けられるのは、きっと今ここにいる観囃子のみんなだ。どうか、これからも歓心を向け続けてほしい。そうしたら、俺達は最も素晴らしい舞台に立てるだろう。また会おうな! みんな!」



――――――――
『泡沫の舞台』(昏見参加ver.)

三言「観囃子のみんな! 見えてるか? みんなの歓心のお陰で、もう一度この場所に立つことが出来たぞ! 俺達が相模國舞奏衆、櫛魂衆だ! ちゃんと帰ってこられたな!」

比鷺「やー、まさか二度目のワクワク超パーリィに出られるなんて思わなかったよぉ! これでもう俺は名実共に人気実況者と言っちゃっていいでしょ~! はあ、そろそろくじょたん公式チャンネルが出来てもおかしくないよね。運営さん、見ってるー?」

遠流「それだと僕も名実共にスーパーアイドルって言っていいことになるし、公式チャンネルが出来るのは僕が先ってことになるけど。言っておくけど、僕はお前より上手くやれる自信がある」

三言「この一年の間にアイドルとしての自信が増してる! いいことだな!」

比鷺「いいことだけど!」

鵺雲「そう、本当に素晴らしいことだね! ……舞奏披というのは時と状況により、様々に形を変えてきた。カミに歓心を奉じる為、舞奏の何たるかを人々に知らしめる為、その時々に応じて、最適な舞台に変じてきた。そうして今日は、この舞台だ。……そんな素敵な舞台で大好きなひーちゃんと一緒にいられるなんて! これはとっても素晴らしいことだよ!! ね! ひーちゃんもそう思うよね!」

比鷺「で、でたー!!!! ワクワク超パーリィからワクワク要素を引き算してくるクソ兄貴~! 思わねえよ! あんたのせいでワクワク超パーリィがワクワクでも超でもパーリィでもない通夜会場になってんの!」

鵺雲「こういう場でも喜びを表に出さないなんて、ひーちゃんは奥ゆかしいね!」

巡「いやいや、あれ絶対嫌がられてるでしょ……。はーあ、覡主がこんな感じだと俺達も困っちゃうよねー。ここはいっちょ俺と佐久ちゃんで、遠江國御斯葉衆の最高さを観囃子ちゃん達にアピールするしかないよ!」

佐久夜「……わかった。俺は遠江國舞奏社所属の社人であり御斯葉衆の覡が一人、秘上佐久夜だ。僭越ながら御斯葉衆の紹介をさせて頂く。まず、遠江國の遠江というのは、この地にある湖に由来している。都から近い琵琶湖が近淡海と称されていたのに対し、浜名湖は遠淡海と称されていたのだ。この浜名湖であるが、実は我が主である栄柴巡の栄柴家と深い縁があり」

巡「ちょっちょっちょっ、佐久ちゃんストップ! そのスケール感で説明してたら終わっちゃうから」

佐久夜「だが俺は、秘上家の人間として栄柴家がどういう歴史を辿り、どう舞奏の世界に貢献を果たしてきたかを説明する責務がある」

巡「その心がけは従者として百億点だけど! 固すぎるんだよお前は! ていうか、そうして従者の自覚とかなんとか言うなら、お前このワクワク超パーリィで絶対フラフラするなよな。主が誰かをちゃんと認識して、慎みを持て」

佐久夜「……善処する……」

去記「ふっふっふ。何やら騒がしいが、所詮その他の者は前座よ。この場の主役は我らであるぞ! 我ら、上野國舞奏衆・水鵠衆! そして我は上野國で一番キュートな九尾の狐、拝島去記だコン!!」

阿城木「待て。そのコンってなんだ、コンって」

去記「入彦、どうしたのだコン?」

七生「そうだよ阿城木。何に引っかかってるのさ」

阿城木「普段そんな語尾付けてなかっただろうが」

去記「ほら、ワクワク超パーリィだし、我の九尾の狐っぽさをアピールする目論見っていうか……あ、目論見っていうか、コン」

阿城木「こんな大事な時に、付け焼き刃の雑なキャラ付けで間違った印象を与えてどうすんだよ!」

七生「阿城木って、なんだかんだ去記の九尾の狐設定を一番大事にしてる人間だよね……」

阿城木「名乗りってのは大事なもんだろ。これはある意味で宣戦布告だ。他の奴らにぶちかまそうぜ」

七生「好戦的だね。まあ、嫌いじゃないよ。ワクワク超パーリィは初めてだけど、一つ大きな波を立たせてもらうよ! 僕ら水鵠衆が来てあげたんだから、存分に感謝してよね!」

昏見「なんだか皆さんだけで盛り上がっていてずるいですよ! こうなったら武蔵國の最終兵器、人呼んでパーティー荒らしの皋こと所縁くんを投入して場をしっちゃかめっちゃかにするしかありませんね! 行っちゃってください所縁くん! こんなこともあろうかと、私は国際弁護士の資格を取っておきましたからね! 存分に暴れてくださって構いませんよ! はー、六法全書を枕に寝ててよかったー!」

皋「お前は俺に何をやらせようとしてんだよ!! クソ、俺がこういう場で臨機応変にやれないから、闇夜衆が目立てないんだ……」

萬燈「それはちっとばかし卑屈が過ぎるんじゃねえのか?」

皋「卑屈になるなって方が無理だろ! なんか色々インパクト負けしてるんだって」

萬燈「俺からしたら、お前も相当興味深くて面白えけどな。今まで闇夜衆はお前を要として最高のエンターテインメントを生み出し続けてきた。そのことを誇れよ。なんなら、観囃子じゃなくて俺のことを楽しませようって気概で挑みゃいいだろ?」

皋「そっちの方が余計気負うんだけど……」

昏見「気負わなくても大丈夫ですよ。どうせこの場は泡沫の夢。単なる幕間でしかありません。だとすれば、私達に求められることは、この甘露を味わい尽くすことですよ」

皋「……言ってくれるじゃねーか。麗しき観囃子の皆々様! 待ちかねたか? 俺達が武蔵國舞奏衆、闇夜衆だ! 仲良しこよしで相当手強い櫛魂衆に、どこぞの怪盗よろしくトリックスター気取りの水鵠衆、伝統とかいう遺留品にこだわる御斯葉衆! 俺らがここで一つ、エンターテインメントを見せてやるよ! そして観囃子! お前らにここで会えたことに、俺は感謝してるからな!」

昏見「それでこそですよ。折角だから他衆の方にもご挨拶しましょう!」

皋「あ? え……マジ……?」

萬燈「明らかにトーンダウンしてやがるな」

皋「や、八谷戸……元気か……」

遠流「何でここで僕に振るんですか。見知った、しかも当たり障りのない相手でお茶を濁そうっていう魂胆が見えていますよ。もっと社交的になったらどうですか」

萬燈「表情一つ変えず言うじゃねえか。俺もお前も、前のワクワク超パーリィの時とはまるで違った人間ってことか。いいじゃねえか。俺はそっちのが好ましいぜ。なら、お前こそ多少社交的なところを見せてみろよ」

遠流「それはどういう……。……七生千慧……」

七生「……それで、僕に話しかけてくるんだね」

遠流「僕は……泡沫の夢でも、幕間でもない舞台で、君と話してみたい。向き合いたい。その為に──借り物のこの場所で立ち続ける」

七生「……そこに君の信じる縁があるなら。僕は……僕はいつかきっと、……」

鵺雲「確かに、縁というものは不思議なものだね。萬燈先生がそうして闇夜衆にいることも、奇縁の成せる業だろう」

萬燈「よく言うぜ。お前はそれだけの縁に恵まれようと、まるで変わらねえようだが」

鵺雲「ふふ、君が言うならそうかもね。今度また会う時は、比鷺だけじゃなく僕にも優しくしてくれると嬉しいな」

萬燈「縁があったらな」

三言「縁……縁か。確かに、俺達はもう一度ここに来るまでに、沢山の縁に恵まれてきたな。そうして変わったものも、沢山ある。俺達は今日この場だけじゃなく、きっといつか相見えるだろう。その縁の行く先を見届けられるのは、きっと今ここにいる観囃子のみんなだ。どうか、これからも歓心を向け続けてほしい。そうしたら、俺達は最も素晴らしい舞台に立てるだろう。また会おうな! みんな!」


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著:斜線堂有紀

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


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