⌘                  2015年02月05日発行 第0833号 特別
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 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
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「気仙沼中央公民館に残された446人」

 1月30日付け中日スポーツ1面「月刊猪瀬直樹」連載の最終回を寄稿しまし
た。メルマガでもご紹介します。
                              *

○メールでSOS

 3・11東日本大震災から四年が経とうとしている。家族を亡くした人たち
の心の傷はいかばかりだろうか。妻を急病で亡くした僕は遺族のお気持ちが痛
いほどわかる。時間が経てば癒やされるというが、逆に喪失感が深まっていく
こともある。

 昨年の3・11特集でNHKドラマ「生きたい助けたい」が放映された。火
の海に囲まれた気仙沼中央公民館を舞台に展開されたドラマには、津波の実写
映像は使われなかった。いまなおトラウマを抱えている被災者に配慮して実写
映像を自主規制しているので、津波や火災はCGで再現された。このドラマの
もとになった実話に僕は関わっている。

 地震の直後に付近の住民は一時避難所にされていた中央公民館へ逃げ込む。
障害児施設の園長内海直子さんが震える手で打ったメール「火の海 ダメかも
がんばる」がロンドンに住む息子に届いた。火の海のなかで孤立した公民館の
存在は誰にもわからない。地元の119番も機能していない。ロンドンの息子
はツイッターで救援を求めた。

「障害児施設の園長である私の母が、その子供たち十数人と一緒に、避難先の
宮城県気仙沼市中央公民館の三階にまだ取り残されています。下階や外は津波
で浸水し、地上からは近寄れないもよう。もし空からの救助が可能であれば、
子供たちだけでも助けてあげられませんでしょうか」

 ツイッターの制限枠140字で状況が正確に説明されている。ツイッターは
行く当てもなく拡散した。デマも入り交じったネット空間からこの一文を拾い
上げた零細企業の社長が、当時副知事の僕宛てにリツイートした。

○情報リレー実る

 都庁に詰めていた東京消防庁の防災部長を呼んだ。「デマではない」と了解
し、夜明けとともにヘリコプターを飛ばすと決めた。

 公民館ではゼロ歳から五歳までの保育園児71人を含む446人がすし詰め
状態で避難していた。絶望的な状況のなか、互いに励まし助け合って生き延び
ようと努力していた。

 気仙沼・ロンドン・東京という情報リレーは一人でも欠けていたらつながら
なかった。446人が一人一人それぞれの役割を果たして持ち場を守りきって
いなかったら犠牲者も出ただろう。僕はこのほどNHKドラマの実録版『救出
気仙沼中央公民館に取り残された446人』(河出書房新社)を上梓した。読
んでいただければ勇気が湧いてくると思います。
                     (中日スポーツ1月30日付け)


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