結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月29日 Vol.244
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
サイン本の話。
結城浩の《サイン本》無料プレゼント企画を行っています。 今回は、結城の本のうち海外向けに翻訳されたものをプレゼントいたします。 具体的には以下の通りです。
・中文簡体字版『数学ガール/フェルマーの最終定理』(3冊)
・中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』(3冊)
・中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』(3冊)
・中文簡体字版『第3版 暗号技術入門』(4冊)
・ハングル版『暗号技術入門(第2版)』(6冊)
・ハングル版『数学文章作法 基礎編・推敲編(合本)』(3冊)
応募〆切は2016年12月6日(火)です。 ずっと先……ではなく、来週の火曜日ですね (来週はもう12月ですと!)
詳しい応募方法については、 以下のブログ記事をごらんください。
◆中文版『数学ガール/フェルマーの最終定理』他多数!
《結城浩のサイン本無料プレゼント》
https://snap.textfile.org/20161123170454/
* * *
新刊の話。
先月末に刊行した『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』Kindle版が、 数学の新着ランキングで第一位になっていました。感謝です!
いくつか読者さんのカスタマーレビューもつき始めました。 うれしいですね。応援ありがとうございます!
◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』Kindle版
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01MSJMKMW/hyam-22/
* * *
「かける数」と「かけられる数」の話。
Twitterでときどき「掛け算順序」の話題を見かけます。 検索すれば見つかるので、ここでは詳しく説明しません。
以下は、結城の個人的な体験の話。
学校で「かける数」と「かけられる数」という用語を習った記憶があります。 習った記憶はあるのですが、2×3のうちどっちが「かける数」であるか、 どっちが「かけられる数」であるかを覚えるのはあきらめました。 単純に覚えられなかったからです。 「覚えなくてもいいか」と子供ながらにスルーしたのは覚えています。
ところで、そのころの記憶をたどってみると、
「『かけられる数』という用語は美しくないな」
と感じたのを覚えています。 「美しくない」と感じた子供のころの気持ちを、 大人になったいま正確に思い出すことはできません。 でも何とか再現してみると、2×3という式の場合、
「2に3を右からかけている」
ともいえるし、逆に、
「3に2を左からかけている」
ともいえるなあと感じたからかもしれません。 つまり「かける数」と「かけられる数」という用語は、 そのままでは左右の区別がつきません。 そこに違和感を覚えたのです。
大人になってから、何かの代数の本で「右単位元」や「左逆元」 のような用語を見たとき「おお!」と感動したのを思い出します。 つまり明示的に「右」「左」を書く方法があると知ったからです。
プログラミング言語で「右結合」や「左結合」という演算子の約束も、 なるほどなあと思いました。まあ、明示的に書いたとしても、 どっちがどっちか、私はよく覚えられないのですけれど。
プログラミング言語での「右結合」の例はたとえば代入演算子(=)で、 「x=y=z」という式を「x=(y=z)」と解釈するもの。 「左結合」の例はたとえば加算演算子(+)で「1+2+3」を「(1+2)+3」 と解釈するものののことです。
以上、結城の個人的な体験の話でした。
掛け算順序問題は簡単にここで論じるわけにはいきませんが、 もし、へんな教え方があったとしても、 子供たちは何とかうまくスルーしてほしいと思います。
つまらないことで、 算数や数学を嫌いになってほしくないのです。
* * *
数学の話。
「数学ガール」や「数学ガールの秘密ノート」シリーズを書いている関係で、 結城のところには、老若男女さまざまな読者さんからメールがやってきます。 小学生から80歳を越える方まで。 いずれも、算数・数学の問題や理系の話題が大好きな方々です。 そういった方々からのメールを読んだり、 Twitterなどでやりとりしていると、人生がほんとうに楽しいですね。
改めて考えてみますと、 結城の数学能力は理系の高校生+αくらいなのですが、 それでも数学には楽しめる話題があふれています。 結城はそういう話題をピックアップして物語にしていることになります。
高校までで学ぶ基本的な数式を読めるだけでも、世界は広がるものです。 本を読んでいて数式が出てきても「こわがらない」のは大事なこと。 「数式は言葉」で、数式をこわがるのは、漢字をこわがるようなもの。 もったいないことです。
ファンレターの中にはよく『数学ガール6』はまだですか? という質問が書かれています。現在がんばって書いてます! 『数学ガール6』の話題は後ほどもう少し詳しくお話ししますね。
* * *
会計の話。
先日、月次の会計作業を行いました。 もう11月なので2016年全体の数字も眺めていました。
書籍ごとに、ここ10年の状況などを表にまとめる作業も行っています。 この表は毎年アップデートしています。 毎月の細かな収入と支出だけではなく、 年単位での推移を見るのも大事ですね。数字はいろんなことを語ります。
「紙の本に対する印税」だけではなく、 結城メルマガや、Web連載や、note(ノート)や、 翻訳書や、電子書籍というように、収入が多様化しているのを感じます。
ただし、収入が多様化しているといっても、 収入のパス(やって来る道筋)が多様化しているだけで、 読者さんが結城を支えてくださっていることには変わりありません。 深く感謝です!
会計の数字から考えたことを、 自分の執筆作業にどのように生かすかという話題は、 後ほどもう少し詳しくお話しします。
* * *
数学書の話。
今回の結城メルマガでは「結城浩ミニ文庫」のコーナーで、
「優しく、美しく、気高い数学書」
と題して「結城が読みたいと思っている数学書」のお話をお送りします。
これは、数学書房『この数学書がおもしろい(増補新版)』 に収録されている結城のコラムを再掲したものです。 現在刊行中であるにも関わらず、 再掲を快諾してくださった編集部に感謝します。
なお、『この数学書がおもしろい(増補新版)』は、 数学者、物理学者、工学者、経済学者など計51名が、 おもしろい本、お薦めの書、思い出の一冊を紹介するという興味深い本です。
◆数学書房『この数学書がおもしろい(増補新版)』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903342646/hyam-22/
* * *
と、いうことで、そろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 数学の問題を出す楽しみ(問題編)
- 優しく、美しく、気高い数学書 - 結城浩ミニ文庫
- 会計作業から執筆方針を考える - 仕事の心がけ
- 『数学ガール6』進捗報告 - 本を書く心がけ
- 数学の問題を出す楽しみ(解答編)
- おわりに
コメント
コメントを書く