すみません、今回、「女災」に関係ないッス。
旧ブログからご覧いただいている方にはおわかりでしょうが、昨今の「ヒーロー大集合」映画を見る度、ぼくはブログで不平を書き並べてきました。「女災」とは関係ないものの、こうした昨今の「正義」を否定する東映ヒーローの作劇は、やはり「正義」を否定するリベラルに支持されていて困ったものだ、みたいなことを書いてきました(「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」、「ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦」)。
そうした論調というか意見については別段変化はありませんので、今回はその辺は略すことにします。ただ、見ていてどうにも許し難いものであったため、ここでこうしてクダを巻かせていただこうかと。当然、ストーリーなどは全部書いてしまいますので、本作のネタバレをしてほしくない方、或いは楽しめた方はお読みになりませんように。
以下、ストーリーを簡単に紹介します。何しろキャラクターが多いので、変身前の人間の名前はみな、ファーストネームだけにしておきましょう。
主役は二代目宇宙刑事ギャバン・撃。
地球で増大する魔法の力が宇宙を乱すことを危惧する銀河連邦警察は、その原因を仮面ライダーウィザード及び仮面ライダービーストであると判断、その討伐を撃に命じます。ウィザードと戦い、しかし彼が悪でないと感じた撃は命令に背き、初代ギャバン・烈から宇宙刑事資格を剥奪されてしまいます。
「全宇宙を救うためには地球を犠牲にするしかないのか」ふと口にした撃に、怒りをぶつけるゴーカイシルバー・鎧。「ゴーカイジャーは宇宙出身なのに地球のために生命を懸けたのだ、地球出身のあなたがそんなことを言ってはいけない」。しかしそれならば撃だって「このまま手をこまねいていればそのゴーカイジャーたちの故郷も滅ぶのだぞ」とのロジックで返すべきでしょう。
発言が唐突な上にそうした論理の応酬がないから、非常に葛藤が空疎。しかもその直後の撃は、地球の破壊を決定した銀河連邦警察に対しては反対するのだから、非常に薄っぺらです(撃が鎧の言葉を受けて考えを変えたのだ、と「補完」するのが正しい見方なのでしょうか? こうした答えの出ない問いに、そんなふらふらと考えを変えるなんてそれこそバカみたいではないでしょうか)。
近年のこうしたヒーロー大集合作品は、正義の味方であるはずのヒーロー同士がやたらと戦う、それもまるで見せしめのごとく昭和時代のヒーローが殺戮されるとあって、マニアの不評を買っておりました。今回、撃とウィザード、或いはキョウリュウジャー(キョウリュウジャーは現行の戦隊作品なのですが、大変出番が少ないです)の対立はあっさり目に抑えられ、そこを評価する向きもありますが、正直「だったら最初からつまらない対立なんぞさせるな!」というのがぼくの感想です。
いえ、そうした「ツッコミ」はもういいでしょう。
上にも書いたように、銀河連邦警察のトップは初代ギャバンの烈です。本作においての烈は撃の進言も聞かずウィザードたちを倒せと命ずる、単なる「イヤな上役」。普通なら「ウィザードの再調査をさせてください」と食い下がる撃に口では厳しく「任務を解く」と言いつつも「お前はもう部下ではない、何をやろうと勝手だ」とか言ってさりげなく思い通りにさせてやる、みたいな展開があるものですが、そうした気の利いた処置はナシ。
また、宇宙刑事としての資格を剥奪された撃は終始変身できないままなのですが、その禁忌を解くのは「誤解が解けて、烈も理解を示してくれて……」とかではなく、唐突に現れたシンケンジャーのイエローが特殊能力を使って、でした。いいのか、それで?
烈はクライマックスで再登場し、「許してくれ、母なる星よ」と贖罪の言葉と共に超次元砲のボタンを押します。一応、「地球を母星とする男が苦渋の決断をした」というドラマを作ろうとしているらしきことはわかるのですが……。
で、結局、実はこの超次元砲の発射自体が、悪の組織の狙いでした。その莫大なエネルギーでラスボスたる魔王サイコを復活させることこそが、最初からの目的であったのです。
いずれにせよ超次元砲は発射され……三人の宇宙刑事が母艦で出撃、迫り来る超次元砲のエネルギーを迎撃。えぇと……そんでどうなったの? 地球をも破壊する莫大なエネルギーをたった三隻の母艦で散らしたの?
でもその直後、結局魔王サイコは復活します。てことは、「結果的に地球の破壊は免れたけど、それは敵のシナリオ通りで、銀河連邦警察も宇宙刑事もそれを防ぐことができなかった」の? つまり「地球を破壊しようという意図は最後まで変わらず、ただ敵に乗せられていたがため、たまたま地球が無事なだけだった」ということ?
だとしたら、どうしようもない間抜けで無能な組織です。
で、後はいつも通りです。
採石場でヒーローが大集合して悪と戦ってやっつけました。めでたし。
以下は細かいツッコミです。
玩具が出るとあって、前宣伝でやたら押されていたメタルヒーローの大集合。ゴーカイジャーがジバン、ジャンパーソン、ビーファイターなどに変身するシークエンス。これ、撃に(いきなり、何の説明もなく)キーを託されて変身。その次の瞬間、0.05秒後にはガレオンバスターを発射して、そんで終わりです。マジで出番は30秒もないです。こんなので一万を超える玩具を売りつけるのって、アリなんででょうか。
1号ライダー。アカレンジャー。最終決戦も七割方終わった時に崖の上から「俺たちもいるぞ!」するだけです。アオレンジャー以下、出ません。『レッツゴー』の時のキカイダーたちより遙かに扱い低いです。現行ヒーローになぶり殺しにされた前作よりマシとも言えましょうが、せめて元祖のヒーローたちはは多少、(仮面のままでも)ドラマ上のキーとなる活躍をさせるべきではないでしょうか。少なくともCMなどでは押してるんですから。
そもそも撃自身、どういうわけか光球化して変身、という一番の見せ場は前回の映画同様、ナシ。後、今回は蒸着ナレーションもナシです。確かテーマソングもかからなかったんじゃないかなあ。どうしてこうまでよりにもよって「ここだけは外しちゃダメ」なツボを全部外してしまえるんでしょうか。
それとシャイダーは人間体ナシ。最終決戦の「俺たちもいるぞ!」の時に崖の上から現れるだけです。
シャリバンも赤射シーンナシです。
造形はため息が出るほど美しいんですけどねえ。
ショッカー。結構怪人が出てきて楽しかったのだけれど、イカデビルのデザインは何でリニューアルされたんでしょう? 『大ショッカー』とかの時はどうだったっけ。ああいう「今風リファイン」の怪人と「かつてよりの忠実なリメイク」の怪人が混在していてヘン。特に戦闘員は昔のままなんだから、デザインは変えるべきじゃないんじゃないでしょうか。
後、サイコロン。ドラマ的にいいの悪いのと言うほどのこともないですが、まあ女児向けにヒロイン(イエローバスター)のドラマも入れておこうという意図でしょうし、それはまあまあ果たされていたんじゃないかと思います。なるほど、サイコロンだからサイコラーだったわけですな。
しかしこれ、明らかに劇場版ドラえもん『新鉄人兵団』のピッポのパクリですよね。敵の頭脳が自立型ロボットとなってこちらの味方にという設定もデザインも明らかに被っていますし、サイコ化する時、ホンの一瞬だけど三角形の一端となる演出が出てきますし(わかりにくい表現ですみません、演出的に被ってたんです)。
近年の東映ヒーロー作品が「正義の否定」をテーマにしていること――いや、「地球の子供たちから正義の心を失わせることをその目的としていること」は去年も述べました。
名作『スーパーヒーロー大戦』においてはアカレンジャー、仮面ライダー1号の正体をそれぞれゴーカイレッド、仮面ライダーディケイドとすることで正義の味方をチンピラに貶めることをテーマと……いや、「地球の子供たちから正義の心を失わせること」を目的としていました。
しかし本作ではライダーと戦隊を否定した後とあって、「宇宙刑事」の全否定が目的となっております。
今回の烈の言動、まともな人間が考えればヒーローに割り振る役割では決してなく、悪役としてタカ派の長官でも出すのが普通でしょう。しかし本編を見る限りは銀河連邦警察という組織、烈以外の管理職が出てこないので、烈自身が愚かな判断で地球を手にかけようとしたことになってしまっているのです。烈は地球人と宇宙人のハーフであり、元の作品では母なる星地球を守るためにやってきて、地球の子供たちと仲よくなった男だったのですけれどもね。
更に言えば烈の父もまた地球を守る宇宙刑事であり、地球人の科学者が開発した「ホシノスペースカノン」を兵器利用しようとする悪の組織の拷問に耐え、秘密を守って死んでいった男だったのですけれども。
ちなみにこの「ホシノスペースカノン」のシステムは、次回作においてはシャリバンの母艦のメイン兵器「プラズマカノン」として採用されることで、正義の力となっていました。新たな悪の組織もこのシステムの秘密を知ろうとし、ギャバンはシャリバンにもゲスト出演、父の守った秘密を自らもまた生命を懸けて守ろうとするエピソードが描かれました。こうした世界観のつながりが宇宙刑事の魅力だったのです。
さて……何かきな臭いものを感じないでしょうか。
今回烈が地球を破壊するために押したのは、超次元砲のボタン。これ、果たして「ホシノスペースカノン」と無関係でしょうか?
ひょっとするとこれこそが……「ホシノスペースカノン」の発展型だったということは……?
今回のスタッフたちは、ギャバンに、自らが、父が、生命を懸けて守った地球人のシステムによって、地球を殺させることで、「正義」の根源的絶対的究極的レイプを完遂したのではないでしょうか。
――既にあちこちで語られている通り本作、前回に比べればかなり見れるものになっていたとは思います。逆にあの「圧倒的物量」という見せ場がないだけ、多少ごちゃごちゃしたスペシャル版、といった印象もないではありませんけれども(何しろ2号ライダーもアオレンジャーも出ない体たらくですから)。
撃も(烈をあれだけ貶めた野田から当たり前ですが)結構頑張っていて好印象。放送当時嫌いだった鎧についてもまた、しかりです。
ただ……ネットのベッドインとか何とかいうああいうの、止めなさいね。
じゃなきゃもう、東映ヒーローは完全にガキを切り捨てて完全18禁にしろ。
コメント
コメントを書く(ID:63540633)
東映の堕落を示す一連の子の作品群は存在すること作られたことが罪だ。
上層部は何を見て育ったと問い詰めたくなった。
(著者)
コメントありがとうございます。
本当にそうですよね。
白倉氏は(ぼくはスタッフについてあまり詳しくを知らんのですが)東映ヒーローの正義に悪意があるようで、本当に「東映ヒーローを潰すために入社した」としか思えません。