今、「正解はない」という考え方が流行っている。大多数の人が心から信じているし、そこまでいかなくともつい頼ってしまう人は少なくない。

しかし、これには少なからず問題がある。なぜなら、「正解はない」という考え方だと、それに頼る余り、逆に思考を放棄してしまって、考える力を失ってしまうからだ。そして考える力を失ってしまうと、常識や流行に押し流され、かえって一つの考え方に染まりやすくなる。

人が思考力を失い、一つの考え方に染まりやすくなったときに、人類にとって最も恐ろしい事態である「全体主義」が牙をむく。全体主義は、人が人を平気で殺せるようになる社会システムの一つ闇だ。

そもそも人間は、人口の増えすぎを抑制するため、同族殺しを許容する習性が原始より備わっていた。全体主義は、その習性を「暴走」させ、想定をはるかに超えて多くの人を殺してしまう。そのため、けっして大袈裟ではなく種の絶滅に至りかねない。