台獣物語53(2,950字)
53
「怖い。大変なことが起きた。今緊急で書き留める。
今は朝の五時二〇分だ。先ほど連絡あり、台獣が北上中とのこと。姿は確認できていない。しかし、風は確実に強くなってきた。
今、パニックだ。研究隊の何人かは、逃げ出した。しかし、走って逃げられる距離ではない。車は、ない。ヘリコプターは、朝にならないと来ない。全く失敗した。もっと慎重になっておくべきだった。
今、タヱ子が様子を見に行ってる。まだ、帰ってこない。風は強くなるばかりだ。予想外だった。ここまでのスピードとは思わなかった。我々の考えを越えているのは間違いない。
我々は浅はかだった。台獣を制御しきれると思っていた。それは愚かなことだった。
もうダメかも知れない。クリヤビトの長は助かる方法があると言った。我々はそれを聞き流していた。くだらないと一蹴してしまった。
なんてことだ。我々は全く失敗だ。太陽に近すぎたイカロスのようだ。
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