メジャーエンターテインメント路線の中央道を走る
映画監督サム・ライミ!
しかし彼のデビュー作『死霊のはらわた』は
かつてない独特な感性を用いた
ホラー映画の歴史的名作だった!
「高校生」の頃に「山形の映画館」で鑑賞し
その怖さに何度も客席で飛び上がったものだ!
しかし!
彼をいわゆるカルト映画界の伝説に押し上げたのは
その続編である『死霊のはらわた2』である!
前作の恐怖をしのぐ作品を期待していたファンは
続編を見て次々に「しりこ玉」を飛ばした!
ストーリーも設定も前作とまったく一緒!
前半に関しては台詞まで一緒だった!
ところが!
とんでもなく大きな違いがあった!
続編はなんとコメディ作品になっていたのだ!
つまりサム・ライミという監督は
デビュー作に前代未聞のホラー映画を発表し
続く作品として
そのデビュー作のパロディ映画を製作したのだ!
そんなわけで本日の『ひろぐ』のタイトルは
『ばいばいエミさん2』!
世界の度肝を抜いたサム・ライミの手法にならい
本日は涙が浮かぶどころか
ドライ・アイになるほどくだらない事を記してひろごう!
「あたし今日な!
飲み屋でエミさん殴って泣かしてしもてん!」
確か「タニマチ金魚」による第2回公演
『誕生!劇団くすみちゃん』
の本番中の事だったと記憶する!
帰宅した「カミさん」がへらへらに笑いながら
前述のとんでもない言葉を私に聞かせた!
ただならぬ内容に驚いた私は
詳しい事情聴取を行った!
「だってなぁ!
しゃあないねん!」
”しゃあない”ことはない!
割と大事件だ!
「エミさんがいつまでもアホな事ばっかり言うてるからな!
最初は普通の突っ込みやってん!
突っ込みでほっぺたとか張っててん!
けどあたしも酔うてたしな!
あの人アホ言い続けるしな!
だんだん”掌底(しょうてい)”になってたらしいわ!」
「掌底」?
それは発祥不明の武術「骨法(こっぽう)」にて完成された
てのひらで相手を押し出すように打つ打撃技の事である!
「本番中の女優やし顔はあかんやろ?
だからこのへん!
この顎のあたりになんべんも掌底決めたってん!」
格闘家・船木誠勝(ふなき・まさかつ)選手らによって
1990年代初頭に旗揚げされた
総合格闘技団体「パンクラス」では
顔面へのパンチが禁じ手とされた!
そのため顔面へ打撃攻撃を行う際には
主にこの”掌底”が用いられた!
狙う部位は顎だ!
顎への掌底が脳を揺らした結果に見られる
壮絶な失神KOが団体の人気と話題を呼んだ!
だから!
だーから!
”頬を外して顎を打つ”
という掌底はやってはいけないのだ!
「なんべんか掌底決めてたらな!
エミさんめっちゃ泣いてーん!」
それはそうだろう!
恐らく私でも泣く!
どれだけ”アホな事”を言ったところで
”それは顎に掌底受けても仕方が無いよ”
という状況は思いつかない!
だが!
今ふと思う!
「牧野エミ」という人は
本当に迷惑な人だった!
居酒屋で酔えば
彼女が壁に頭を打つ音など日常音の一つだった!
その痛みに泣き始めたのが
やがては全然違う事で号泣していたりするのが常だった!
一度などは笑い過ぎて席から転落し
鎖骨を骨折した事もある!
泥酔して掌底を繰り出す「カミさん」も
かなり迷惑な人だが
それでも「牧野エミ」の比ではなかった!
私は「掌底事件」の現場にはいなかったが
恐らく顎への掌底を受けても仕方が無いぐらい
いつにも増して迷惑だったに違いない!
元・劇団MOTHERの団員(現・スイス銀行)だった
「久野麻子(くの・あさこ)」と
本日メールのやり取りをした!
私の作品で言えば彼女は
『姫が愛したダニ小僧』
として知られる作品の初演版
『Piper』にて
女海賊「豚女」を演じてくれた女優だ!
「エミさんって人は本当に迷惑な人だったねぇ!」
それが彼女とのメールの中心テーマだった!
そしていくつか「牧野エミ」の迷惑話に興じた!
するとやがて我々のメールによる会話は
「生きてる時に迷惑な人って大事なんだよねぇ!」
というものへと変わっていった!
きっとそうなのだろう!
生きている間に誰にも迷惑をかけなかった人は
なかなか記憶には残りづらいに違いない!
「もうあいつええわ!」
と言われる人ほど
心に残ってしまうものなのだ!
葬儀の後のみんなの空気は
「牧野エミよ永遠なれ」
といったものだったが
彼女の永遠が既に約束されている理由は
生前あまりにも迷惑な人だったからである!
となれば!
今この世に元気で生きている迷惑な人を
我々は大切にしなければいけない!
するとだ!
不本意にもその名が浮かんでしまうのが
我らがPiperリーダー
「喜劇王・川下大洋」となってしまう!
どこで道を踏み外したのか
私と「久野麻子」の話題は
「大洋さんを大事にしなきゃねぇ!」
という混沌に陥った!
昨日の『ひろぐ』記事である
『ばいばいエミさん』には
実に多くの讃辞を頂戴した!
作家である私は
そっと秘めていればいいはずの心の内も
文字にする努力をせねばならない!
「それができる能力を得ている」のだから
それが義務だと感じている!
心を文章にする事で
エミさんを素敵なあの世に送ってあげられよう!
そんな一心であの文章を綴ってみた次第だ!
記事中に登場した「佐々木蔵之介」からも
たいそう嬉しい讃辞の言葉が寄せられた!
しかし!
あの記事に対する絶賛の末
「佐々木蔵之介」が締めくくった言葉は
以下の物だった!
「それにしても”川下大洋”の登場が多過ぎる!」
迷惑対決ならば
「タニマチ金魚」の「牧野エミ」になど
決して負けない「川下大洋」がPiperにはいる!
なにしろあの「牧野エミ」が
”なりたい”と言ったほどの迷惑度を誇る
言ってしまえば「迷惑王」だ!
「久野麻子」からのメールは続いた!
「大洋さんねぇ!
困った人ですねぇ!
エミさんのお通夜の時もですよ!
親友の松井さん(旧・松矢一平)を待たせておいて
そのままほったらかして帰ったんですよ!」
やったぜリーダー!
さすがは全打席デッドボール打者!
しかもだ!
その時の「川下大洋」は帰宅したのではない!
私や「こーちゃん」こと「竹下宏太郎」と飲むべく
「十三(じゅうそう)」に向かう阪急電車に乗っていたのだ!
その間「川下大洋」はただの一度も
「あれ?松井は?」
などと言わなかった!
親友を完全に忘れたのだ!
これこそ彼が
死後は剥製にして公演ロビーに展示される事を約束された
「迷惑王」たる所以なのだ!
その「親友置き去り事件」が
事実なのかどうかを確認すべく
「川下大洋」本人に連絡を取ってみた!
”事実であればあなたは我々に大事にされるべき人だ!”
とも書き添えた!
ほどなく「迷惑王」からの返事が届いた!
「あのとき大勢同時に動いたので
松井もてっきり一緒に出ると思ってたんだよ。
そしたら一緒に来ないんで
まあいいか
と思ってたんだけど
松井は
あれ川下がいない
となったらしい。
まあともかく大事にしてくれ俺を!」
どうだこの説得力のない状況説明は!
それを我々は通常「置き去り」と呼んでいるのだ!
そしてどうだ最後の一言は!
なんだこのさりげない倒置法は!
いつか!
いつの日にかきっと私も
彼からどこかに置き去りにされるのだろう!
今から不安でいっぱいだ!
そんな話をPiperの「腹筋善之介」に告げてみたところ
「僕は既にある!」
と言い出した!
「川下大洋」の友人関係で
日本角膜学会のパーティに
余興で出演する事となった「腹筋善之介」!
共演者は「川下大洋」のみ!
会場は宮崎県のホテル!
前日に宮崎入りして
「川下大洋」と入念な打ち合わせを終え
明日に備えて酒でも飲もうと誘う瞬間!
「川下大洋」に
「そんじゃ!」
と言われたそうだ!
「俺ちょっと仕事があるから大阪帰るわ!」
なぜだ!
ならばなぜ大阪で打ち合わせをして
当日一緒に宮崎入りしなかったのだ!
その奇行かもしくは
なんらかの犯罪のアリバイ作り
としか思えない「川下大洋」の言動に
あっけに取られているうち
「腹筋善之介」は一人ぼっちで
宮崎県のホテルに置き去りにされてしまったのだそうだ!
ばいばいエミさん!
私たちは「牧野エミ」の事を決して忘れない!
だから!
「川下大洋」は!
私たちの事を決して忘れないで下さい!
ああ!
ひろいだひろいだ!