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【編集長:東浩紀】ゲンロンβ7【幽霊的身体を表現する】

2016/10/07 23:00 投稿

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ゲンロンβ7 2016年10月7日号

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7
2016年10月7日号
編集長:東浩紀 発行:ゲンロン


 目次 

  1. イ・ブルの政治的身体 東浩紀
  2. 浜通り通信 #43 10万年の憂鬱 小松理虔
  3. 「ポスト」モダニズムのハード・コア――「貧しい平面」のゆくえ #13 黒瀬陽平
  4. ポスト・シネマ・クリティーク #10 山田尚子監督『聲の形』 渡邉大輔
  5. 人文的、あまりに人文的 #6 山本貴光×吉川浩満
  6. 日常の政治と非日常の政治 #6 憲法改正のカギを握る憲法審査会の動向に注目せよ 西田亮介
  7. 「ゼロ年代以降に批評はあったのか」イベントレポート 田村正資
  8. 批評再生塾定点観測記 #3 映画・課外活動 横山宏介
  9. ゲンロン 利賀セミナー 2016「幽霊的身体を表現する」フォトレポート 上田洋子+梅沢和木
  10. メディア掲載情報
  11. ゲンロンカフェイベント紹介
  12. 編集部からのお知らせ
  13. 編集後記
  14. 読者アンケート&プレゼント
  15. 次号予告
     

表紙:10月10-12日に富山県の利賀芸術公園で開催された、ゲンロン 利賀セミナー2016「幽霊的身体を表現する」より、最終日の講義の様子。
撮影=編集部

 


イ・ブルの政治的身体
東浩紀
@hazuma


(編集部より)
この春、本誌編集長の東浩紀は、黒瀬陽平氏とともに「リアルDMZプロジェクト」の取材のため韓国を訪れ、キュレーターのキム・ソンジョン氏、現代美術家のイ・ブル氏と知己を得た。そのイ・ブル氏の展覧会が、この秋、キム・ソンジョン氏が館長を務めるソウルのアートソンジェ・センターで開催されている。以下は、東浩紀が、その美術展「Connect 1: Still Acts」の図録(ハンドアウト)に寄稿した文章を、同センターの好意により転載するものである。図録には韓国語訳(『ゲンロン3』でも翻訳を担当した馬定延氏による訳)と英訳しか掲載されていないので、日本語の原文はここのみでの公開となる。11月12日には、同会場でイ・ブル氏と東の対談も行われる。詳細については文末の展覧会情報を参照されたい。

 


 

イ・ブルについて文章を書いてくれと言われた。とはいえ、ぼくは美術批評家でもキュレーターでもない。一介の哲学者、それも政治思想や社会思想のほうを得意とする哲学者である。だから現代美術についてはよく知らない。そこで本稿を書くためにいろいろと調べてみた。インタビューを読み、論文を読んだ。結果として、この作家が、四半世紀前のデビュー以来、一貫して興味深い主題を追及していることを知った。しかし同時に、そちらではあまり付け加えるべき論点はないことにも気がついた。

イ・ブルは、自作の原理に対してきわめて自覚的な作家である。彼女は初期のころから、自分の作品がどのような政治的な意味をもち、またどのような思想的な読解格子で解釈されうるか、正確に認識し、みずから語っている。そして批評家たちもまた、そんな彼女の誘惑に導かれるかのように、かなりの量の読解を試みている。彼女の作品はおもに現代思想の語彙で分析されており、オリエンタリズム、サイボーグ、ユートピア、シミュラークルにジェンダーにポストモダニティといったきらびやかなキーワードがその創作行為を取り巻いている。いわく、彼女の作品は大きな物語(リオタール)が壊れた時代の身体と政治の、あるいは私と世界の関係を、断片的で可塑的で機械的でハイブリッドな(ハラウェイ)表象により表現しており、それはアンビルドな未来(リベスキンド/磯崎)を幻視させるとともに、実在しなかった過去への追憶(ベンヤミン/ボードリヤール)を想起させ、最終的にはわたしたちを代補としての逆説的な共存在(デリダ/ナンシー)に誘うものでもあるだろう、云々かんぬん云々かんぬん。ぼくは前述のように哲学者である。だからそれらの語彙には慣れ親しんでいる。とはいえ、なまじ哲学を専門としているだけに、哲学用語を用いての作品分析はむしろ苦手である。イ・ブルをめぐる評論を読んでいると、その語彙のきらびやかさにむしろ目眩を覚える。

だからここでは別の観点から書いてみようと思う。上記のように現代美術に門外漢の(そして韓国ではほとんど知られていないであろう)ぼくに、なぜこの図録への執筆の依頼が来たかといえば、それは、ぼくがたまたま、この春に、この展覧会のキュレーターでもあるキム・ソンジョンが運営する別の企画「リアルDMZプロジェクト」の取材のために韓国を訪れたからである。ぼくはそのときイ・ブルに出会った。キム・ソンジョンはぼくを鉄原(チョルォン)DMZ地域に案内してくれたのだが、彼女もその取材に同行してきたのだ。同行の理由を尋ねると、DMZを主題とした新作を構想しているのだと答えが返ってきた。

 

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