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2016年6月10日号
編集長:東浩紀 発行:ゲンロン
目次
- 【特別掲載】演劇とは「半々」である――『ブルーシート』と虚構の想像力(前編) 飴屋法水×佐々木敦
- 観(光)客公共論 #10 批評とはなにか(2) 東浩紀
- 「ポスト」モダニズムのハード・コア――「貧しい平面」のゆくえ #10 黒瀬陽平
- 浜通り通信 #39 豊かで貧しい潮目の土地 小松理虔
- ポスト・シネマ・クリティーク #6 是枝裕和監督『海よりもまだ深く』 渡邉大輔
- 人文的、あまりに人文的 #2 山本貴光×吉川浩満
- アンビバレント・ヒップホップ #3 誰がためにビートは鳴る 吉田雅史
- 【特別掲載】生理への介入――『夜を聴く者』イベントアフター 坂上秋成
- ゲンロン沖縄取材ノート(前編) 徳久倫康(編集部)
- メディア掲載情報
- 関連イベント紹介
- 編集部からのお知らせ
- 編集後記
- 読者アンケート
- 次号予告
表紙:沖縄、久高島の海岸で 撮影=編集部
演劇とは「半々」である
『ブルーシート』と虚構の想像力(前編)
飴屋法水
@norimizua
佐々木敦
@sasakiatsushi
佐々木敦 ぼくはゲンロンカフェで「ニッポンの演劇」というシリーズを担当しています。現在、日本の演劇シーンでは、70年代から2010年代まで、長い年月のあいだに登場した演劇人たちが群雄割拠状態でしのぎを削っているかに見えます。このシリーズでは、ニッポンの演劇の独自性はどこにあるのか、その可能性と抱える問題はいかなるものなのか。毎回キーパーソンをお迎えしてお話をうかがっています。1回目はチェルフィッチュの岡田利規さん、2回目はハイバイの岩井秀人さんをお迎えしました。3回目の今日は飴屋法水さんにお話をうかがいます。
飴屋法水さんは1961年生まれ、演劇を始めたのは唐十郎の状況劇場に参加した17歳のときです。その後、劇団「東京グランギニョル」を立ち上げ、オブジェと身体、血糊を駆使したスペクタクルな作品を発表します。劇団は2年で解散、飴屋さんは活動の場を現代美術に移し、レントゲン藝術研究所を中心に、希望者に精子を提供してもらって展示し、観客とのあいだで人工授精を募る『パブリックザーメン/公衆精子』など、非常に過激な作品を作られています。その後、ペットショップ「動物堂」の運営などを経て、飴屋さんが演劇に戻ってくるのは2007年。SPACの宮城聰さんのプロデュースで行われた平田オリザさんの戯曲『転校生』の上演でのことでした。新しい演劇のかたちを世に問い続ける飴屋さんの作品は高い注目を集め、2014年にはいわきの高校生たちと作った作品『ブルーシート』が岸田國士戯曲賞を受賞しています。
長く豊かな、そして魅惑的に錯綜したキャリアをお持ちの飴屋さんですが、その表現を貫いているのは「演劇」だと思います。実際、飴屋さんご自身が何度となく、自分のやっていることは、ほとんどそう見えないかもしれないものも含めてなにもかもが「演劇」なのだ、と発言しています。
では、そもそも「演劇」とはいったいなんなのか。今日はあらためて飴屋さんにこの原理的かつアクチュアルな問いをぶつけてみたいと思っています。
ゲンロンカフェ壇上でのふたり。飴屋法水さん(右)と佐々木敦さん(左)。 撮影=編集部
出会ってしまうこと
佐々木 まずは『ブルーシート』についてお聞きします。『ブルーシート』は飴屋さんが2013年に福島県立いわき総合高校の生徒たちと作って、翌年の岸田國士戯曲賞を受賞した作品です。いわき総合高校では授業に演劇が取り入れられていて、さまざまな演劇人が招聘されて高校生と作品を作っている。この作品もそのひとつでした。それが昨年のフェスティバル/トーキョー[★1]で、2年前の初演とほぼ同じキャストで再演されました。ぼくは台本は以前から読んでいたのですが、初演には行くことができなくて、再演ではじめて見ました。
この作品の制作プロセスは、どのようなものだったのでしょう。この時期にいわきの高校生とやるということで、3.11の問題は避けて通ることができなかっただろうと思います。なにが作品の始まりにあり、どのように作業が進んだのか。
飴屋法水 具体的なきっかけは、平田オリザさんからお話をいただいたことです。「この時期空いてる?」って言われて、「空いてます」って答えたら「じゃあいわきでやんなよ」と。10年くらいまえに久しぶりに演出の仕事をしたのが、さきほど佐々木さんからご紹介があったように平田さんの『転校生』でした。『転校生』は静岡の高校生たちとやった作品で、平田さんはそれを覚えていてくださった。ぼくがいわきで作品を作る動機は、そうやって外から発生したものです。
それで現地に行ったら、この子たちとやってくださいと生徒10人を紹介された。演出を頼まれていたので「なにを演出しましょうか」と言ったら、「いやいや飴屋さん書くんですよ」って言われて、「えーっ」と(笑)。だから、そもそもぼくが書くということも決まっていたわけじゃないんです。
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