竹中平蔵 〔PHOTO〕gettyimages
竹中平蔵氏 〔PHOTO〕gettyimages

「竹中平蔵」という人物は、実に興味深い。小泉純一郎内閣は、日本経済に溜りに溜まっていた不良債権という膿を出し切った。だから、小泉政権の後半は、GDPは増え、失業率の低下、税収の増加によって財政再建の道筋がほの見えたのだ。その立役者が竹中さんだった。

ところが、小泉さんの政治的手腕を評価する声はあっても、なぜか竹中さんへの賞賛はなかった。それどころか、逆に「竹中さんの規制緩和で格差が広がった」といった否定的な報道がなされた。経済学者やエコノミスト、マスコミにとって、竹中さんは叩きやすい「サンドバッグ」なのだ。

けれど、その竹中さんの手腕を、安倍晋三首相は熟知している。安倍さんは小泉内閣で官房長官を務め、竹中さんの働きを間近で見ていたからだ。

アベノミクスの成否は、安倍さんのいう「アベノミクス」の3本目の矢である「成長戦略」が成功するかどうかにかかっている。バブル崩壊以後の「失われた20年」から脱却できるかどうかの、まさに正念場なのだ。

安倍内閣の目玉である「産業競争力会議」のメンバーに竹中さんは選ばれた。「アベノミクス」の3本目の矢である「成長戦略」を提案するためのブレーンになったのだ。つまり、アベノミクス推進の中心人物は、竹中さんであるといっていいだろう。

僕は、その竹中さんにとことん「日本経済復活のカギ」を聞いた。その内容を先日、『竹中先生、日本経済 次はどうなりますか?』という本にまとめた。その一部を紹介しよう。

まず竹中さんは、「日本は必ず経済成長できる」と断言する。ただ、そのために必要なことはさまざまな抵抗勢力に打ち克って、どこまで徹底的にやれるか、ということだ。

ひとつは、企業の問題だ。高い法人税率、厳しい労働規制と環境規制……。「日本ほど規制が厳しい先進国はない」と竹中さんはいう。だから、外資企業は日本から逃げる。一方で日本の企業はどうか。

日本企業の開業率は低いとよく指摘される。だが、実は企業の開業率は低いが、同時に企業の廃業率も低い。つまり企業の新陳代謝が進んでいないのだ。ダメな企業がゾンビのように生き残り、やる気のあるベンチャー企業が出てこない。これでは、経済成長に必要な技術革新も生まれにくい。なぜなのか。

さまざまな要因はある。だが竹中さんは、「最大の問題は『ダメな社長』をクビにできない」ことにあると言い切る。「社長をチェックし、ダメなときは『お辞めなさい』と言える独立した社外取締役が必要」なのだが、今の日本にその義務づけはない。

そして女性の活用の問題もある。世界経済フォーラムが毎年出している、「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告」、つまり男女格差の通信簿ともいえるレポートで、日本は135カ国中101位だ。竹中さんは、女性をもっと登用するため、「女性取締役が2割以上の会社は法人税を何%か割り引く」というような制度の導入を提言している。僕もまったく同感だ。

日本企業が抱えている問題はまだまだある。だが、要は、「緩和すべき規制は緩和し、義務づけすべき制度は義務づける」ことが必要なのだ。