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会議は5日に安倍晋三首相に答申を手渡したので、ひとまず一段落である。
そこで、どういう結論になったか、書いておこう。
以下は、いずれも所管する厚生労働省も同意した内容だ。
株式会社形態による保育所事業への参入は、地方公共団体での裁量で実質的に阻まれている例が少なくない。
そこで規制改革会議は厚労省に対して以下のよう求めた。
(1)経営形態にかかわらず、公平・公正な認可制度の運用がなされるよう都道府県に通知する
(2)あわせて通知の趣旨が市区町村に周知徹底されるよう、都道府県に通知する
なかなか株式会社が参入できない大きな理由の1つは、現場で仕事をしている市区町村が、独自の規制を設けて、それを認めなかったからだ。
そこで、まず国が許可権限を持っている都道府県に対して「公平・公正な運用をせよ」と指導し、そこから市区町村にも趣旨を徹底させる、という二段構えの作戦にした。
この要請を受けて、厚労省はすでに通知した。
結果がどうなるか、はこれからである。
待機児童の親は候補者にこの問題を問うべきだ
国の指導もさることながら、鍵を握るのは住民の声ではないか。切実な思いを抱いているのは、母親や父親だ。選挙の際に「待機児童問題にどう取り組むのか、株式会社の参入をどうするのか」と候補者に問うべきだ。
ついでに言えば、私は「なんでもかんでも国の指導に頼るのは良くない」とも思っている。地方分権に反するからだ。
コラムで紹介したように、厚労省の姿勢には大いに問題があるが、地元自治体がしっかり取り組むつもりなら、できることはある。横浜市がいい例だ。そこを見習いたい。
それから、社会福祉法人の財務公開について。
規制改革会議の要望を受けて、厚労省は「すべての社会福祉法人について2013年度以降の財務諸表を公表する」「公表が効果的に行われるための具体的方策について13年度中に結論を得て、14年度当初から実施する」という方針を決めた。
さらに「12年度の財務諸表も公表するよう社会福祉法人に周知指導し、その取り組み状況を調査し、規制改革会議に報告する」「(都道府県など)所轄庁のホームページにも公表するよう協力を要請し、所轄庁の取り組み状況について調査、会議に報告する」とした。
認可保育所の設置主体は社、会福祉法人である場合が多い。
その社福には、補助金の形で税金が投入されている一方、法人税などが免除されている。税金面で優遇されているのは、社福が利益を社会に還元する建前になっているからだ。
ところが、肝心の財務諸表はといえば、自主公開に任されている。
これでは本当に利益が社会還元されているのかどうか、国民はチェックのしようがない。
だから、財務諸表の公開が重要になる。
同族や家族経営の多い社会福祉法人こそ財務諸表を公開せよ
社会福祉法人は実態として同族や家族経営が多く、事業の裏側には営利目的の企業があったりする。「ばく大な内部留保を溜め込んでいる」という指摘もある。
そうなると、社会還元どころか「実は個人的な利益追求が優先されているのではないか」という疑惑が生じる。
「そうではない」というなら、まず社会福祉法人自ら率先して財務諸表を公開すべきだ。
彼らが「利益優先」と主張する株式会社は、上場企業であれば財務諸表を公開し、公認会計士による監査も受けている。
税金優遇を受けているのだから、企業並みどころか、それ以上にもっと透明にすべきではないか。
財務諸表の公開問題は、奥の深い所で「保育士不足問題」にも絡んでいる。
それは、こういう事情だ。
まず「保育所だけを増やしても、保育士が足りないから問題解決にならない」と指摘がある。だから、規制改革会議は保育士が増えるように、保育士資格試験で合格した科目の再試験免除期間を、3年から5年に延長するなど緩和策を提言した。
それはもちろん大事だ。
だが、実は保育士の免許を持っているのに、実際には保育所で働いていない「潜在保育士」が60万人以上もいるという推計がある。
(厚労省資料はこちら。PDFファイルです)
彼ら彼女たちは、なぜ資格があるのに働いていないのか。
保育士の給与が低いのはオーナーの取り分が多いから
理由の1つが、給料の低さである。それは4月1日の会議で議論になった。
参考人「社会福祉法人の場合は人件費率が高いと言いながら、そこに占めるオーナーの取り分が高い。一般職員の人件費は株式会社でも社会福祉法人でも変わらない」
委員「私はある会社の社外役員をやっていたが、そのときの経験で保育士は大変な仕事の割に待遇は低いと知った。すると運営費に占める(会社と社福の)人件費の差は保育士の給与の差ではなく、それ以外の方の人件費と理解していいか」
参考人「それだけではないと思うが、大半はそういう要素が強い」
別の参考人(大学教授)「私立の保育所で重要なのは肩たたき。『そろそろいいお婿さんがいるよ』と言って、早く辞めてもらう。それが人事管理の要諦。非常にいびつで人件費を歪めている構造がある。差額はどこにあるのかといえば、他のところでとっているのはあきらかと思う」
(議事録はこちら。PDFファイルです)
つまり、せっかく政府が保育士対策で予算を増やしても、カネはオーナー周辺に流れて、肝心の保育士に回っていないという指摘である。
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