今週のお題…………「3・25巌流島イベントで見たい試合

7dff021d07cd7fe9ad1dc97de2d4f829bcbac830
文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)…………火曜日担当(もうめちゃくちゃになってきました)


 
 マッチメイクに意見を求められたら、メモを書き始めて整理してみることが必要だ。但し、勝手知ったるプロレスや総合大会ならともかく、ルール細部含めてまだまだ新興格闘技の『巌流島』である。選手を派遣してくれる関係者に、まずコンセプトを説明するところから始めないといけない。これまでに関してイメージ的にも良かったのは、やはりドラゴンボールのようなカラフルな道着と、それぞれの流派代表選手がズラリ勢ぞろいという絵面だろう。そこからカポエラ出身のマーカス・レロ・アウレリオとか、期待通りの派手な闘いでファンを掴んだのは記憶に新しい。

6fb3a98a25caf27643613da31b75e57462a2f42e

 もともとが「すべての格闘技になるだけ公平」という前提でルールを詰めていった日本発のオリジナル格闘技である。いろんな流派なり、日本では未知の格闘技紹介とか、本来の意味における「異種格闘技戦」への原点回帰が込められた『巌流島』なのだ。金網の中で闘うとか、四角いリングですらルール問わず闘ったことない国の選手がどんどん紹介されて悪かろうハズもない。円形の闘技場というのは、古今東西を問わず文化として許容されている強みもある。金網はおろか、四角いリングすら必ずしも定着してない発展途上国からも、「それだったら出てもイイ」はありうる。
 
 相撲ひとつとっても、セネガル相撲、韓国シルムと色々あるのだから、世界にアンテナを張って「こんな格闘技もあったんだ」と、お客さんを常に驚かせる命題はどうしても必要だと思う。ここで注意せねばならないのは、「とんだ食わせ者だった」というケースがどうしても交じってしまうこと。しかし、新しい格闘技を作っていく主旨である以上、リスクを恐れても仕方ない。作る側をやったことない格闘技専門記者なりが眉を顰めようが、お客さんに喜んでいただくことが重要なのであって、MMA世界ランカー同志の対決カードが見たいなら、どうかUFCだけ見て下さいとなろう。唯一、例えばカポエラ出身として使ったのに、華麗な足技を出してこないようなのは困るという注意はある。それがクリア出来ていれば、前日の会見なりでそれぞれの民族衣装なりを身に着けた超カラフルな戦士たちを集結させた段階で大きな第一関門突破なのであって、漫画チックだと冷笑する自称・格闘技マニアがいたとしても、世の中には無視してよい声もあるものだ。
 
e7504ef37c4617cbb3963c586ba56589d5d71bc1

 7・18両国国技館大会では、60歳達人=古流柔術の渡邉剛が結果はともかく大きな話題だった。これも異種格闘技戦なのだから、大いに結構なことであり、今後もどんどん出して下さいなのだ。どうせ一部の評論家先生とかは「達人なんかいない」とか、幻想格闘技だと悪く言うのだろうけど、こんなのはレトリックであって、どうにでも転がすことが出来るもの。もしどこかの媒体が筆者に「"ロンダ・ラウジーは幻想だ"の記事を書いてくれるなら●万円出す」とオファーされれば、職業ライターとしては筋の通る1本を仕上げるだけのこと。すべては相対論でしかないからだ。直近ニュースというなら、ヴァンダレイ・シウバがようやくUFCから契約解除を受けたが、その過程で「UFCの八百長をバラす!」とか、色々笑わせてくれた。ヴァンダレイは薬物検査逃れで追い詰められて、口から出まかせを言っただけなのか? そうでない。ヴァンダレイの側に立った記事なら高額出すとオファーされれば、「UFCは公平ではない」主旨のレトリックは難しくないからだ。
 だいたい、スポーツ選手の基本はランニングであり、例えばずっとアッシックスを愛用している者に、無理やりシューズはリーボックに変えろと言われても、こだわり派が多い選手は「絶対に嫌だ」と言うに決まっている。試合前のナーバスになっている一週間に、「パンツはこれだ」以下、あらゆる余計な注文を強要されて、それで調子も狂って実力を発揮できなかった選手がいたとして不思議ではない。一方で、ステロイド系筋肉増強剤を打った選手が必ず強くなるのかと問われれば、そんな絶対的データもない以上、リーボック着用を強制された精神的苦痛の方が勝敗を左右することだってありえるのだ。
 世の中に公平なんて存在するのだろうか。格闘技は「心・技・体」のトータル・バランスであり、仮に禁止薬物の助けを借りて一時的に肉体がパワーアップされようが、ハートが弱ければ本番で勝利することなんかできない。選手は意外と迷信に近い信仰含めてトレーニングや食事に意地を通す方が多く、ペース乱されて「心・技・体」のバランスが崩れて勝てなかったら、薬物検査の厳格化より影響が大きい。
 
 巌流島のマッチメイク課題に戻るなら、前出の世界の格闘技の発掘を続けること。このなかには古武道や、達人の起用も含まれる。目標というか夢としては、スティーヴン・セガールに合気道の模範演技オープニング登場を願う。次の映画に映像使ってイイと交換条件出したら、意外とリーズナブルにやってくれるかも(笑)。
 次に、新人の発掘と、キックや総合などから引退した選手に新たなチャンスを与えること。すでに巌流島での実質プロデビュー戦を経て、岡倫之と北村克哉の新日本プロレス入団が発表されたばかりだが、巌流島をステッピング・ストーンにして、UFCでもどこでも行ってくれて構わないのだから、「まずはここから試そうか」という人材、どんどん応募して下さいなのだ。さらには、逆方向からは引退していた別競技の選手が、「武道への挑戦なら大義名分が立つ」という復帰のタイプもいると思う。巌流島の魅力は自由度なのではなかろうか。




[お知らせ]
『巌流島』のオフィシャルサイトをリニューアル致しました。アドレスが変わりましたので、ご確認ください。→  ganryujima.jp