今週のお題…………「私がシビれた異種格闘技戦」

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文◎谷川貞治(巌流島・事務局/広報部長)………………月曜日担当



皆様、あけましておめでとうございます。今年は『巌流島』も再出発の年。年末のこともあり、ますます巌流島に対する期待値も上がっていると思いますので、今年は一層頑張っていきたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!

さて、この『巌流島チャンネル』のブロマガも、今日からスタートします。このブロマガは幅広い層のファンがいますので、あまりマニアックにならないようにと、2016年の第1週目のお題は「私がシビれた異種格闘技戦」にしたいと思います。

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仕事柄、数々の思い入れ深い異種格闘技戦の名勝負を見てきましたが、私が選ぶのはまだ格闘技の仕事についていない頃の試合。ちょうど高校を卒業する年にあった「猪木 vs ウィリー戦」です。まだ、ファンだったからでしょうか、東京という都会に慣れてなかったからでしょうか、何から何まであんな興奮した試合はありません。私たちの時代の極真は、まさに最強のブランドで輝いており、大山倍達は神でした。極真が他流試合で負けたら、腹を切るイメージは当たり前の時代で、ウィリー・ウィリアムスは熊も素手で殺しているという触れ込み。第3回世界大会でも、その強さは圧倒的で、誰が見ても一番強く見える。そんなウィリーが極真の看板を提げて、アントニオ猪木と対戦する。猪木さんも当時は狂ったおじさんではなく、プロレスファンにとっては神であり、人生の生き甲斐でした。そんな2人が激突するんだから、今では想像もつかないほどの「あり得ない」試合だったのです。

私もK-1やPRIDE、Dynamiteなど数々の夢のカードを実現させた自負はありますが、未だに猪木さんを超えられないのは、ボクシングの現役世界王者のモハメッド・アリと極真のクマ殺しウィリーを、自分のリングに上げたことです。こればかりは未だにかないません。あの頃は猪木さんに対しても、極真に対してもファンが妄信的な信者と思える人たちばかりだったので、本当に会場が殺気に満ち溢れていました。特に極真の応援団は妄信的な門下生も多かったのでしょう。会場のあちらこちらで興奮して乱闘しているし(極真信者が猪木信者をボコボコにしている感じ)、猪木さんは殺されるんじゃないか、興行は本当にどうなるのかと思ったほどです。

当たり前のことですが、異種格闘技戦に最も必要なのは、ブランドという看板を賭けた負けられない空気感を作り出す殺気です。そういうものが、選手に見えれば見えるほど、興奮させられます。その意味では初期の頃のホイス・グレイシーとヒクソン・グレイシーは本当に殺気に満ち溢れていてかっこよかった。

「看板」と「殺気」…………しかし、猪木vsウィリー戦はある意味、観客の方が殺気立っていたのも特徴の一つです。今のファンは格闘技を見る目が肥えていますので、なかなか猪木vsウィリー戦とまではいきませんが、ここ10年くらいで一番近いのは大晦日『やれんのか!』で実現した秋山成勲 vs 三崎和雄かな。あの試合も本当に興奮しましたよね。よく最近は「観客の熱」とか、「選手は命懸け」とかという言葉をプロモーターも安易に使いますけど、まぁ、言葉自体がデフレ状態で比べものになりません。

私はどちらかと言えばウィリーが絶対的に強いと思っていました。クマも倒しているし、大山茂師範は「負けるようなことがあれば腹を切る」と言っていたし、鬼の黒崎健時師範も「本物の怪物を作った」と胸を張っていたし、芦原英幸師範は「猪木? 手裏剣で十分」なんて物騒なことを言ってたし。とにかく役者も揃っていたし、猪木さんが殺されるんじゃないかと心配したほどです。だから、この試合後、私の猪木さんに対する評価はますます上がりました。

その一戦を見てしまったおかげで、私の人生も変わった。実を言うと高校生ながら、私がこの時一番見ていたのは、極真でも、プロレスでもなく、ウィリーでも、猪木さんでもありませんでした。この一戦を実現させ、劇画というメディアでこの一戦をドラマチックに展開していった「梶原一騎」だったのです。劇画『四角いジャングル』での猪木vsウィリー戦につなぐ煽りは本当に見事でした。毎週、ワクワクしながら、『少年マガジン』を貪り読んでいたのです。メディア・ミックスというのも、初めて梶原一騎に教わった気がします。

俺は梶原一騎みたいになりたい!

プロレスラーになりたいとか、極真空手を習いたいとかではなく、そんな夢を抱いた18歳の春。その意味で、猪木vsウィリー戦を超えるような異種格闘技戦を『巌流島』でもやりたいというのが私の永遠のテーマです。私の異種格闘技の原点は、そこにあるのです。



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